映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

11/23(水)アトロク秋の推薦図書月間2022⑭ 山内 マリコさん



今日は日比さんに変わってタカキさんがパートナー。

 

作家 山内マリコさんによる入魂の一冊。

 

宇多丸さん:お待ちしていましたよ!

そんな前だと思っていなかったけど、前回の出演は2020年3月出演ですって

 

山内さん:コロナ禍の始まりでドキドキしながら出演した

 

宇多丸さん:その時はギリギリスタジオで収録してたラストのタイミングくらいだ

 

山本さんによる山内マリコさんの紹介

1980年富山県生まれの小説家。

2012年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。女性同士の友情や地方都市をテーマに小説、エッセイをコンスタントに発表。

代表作に『あの子は貴族』など。

先月末、マガジンハウス刊の松任谷由実さんの生涯を描いた小説『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』が発売されて話題に。

 

 

宇多丸さん:『あの子は貴族』の映画評したからもっと近々に会っていると勘違いしていた

 

山内さん:嬉しく聴いていました

 

宇多丸さん:素晴らしかったです。岨手由貴子(そで・ゆきこ)監督も素晴らしかった。この年の邦画トップクラスの作品。

 

山内さん:嬉しい!

 

宇多丸さん:僕もユーミンさんと食事とかしてるんですよ

 

山内さん:キャンティで?!

 

宇多丸さん:そうです!ユーミンさんといえばキャンティ

 

山内さん:(笑)

 

宇多丸さん:ユーミンさんどれだけキャンティ案内してるんだって言う。ほとんどキャストと化すくらい。

この小説は飲みの席でお会いした際に「ユーミンさん話聞かせてください」と言って僕が聞いていた内容のさらに高解像度版。小説であり時代の記録であり、素晴らしい仕事です。

 

山内さん:ありがとうございます!

 

宇多丸さん:小説を書くことになったきっかけは?

 

山内さん:今年はユーミンのデビュー50周年。

今年は周年に合わせて色々企画がある中で、編集者の方からの指名で『小説ユーミン』でお声がかかった。

今まで地方のことを書いてきた自分に都会的なイメージは無い。都会のキラキラの象徴のようなユーミンを描けるのか。接点がないようにも思える。

 

しかしユーミンさんの出身地である八王子の立地は「都心」では無い。

 

宇多丸さん:八王子の呉服屋さんが実家ですもんね

 

山内さん:都心に出るのに一時間弱かかる。東京への距離感が地方民と近いものがあると感じたこともあり、今まで自分が書いてきた女の子の物語の延長線としても捉えられると感じた。また、「ユーミンから一次情報を聞きたいな」という思いもあった。

それもあって「やります」と引き受けた。

 

宇多丸さん:ユーミンさん自身序盤で「私は八王子の呉服屋の出だから、お買いのキラメキを描けるんだ」って仰ってる

 

山内さん:文学の世界では「小説家の作家性は東京との距離感で決まる」とも言われている。

自分は富山の出なので新幹線で2時間ちょい。昔はもっとかかった。

ユーミンさんは1時間ほどでで都心にも横浜にも出られる。ミュージシャンの「港町」へのアクセスは実は重要。

 

常に新しい音楽は海からやって来るんですよ

 

宇多丸さん:日本で一番最新音楽に詳しい人だった

 

山内さん:ユーミンさんは「日本で一番最初にレッドツェッペリンを聴いた一人」と言われていますからね。

八王子は立川基地にも近く、アメリカ人に混じってレコードを漁っていたという話も。それで最新の音楽を吸収していく。

 

宇多丸さん:格好良い音楽を再現して喜ぶ様子何かは日本の新しい音楽が生まれる瞬間のような

 

山内さん:ユーミンさんはJPOPの象徴。

日本人は洋楽を吸収して、洋楽の最新音楽に伍するような新しい音楽を生み出すことが出来なかった。どうしても歌謡曲になってしまぅていた。

「和製ポップス」として輸入した音楽に日本語の歌詞を載せるような、洒落た音楽を生み出せなかった時代に、これだけ文化資本の元、最新音楽を吸収した十代の女の子が八王子からやって来て、とてつもなく新しい音楽をぶちかます所が格好良い!

 

本作をフェミニズム的な視点で作品を書いてみたが、「こんなにも女の子が格好良いことがかつてあっただろうか?!」と思ってしまった。

日本の音楽史の振り返りであると同時に、近代史の振り返りでもあると思った。

 

宇多丸さん:圧倒的な才能があるのに、女性であるが故にアウトプットの場が限られてしまうのは「そんな訳あるかい!」と思う。そんな状況を、時に悔し泣きしつつも自らの才覚で切り拓いていく。

そう言った観点は今日紹介してくれる本とも通じますね。

『小説ユーミン』は才能ある若い女性の物語としても最高の一冊!

 

(CMを挟んで)

宇多丸さん:取材にはどれくらい時間をかけたんですか?

 

山内さん:三日。

ユーミンはおいそがしい笑(※この「おいそがしい♪」の言い方、メッカワです)

 

宇多丸さん:そりゃそうだ。

 

山内さん:一日3~4時間ずつくらい。最終日には荒井呉服店と実家にも行った。

 

宇多丸さん:(取材時間と比較して、成果物たる小説の)出力凄いな〜

 

入魂の一冊

女子達よ!闇の通過儀礼をサバイブせよ!

キム・リゲット著 『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』

 

宇多丸さん:ちなみに火曜パートナーの宇垣さんも読んだそうです

 

山内さん:これは総裁案件ですよね

 

宇多丸さん:ジャケの時点でヤバイと言ってました。山内さんはオビにコメントも寄せていますね。

 

山本さんによる概要紹介

ガーナー郡に住む16歳を迎えた全ての少女は、危険な魔力を持つとされ、森の奥のキャンプへ一年間追放される。16歳を迎えるティアニーは「妻として」はでなく、自分の人生を生きることを望みながら、謎に包まれた通過儀礼「グレイス・イヤー」に立ち向かう。

 

本国では2019年に刊行。NTタイムズのベストセラーに選出、『チャーリーズ・エンジェル』のエリザベス・バンクスによる映画化も予定されている

 

山内さん:帯の依頼が来てゲラの状態で読んだ。

ゲラ読みして断ることもあるが、本作は設定だけでも面白いだろうと思って「やります」と答え、実際読んでみたらやっぱり面白かった

 

宇多丸さん:帯に「一気読み必死」とコメントを寄せていらっしゃるけど、僕も一気読みでした。

 

山内さん:翻訳の方が上手いと言うのもあると思う。“THE GIRLS”というマンソンファミリーを描いた小説の翻訳も手がけていて、それもすごく面白かった。

 

宇多丸さん:設定についても山内さんの手描きの制作?創作メモのようなものがあるんですね。

 

山内さん:はい(笑)書いていました

 

宇多丸さん:さすが作家というか。

山内さん的に面白かったのはどちらでしょうか

 

山内さん:冒頭から引き込まれた。

「誰もグレイス・イヤーの話はしない。禁じられているからだ。私たちには特殊な能力があって、寝ている大人の男を誘惑したり、若い男の子の理性を失わせたり、妻たちを嫉妬に狂わせたりすることができると言われている。しかも、私たちから剥いだ皮そのものにも、強力な催淫効果や若返りの効果があると彼らは信じている。だから私たちは16歳になると追放され、その魔力を自然の中で解き放った後で、ようやく文明に戻るのを許される」

 

女には魔力がある。これだけでピンと来る人はピンとくるのでは?

 

宇多丸さん:女性に責任を転嫁することは今でもありますもんね

 

山内さん:著者の後書きには、この本を思いたきっかけが書いてあった。

駅でローティーンの女の子が家族に見送られて寮に戻る送るシーンを見たときに「心は子供だが体つきは大人になりかけている女の子」を、男性は舐めるような視線でその子を見て、女性はそれに敵愾心を燃やす。

それを見たときに作者は涙が流れ、その体験だけでこの作品の設定を作り、一気に書き上げた。

 

(こちらについては以下のインタビューに詳しい。)

www.hayakawabooks.com

ニューヨークに住んでいたころ、ペンシルヴェニア駅で、ある少女が家族と共にいるところを見かけました。14歳くらいで、大人の女性へと変わっていく独特のエネルギーに満ちていました。すると、男性が通りかかり、彼女を品定めするかのように見たのです。まるで獲物のように。さらに、ある女性が通りかかり、彼女を嫉妬するような目で見ていました。かつて自身にあった若さを思い出したかのように。やがて列車のベルが鳴り、彼女の家族は別れの挨拶をして、おそらく寄宿舎へ向かうのであろう彼女を見送ります。そこには「これでまた一年間、彼女を安全な場所に置いておける」というような安堵の表情が見えました。

 この一部始終を目撃した私は「わたしたちは若い女の子にこんなことをしているのだ」とつぶやき呆然としました。そのまま列車に乗ってその少女のために泣きました。そして、パソコンを開き、目的地に着く頃には『グレイス・イヤー』のプロットが出来上がっていたのです。

 

宇多丸さん:両親が寄宿舎に入れるのも、隔離しちゃうということですもんね。現実のメタファーというか。山内さんも帯に書かれているとおり。

 

山内さん:私が帯に書いたのは「現実のメタファーがあちこちに零れ落ち、拾い集めるごとに家父長制の秘密が暴かれていく。必読!」

これはフェミニストSFをよむ喜びだが、物凄く差別的な状況設定が作り込まれている。架空のシステムが作られているフィクションだが、それによって自分たちが今住んでいる社会のことが見てくる。

「これってあれのことじゃん」と思うことがすごく多い

 

宇多丸さん:「まんまじゃん!」とかね

 

山内さん:たとえば1年間のグレイス・イヤーの前には「集団婚約式」などもあり、今世間を騒がせてせているカルト宗教の集団結婚式を連想させるような、ミソジニーが根付文化の中で行われている儀式だが、平たく言えば今の普通の日本の結婚制度もこれに近いものがある。

 

グレイスイヤーを迎えた女の子たちは髪を赤いリボンで結ぶというものがあり、年齢や未婚なのか既婚なのかを切るものによって決めているのは、日本の着物文化でもあったことだし、イスラム系の国におけるヒジャブなど、衣服による女性の抑圧も「これって現実にもあるよな」と思わせられる。

 

宇多丸さん:まるで出品されるかのようにね

 

山内さん:恐ろしいのは、生まれてすぐに足の裏に父方の焼印を押されるというもの。そして、結婚相手を決める際は中央倉庫に集められ、男たちが密談して誰が誰を娶るのかを決める

 

宇多丸さん:結婚相手を決められなかったのなんてつい最近まであったことですもんね

 

山内さん:そうなんですよ。

この作品は「『侍女の物語』×『蠅の王』」と宣伝されることも多い。

設定だけ聞いて「森の中のキャンプで女の子たちが集めれれてそこでサバイブする物語」というところだけを見ると、自分が今なんでも「シスターフッド」に結びつけて考える脳なので、「きっと女の子たちがサバイブしてこのクソシステムを破壊するのかな」と思うが、そうではなく『蝿の王』になっていく。

 

通過儀礼で思い出したのはニコラス・ローグ監督の『WALKABOUT 美しき冒険旅行』。

アボリジニの男の子が「自分の力で荒野で生き残れば大人の男として認められる」という通過儀礼を描いた映画。その風習を美しく撮っていた。

が、「女の子の通過儀礼を描くときは美しくは描けない」と著者は思ったのではないか。簡単に団結したり、「イェイ!」というふうに持っていけるほど今のこの抑圧された仕組みは単純じゃねぇ。

だから次世代につなぐような展開になっていく。

通過儀礼の描き方ひとつとっても男と女で違ってくるとかんじておもしろかった。ダークでバイオレンスでロマンスもあって。

 

宇多丸さん:最大の罠は女性同士が争うことになっていること。だからある意味団結を最も恐れているんですよね。

主人公は最初から強く聡明な人だが、主人公のものの見方が変わっていく成長譚的な側面はヤングアダルト小説的。

 

山内さん:それが特に「女性観」の面で起きる。最初に出てくる女性がいずれも(男性の作った)「体制側」の人間。

それは「グレイス・イヤー」から戻ってくる女性が壊されて戻ってくるから。

でも……

 

宇多丸さん:エンタメ性とメッセージ性がガッツリ一致してますね

 

山内さん:映画化の話があると言うことだけど、ミュージカル化しても良いと思う。ミュージカル映えしそう!

 

 

 
 
 
 
 
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11/22(火)アトロク秋の推薦図書月間2022⑬ 池澤春菜さん

二年間続けた日本SF作家クラブ会長の任期を終えた池澤春菜さんによる入魂の一冊

 

宇垣さん:(紹介いただくのが)いつも一冊じゃないんだよ〜

 

池澤さん:イッサツダヨダイジョウブダヨ

 

入魂の一冊

974階建て。超々高層タワー国家を舞台にした、ユーモアとペーソスの摩天楼エンタメ。韓国文学の代名詞とも呼ばれる作家の連作小説。十数年振りに加筆修正で復活!

ペ・ミョンフン著/斎藤 真理子訳『タワー』

 

宇垣さん:シンプルに(読みがの技術が)上手すぎてもう……笑

 

池澤さん:怖い感じに読んじゃったけど怖くない、楽しい一冊なんです

 

宇垣さんによる概要紹介

674階建て。巨大タワー国家。

地上からの脅威が迫り、下層階を軍隊が、上層階を富裕層が締める「ビーンスターク」の人々は、不完全で優しい。

犬の俳優Pの謎、愛国の低所恐怖症、デモ隊VSインド象大陸間弾道ミサイル、テロリストの葛藤など。

韓国SFの金字塔にして、笑いと涙の摩天楼エンタテインメント。

 

宇多丸さん:作者の斎藤真理子さんはいつも翻訳文学特集でお世話になってます。

これ僕持っていたのに今日までに読んでなかった……

 

池澤さん:と言うことは帰ったらすぐ読めますね!

 

宇垣さん:私も積んでます

 

宇多丸さん:何故この本に目を付けたんですか?

 

池澤さん:韓国SFは注目されているし、面白いし、その中でも見た目のインパクトが凄い。装丁を観た時点で「これは当たりだろう!」と。読んでみたらまさしく当たりでした。

 

宇多丸さん:『スノーピアサー』のように限定空間内でのSFというジャンルはある。そんなイメージですか?

 

池澤さん:そうですね。

674階の建物の中に50万人が暮らしている。

1フロアも凄く大きい。フロア毎にヒエラルキーがあり、この世界の住人は低所恐怖症なんです。

 

宇多丸さん:下に行くと良くない暮らしが待っているから

 

池澤さん:低いところに行けば行くほど気分が悪くなる。外に一歩も出ず、その中で生まれ、死んでいく。

故に距離や高さの概念が私達とは違う。私たちは実は二次元の(平面的な)世界に暮らしている。

飛行機などで一時的に上に上がるところに挙がることはあっても、基本的には横移動。

しかしこのビーンスタークでは縦の移動が基本。

 

エレベーターが主な交通手段。

下から一番上まで一度に上がることが出来ないため、私達が電車を乗り継ぐようにエレベーターを乗り継いで移動する。

 

私たちの世界では様々な交通手段があるが、この世界ではエレベーター以外に移動手段がない。

 

では下から敵が攻めてきたらどのように軍隊を動かし展開していけば良いのか。

また、下の階にミサイルを撃ち込まれたらポキッと折れておしまい。

 

「高さ」の概念が加わることで私たちの世界が変わる。

 

本作は連作。

「権力が如何に移動していくのか」という実験を行う話もある。

トロフィーのように飾るだけの高いお酒にタグを付けて追跡すると、そのお酒がどのようなルートを辿って移動していくかが分かる。

しかし、一箇所どうしてもその追跡が止まる場所がある。

その部屋には映画俳優Pが住んでいる。

そのPは犬。犬であるが故にそこから高級なお酒は移動しない。

映画俳優Pは「こくみん」と鳴くことができるため、タワーの中ではカリスマ的な人気。

 

宇多丸さん:犬が俳優していたり、そういう不思議な世界観でもあるんだ。

 

池澤さん:心温まる話もある。

他にはタクラマカン砂漠に墜落した恋人を探すために世界中の人達が衛星写真を一ドットずつ見ていくという、インターネットの良いところを描く作品など。

ビースタークの中には青いポストがあり、そこに手紙を入れる階に行く人行く人がそれを運んでくれる。

「これうちの近くだから持って行ってあげよう」という善意に根ざした配達システムがあったが、そこに間違って届いてしまった、タワーの外にいる恋人から中野恋人への手紙。

間違ってしまったが故に外の恋人空の手紙は中の恋人に届かない。

外の恋人はそれに絶望し、「傭兵として手柄を挙げればタワーの住民になれるかも知れない」と傭兵に志願する。

間違って届けられた手紙を持ってしまっている人は、自分の行動が恋人二人の運命を変えてしまうことに気付き、善意の連鎖が起こっていって……

という作品。TwitterなどのSNSがまだ一般的ではなかった2000年代初頭に書かれた作品。

 

SNSは良いエネルギーも悪いエネルギーも加速させる力があると思っていて、良い意味での加速の美しい形を描いている。

 

宇多丸さん:タワー型国家と聞いてディストピアを想像したけどそう言うわけじゃ無いんですね

 

池澤さん:そうですね。

デモ隊を鎮圧させるためにゾウを雇う。「騎馬隊よりもインパクトがあるだろう」というアイディアから。

さかしゾウは花の臭いを嗅ぎながらのんびりと歩くものだから、デモ隊は「ゾウの邪魔をしちゃいけないよね。お花を植えてあげよう」となる。

ゾウはある瞬間悟りを開いて解脱しそうになる、という不思議な話もある

 

宇垣さん:ホッコリ系の話もあるんですね

 

池澤さん:強い感情の動きはないが、名付けがたいような感情の動きがある。

寒い冬、暖房を焚くお金もないが隣の部屋から伝わってくる暖かさを「これが愛だよね」と捉えることから始まる男女の擦れ違いなど、名付けられない思いを拾い上げるのが凄く上手い。

 

主人公も違うし、書き方や狙いとしているものが違うからんどんどん読めてしまう。

 

推しの一節

ワン!ワンワン!

 

宇多丸さん:さっきの俳優犬?

 

宇垣さん:ビックリしちゃった

 

池澤さん:ハハハハ

 

宇多丸さん:ここだけ聞いた人はね。大分会長職がお疲れだったのかと

 

池澤さん:付録として3編ついている。

作中登場する作家の書いた短編、「520階研究」の序文。一番好きなのは「内面表出演技にかけた俳優Pのイカれたインタビュー」というもの。

これが「あるわこういうインタビュー」という感じ。

「今回賞を受賞したが?」

「はい。特別な賞だった。人間異界の俳優に与えられた初の賞だった」

とか、全て頭の中でボイスオーバー口調で再現されると言うくらい良い感じ。

「あの決め台詞をいったことで自分の俳優人生は決定付けられた」

「そのセリフは何ですか?」

「ワン!ワンワン!」

「実際には何と言ったんですか?」

「ワンワン!」

 

宇多丸さん:ふざけてる〜

 

池澤さん:「本犬としては気に入っている」とか

 

宇多丸さん:結構犬インタビューしっかりボリュームあるんですね!

 

池澤さん:この後の「タワー概念用語辞典」というのも素晴らしい。

「バカ:現代の都会人の間で合意を見ている、最小限の邪悪さを習得していないため、他人がまったく予想できない状況で人の道を貫こうとして社会を混乱に陥れる人」

 

宇多丸さん:ちょっと悪魔の辞典的な面白さがありますね。

表紙のポップな印象そのままの中身なんですね。

 

我々の自宅のタワーにはあるので、読んでみます

 

池澤さん:紹介するのはサラ・ピンスカーの『いずれすべては海の中に』と迷った。

 

今年のベストは『いずれすべては海の中に』。これも短編集で凄まじく良かった。

今年じゃなくて人生のベストテンくらいに入るんじゃ無いのかレベル。

あらゆる文章、あらゆる思想が心地よい。

 

奇想を元にした作品で、コンピュータ制御の義手がハイウェイに繋がってしまう話など。

 

ほかには全世界のサラ・ピンスカーを集めて「サラ・コン」が開催される話など

 

宇垣さん:サラ・ピンスカーってそんなに一杯いるんですか?

 

池澤さん:全平行宇宙のサラです。

サラによるサラの殺人事件が起きて、それをサラが探偵として捜査する物語。

 

凄く美しく凄く染みる。

SFとは人間を描く物。『タワー』もそうだが、どんなに奇想や奇抜な世界を用意しても、そこで描きたいのは人間なのだと気付く。

 

宇多丸さん:結局二作紹介して貰っちゃって……

こう言う手があったか笑

 

 
 
 
 
 
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11/21(月)アトロク秋の推薦図書月間2022⑫ スーパー・ササダンゴ・マシンさん

入魂の一冊

 

令和の鬼平犯科帳石田衣良は現代の池波正太郎である。

石田衣良『ペットショップ無惨 池袋ウエストゲートパーク18』

 

 

 
 
 
 
 
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宇多丸さん:『池袋ウエストゲートパーク』。あの映画にもなった?

エイティーンなんだ!

 

ササダンゴさん:第十八巻です

 

宇多丸さん:そんな出てんだ!

 

クマスによる概要紹介

1997年に連載スタートしたミステリシリーズ。池袋西口公園近くの果物屋の息子で「池袋のトラブルシューター」こと真島誠が事件を解決していく。

2000年には長瀬智也さん主演、窪塚洋介等の共演でドラマ化して大ヒット。アニメ化、ミュージカル化もされてきた。

ペットビジネスの闇に斬り込む表題作を含む4エピソードを収録。

 

宇多丸さん:ドラマ版の印象が強いんだけど、元のシリーズがこんなに続いているなんて!

 

ササダンゴさん:手に取ったキッカケは去年本屋さんで池波正太郎作品の文庫を探していたところ、同じ「イ」のエリアに石田衣良作品が並んでいたから。

97年、上京の年に一巻が出ていて、ドラマ化前に小説も読んでいた。

 

池袋のカラーギャング援助交際などの現実が上手く小説に組み込まれていた。

新潟への帰省の折に東京駅で単行本を見付ける度に買っていた。

小説が売れていた時代で、よく平積みされていた。

 

帰省先で地元の友人に「東京ってこうなんだぜ」、「カラーギャングがな……」とまるで直に見てきたように話していた。

 

それがまさか今も年一で新刊が発売されているとは気付いていなかった。

アニメ版、舞台版はドラマ版が下敷きになっていて、その物語が今も続いているとは知らなかった。

 

2010年に一度連載を終え、それまで登場人物は現実の時間経過に合わせて歳を取ってアラサーになっていた。

 

2014年にシーズン2的な形で復活した際には彼らの歳は20代後半に再設定。

そこからは7〜8年歳を取っていない。

 

宇多丸さん:石田さんも割り切った!

 

ササダンゴさん:そこからはネバーエンディング・ストーリーになっていってる。

 

去年手に取ったのは2021年に発売された『炎上フェニックス』。

印象的だったのは2020年に「オール讀物」で年四ペースで連載されていた作品なので、物語の舞台である池袋がコロナ禍に見舞われている。

 

「実家の果物屋が例年の4割になった」というモノローグから始まるが、母親はNetflixで韓国ドラマを観て楽しく過ごしているらしい。

 

商店街のおばちゃんの仲間同士では韓国ドラマの話題で持ちきりだ、みたいな。

 

宇多丸さん:『愛の不時着』とかがはやってた時期ですかね?

 

ササダンゴさん:誠が『呪術廻戦』に例えたりする。

 

宇多丸さん:ポップカルチャーの臭い吸ってますね

 

ササダンゴさん:『炎上フェニックス』収録の一本目は工業高校の先輩がパパ活でトラブルに巻き込まれる話。

そのパパ活サイトの運営するホストクラブの背後には巨大な半グレ組織「東日本連合」。

20年前には存在しないような組織。

 

社会問題、社会的課題をムリに解決しようとはせず、登場人物の半径5mくらいの知り合いは超法規的に救いの手を差し伸べる。

 

また、当時そこまで話題になっていたか微妙だが「ぶつかり男」を描いていたり、Uber EATSのドライバーが自転車に落書きされたことで始まる話が収録されていたり。

 

女性アナの炎上・ストーカー被害などをコロナ禍の池袋を舞台に描く。

 

コロナ禍に入ったばかりの時期にこの様な描写の作品を書いていたというのは実は貴重では?

 

宇多丸さん:フットワーク軽い。記録にもなるし良いですね。

 

ササダンゴさん:『ペットショップ無惨』ではマッチングアプリを使った美人局詐欺をする兄弟を描いたストーリーや、おばあちゃんの世話をする「ヤングケアラー」の女子高生を描いた話など。

 

主人公はトラブルに巻き込まれた人を助けることは出来る。

かつて登場していた幼馴染みのヤクザ者は時勢柄出て来られない。

超法規的にトラブルを解決するが、社会的問題の根本原因は解決できない。

 

主人公は誠やキングたちといったお馴染みのキャラだが、依頼人が魅力的。

誰もがどこか欠けた部分を持っている。誠たちはその欠けた部分を探し当てていくまでが物語になっていて感情移入しやすい。

 

【前回】

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11/17(木)アトロク秋の推薦図書月間2022⑪ リバーサイドリーディングクラブさん

ストリートカルチャーと古本をこよなく愛する野良読書家集団、リバーサイドリーディングクラブikmさん、片桐さんによる書籍紹介。

 

宇多丸さん:昨日出演した森崎ウィンさんが「リバーサイドリーディングクラブ?!」、「何なんですかその集団は!」、「野良読書家集団?!」ってメッチャ食いついてましたよ

 

宇内さんによるリバーサイドリーディングクラブさんの紹介:

通称RRC。ヒップホップ、ハードコアパンクとと古本好きを中心に結成された自称・野良読書家集団。

リーダーのikmさんが川沿いで本を読むことが好きだったことでこの名前に。

 

朝日新聞の「好書好日」というコーナーで“BOOK GIVES YOU CHOICES”を連載中。

book.asahi.com

 

宇多丸さん:お土産で貰ったキーホルダーにもこの言葉が書かれていますね

 

RRC:僕の好きな『酔いどれに悪人なし』という本に出て来る一説。

息子が父に「何故本を読むのか」と訊ねたところ、父は「選択肢を与えてくれるから」と答える。

更に息子が「“選択肢”って何?」と訊ねると父が「自由だよボウズ」と返すシーンがある。

 

宇内さん:かっこいい!

 

RRC:ここが滅茶苦茶好きでキャッチフレーズに使っている

 

RRCのお二人による入魂の一冊

 

西武池袋線の、中村橋駅2LDK。茶トラの子猫、週末のの競馬、何となく居着いた友人たち。ネガティブもその予感もない。「このまま続けば良いな」と思える日常。それのみで書かれた「パワーアンビエント小説」。

保坂和志著『プレーンソング』



 

宇多丸さん:今まではRRCは日本の本でもノンフィクションなどを紹介いただくことが多かったけど、日本の小説は初めてでは?

 

RRCさん:今までは海外翻訳小説しか読んでいなかったが、ちょうど去年アトロクに出た後に保坂和志の『残響』を読んだら滅茶苦茶凄かった。

2〜3カ月考え続けてしまうほどだった。

それ以来、日本の小説も読むようになった

 

宇多丸さん:RRCが敢えて進める『プレーンソング』、どんな本なんでしょうか

 

宇内さんによる概要紹介

ネコと競馬とゆったり流れる時間。

四人の若者の奇妙な共同生活を、独自の文体で書き上げた小説家・保坂和志さんのデビュー作。

公式の説明文は次の通り。

「うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる…。(宇内さん:ふしぎな文章ですよね)猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。」

作者は1995年『この人の閾』で芥川賞を受賞。

 

RRCさん:メンバーの一人マーシー君が「最近読んで一番食らった本」として紹介。

ネコ小説。保坂さんはネコがお好きで、『残響』を読んだあと『残響』が凄すぎたけど、ネコなんだよなぁ……と思っていた。

 

お勧めしてくれたメンバーに「保坂さんってネコでしょ?」と言ったら、「ネコだけど、ラストが凄い。オチは犬だから、保坂さんの作品を読むことは犬への裏切りでは無い」と言われて読み始めた。

 

宇多丸さん:毎年その言い訳をしなければいけない笑

 

RRCさん:作中、人間と犬とネコの関係がしっかり描かれている作品

 

宇多丸さん:「パワーアンビエント」っていっていたけど、起伏が無い感じの作品?

 

RRCさん:保坂さんが飼っているネコが感染症にかかり、その悲しい気持を一掃するために「不安や不幸の予感の欠片すらない小説を」と書かれた本。

日常のことしか書かれていない。が、「フロウ」は特殊で……

 

宇多丸さん:「フロウ」というのはラップなどに用いられる言葉ですが、「文体」のようなものだと思ってください

 

RRCさん:物語ならドラマやアクシデントなどを入れたいものだが、それを描かずに作品を作り上げている点にパワーだと解釈している。

それでいてアンビエントミュージックのように物語は流れていく。

作者は「日常に意味を見いださなければ、戦争を待望するような人間になってしまう」という旨の発言をしている。

日常に意味を見いだすために小説を書いているのではないか。

小説は過去形で書かれるアートフォームだが、日常を振り返って「あの時こんなことがあった」と書いていくのは日常に意味を見いだしていく行為。

そういう風に書かれた小説を読むと「日常ってやっぱり良いよな」と思える。

 

宇多丸さん:劇的であること、大きな話、「物語」を求めることは歴史、国家のストーリー、大きな「物語」の方が日々の暮らしよりも偉いのだ、となり兼ねないもんね。

さっきの説明同様、中身も不思議な感じなんですか?

 

RRCさん:本当に起伏がない。設定がなくてそこに日常がある、と言う感じ。

 

推しの一節

そんなんじゃなくて、本当に自分がいるところをそのまま撮ってね。そうして、全然ね、映画とか、小説とか分かりやすくてっいうか、だからドラマチックにしちゃっているような話と、全然違う話の中で生きてるっていうか、生きてるっていうのも大袈裟だから、「いる」っていうのが分かってくれれば良いって。

 

宇多丸さん:宇内さんどうですか。インタビューを受けて文字起こししたまんまのような印象を受けませんか?

 

宇内さん:たしかに!「もう少し語尾を直したいんだけどな」てっ言う、文字起こしされた時の文章を読む感じですね。

 

RRCさん:保坂さんの文章は書き言葉ではなく話し言葉に近いフロウ。

ワンセンテンスが長いし、句読点の打ち方も会話時の息継ぎのタイミングに近い。

 

読みやすくは無いかもしれないが、フックがある。

 

宇多丸さん:「物語化」を一切しない、息するように書くのが保坂フロウ?

 

RRC さん:『残響』を読んだときにも独特のフロウに感じ入ったが、デビュー作の『プレーンソング』からこのフロウが完成していた。

 

宇多丸さん:あ、デビュー作なんだこれ!

 

推しの一節(片桐さん)

これって結構訓練がいるんです。こうやってビデオを撮っていると、僕はビデオのフレームで周りを見ちゃうわけでしょ?だから油断するっていうか、油断はちょっと大袈裟だけど、とにかくつい喋っている人とか、一番動いている人とかにカメラが行っちゃって。でもそういうのってどっか変でしょ?

 

宇内さん:うわ〜何かインタビューみたい!

 

宇多丸さん:整える前っていうかね。

これはどう言う場面ですか?

 

RRC さん:これは8mmをずっと回している登場人物が映像を撮る理由を語るシーン。その人物は保坂さん自身にゴダールを混ぜたキャラクター。

その人が話す映像のことは、端的にこの小説のことを言っているのに近い

 

宇多丸さん:「恣意的に切り取りがちだけど、それって要するに“恣意的”じゃん。それ以外の所取りこぼしてんじゃん」ってことですよね?

 

RRCさん:焦点を絞らずに引いた視点で浮かび上がってくる手触りがこの小説、って言う感じ。

 

宇多丸さん:小説でそれをやるのは難しいよね。だって焦点を絞る、何を書いて何を書かないかの取捨選択が絶対ある。

文章でそれを表現するのは実は滅茶苦茶凄いことにトライしている

 

RRC さん:海外文学で日常を切り取った描写に近い感じがする。

海外文学好きだからスムーズに読めたのかな。

海外文学特有のフロウがある。ちょっと読みにくい文体が好きだからハマったのかも。

 

推しの一節

本当以外の何者でも無いような、本当と言うのでもないし、作り話や、フィクションという枠組みに守られて、その中で面白がればそれで良いという話とも違っていて。

信じてしまう人間だけが信じてしまう。それは事実性からどうこう言う話ではなくて。話す側と聞く側の意思だけで意味とか、あるいは意味に近い何かを与えていく話で、僕はそう言う話が凄く好きなのだ。

 

宇多丸さん:後半論旨が分かりづらくなっていくところも本当の会話っぽい!言いながら考えているっぽいというか

 

宇内さん:確かに!どんどんズレていっちゃうみたいな

 

 

 

【前回】(同日)

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【昨年】

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【関連】

 

書いていて気がついたけど、保坂和志さんは『書きあぐねている人のための小説入門』を書いた方じゃん!

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お題:「わたし○○部でした」

部活の思い出、色々ありますよね。



今週のお題「わたし○○部でした」

 

中学生の頃は3年間バスケ部。

公立校ながら結構強かったんす。

(僕自身は下手っぴでしたが)

 

 

高校時代は3〜4カ月だけラグビー部。

ヒョロガリだったのですぐにやめてしまった。

 

その後軽音楽同好会に。

 

今テレビで放送されていると観るスポーツはサッカーとラグビーの代表戦。

先日オールブラックスをホームに招いて戦ったラグビー日本代表の試合は滅茶苦茶燃えましたな。

 

 

 

お題全文:

意外と覚えてる部活のあれこれ

今週のお題は「わたし○○部でした」です。

学生のとき、あなたはどんな部活動をしていましたか? 今週は「わたし○○部でした」をテーマにみなさんからのエントリーを募集します。「いちばん楽しかった部活の思い出」「顧問の先生が怖かった……」「部活での経験が今の自分に繋がっています!」など、あなたの所属していた部活動について、はてなブログに書いて投稿してください! 学生の方は、今取り組んでいる部活について教えてくださいね! みなさんのご応募をお待ちしております。

11/17(木)アトロク秋の推薦図書月間2022⑩ 宇内 梨沙 さん

先日のBLUE NOTE TOKYOでのライムスターライブを鑑賞した宇内さん。

その時の様子に関するオープニングトークから。

 

宇内さんが来週リフレッシュ休暇によりお休みと言うことで、他のパートナーに先駆けて入魂の一冊を紹介。

 

『これからの男の子たちへ: 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』

 

宇内さん:結構ジェンダー論が好き。

フェミニズムの本も結構読む。

男女間の差による炎上はネットで話題になり、ネットメディアで扱われることはあるが、テレビなどのマスメディアでは取り上げられないことが多い。

 

女性の方がマイノリティだから女性の意見を伝えることが多いが、男性にも押し付けられたジェンダーもある。

 

宇多丸さん:「男らしさ」とかね

 

宇内さん:まさしく。タイトルに謳われているとおりですね。

 

筆者の太田さんは二人のお子さんがいる。中学生と小学生の男の子二人。

子育ての中で気付くことが沢山ある。

周囲から「男らしさ」を押し付けられていると気付く。

例えば『鬼滅の刃』。『鬼滅の刃』が悪いわけではないが、同作で主人公の炭治郎に「男だから堪えろ」という旨のセリフがある

 

宇多丸さん:大正時代であるが故の価値観なんだろうけど、子供は相対化できないもんね

 

宇内さん:男性も男性社会の価値観を悪意無く押し付けられている。

また、「女の子向け」、「男の子向け」のおもちゃの宣伝も悪いわけではないが、そういった「〇〇向け」という分類も現実として存在している。

しかし逐一「男の子でも好きになって良いんだよ」という必要がある。

 

女性を性的に描くコンテンツもそれ自体は悪では無い。

悪いのは、それを現実として間違って受け入れてしまうこと。

「これは創作物であって現実とは違う」としっかり教えていくべきもの。

性教育を避けずに向かい合っていくことが必要なのではないか。

男女間の対立を生むような本では無く、「これからの男の子達にはこんな希望があるんだ」と思える本。

女性から押しつけられて読むのではなく、男性学などに興味がある人は男性でも是非読んでみて欲しい。

 

宇多丸さん:先日ニュースで男女一緒に踏み込んだ性教育をしたところ、男子の側も「今まで全くわかってなかった」と認識が変わったという報道を観た。

宇内さんの言うとおり希望が持てるものだった。

 

宇内さん:学校教育も変わってきている。誰もが価値観を完全に変えることは難しい。私自身、価値観を完全に変えることは出来ないけど、読めば少しでも変わるはず。

 

宇多丸さん:荻上チキさんも「20世紀のリベラル派議員よりも今の自民党議員の方が(ジェンダー認識などの点で)マシだ」という旨を以前言っていた。社会は少しずつだけどよくなっているはず。

 

宇内さん:二次創作物で異常に女性の体がデフォルメされたイラストが炎上するケースがある。

 

これは女性が男性を「現実と創作の区別がつかないから」という認識に基づいて生じているのではないか。

ちゃんと教育で「現実と創られたもの」の区別を学ぶことが出来れば、こういった事象も改善されていくのではないか。

 

男性に課せられた家父長制、プレッシャーのようなものが軽減されていけば歩み寄れるんだろうな。

同時に女性も自分が家族を守る気持ちを強く持てるようになれば男女間の軋轢も解消に向かっていくのではないか

 

宇多丸さん:それは当然社会制度の変容と両輪だろうけどね

 

宇内さん:女性の方が非正規雇用の割合が高いなど、構造的な問題もありますしね

 

 

 
 
 
 
 
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【去年】

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11/16(水)アトロク秋の推薦図書月間2022⑨ 森崎 ウィンさん

深田晃司監督作『 LOVE LIFE』 森崎ウィンさんが声の出演あり。その役がラジオパーソナリティであり、大変重要な役。

森崎さんがやっているラジオを聴いた深田監督から声がかかり、出演が決まったとのこと。

 

森崎ウィンさんのファンとしても“深田監督、分かってる!”と思った」と宇多丸さん。

 

宇多丸さん:日頃から本は読みますか?

 

森崎さん:ハマると一気に読んでしまうが、常に何かを読んでいる、と言うタイプでは無いです

 

宇多丸さん:本を読むのはどんな時が多いですか?

 

森崎さん:現場の待ち時間など。敢えて台本から離れてリフレッシュしたいとき。

家ではアニメばかり観ていて読むことがない。

推理系、ミステリ系が好き。重めのものは耐えられないかも。

 

入魂の一冊

インテリアの旅物語り

南村 弾『INSPIRATIONS 南村弾がデザインするインテリアテキスタイル』

 


宇多丸さんよる概要紹概要紹介

テキスタイルデザイナーの南村 弾さん初のデザインブック。

 

毎年ドイツフランクフルトで開催されるホームテキスタイル見本市Heimt(ハイムテキスタイル)においてトレンドを提案する「トレンドセッター」にアジア人として初めて選出されるなど、世界をリードするテキスタイルの大家。

www.jp.messefrankfurt.com

 

NHK の「世界は欲しい物に溢れている」という番組の生ナレーションショーで南村さんと直接会う機会があった。

南村さんは布を買うバイヤー。

番組で出会った南村さんから自身の書籍を貰い、読んでみるとワクワクした。

その後アトロクから声がかかったため、「これを紹介しよう!」と思い至った。

 

宇多丸さん:森崎さんは以前からテキスタイルに興味はありましたか?

 

森崎さん:正直、無かった。しかし、この本を読んでいると旅をしているような感覚を得られ、自分のリビングを少し変えてみようかなと思うに至った。自分が一番落ち着く場所であるリビングが、少し枠が広がったような感覚

 

宇多丸さん:気に入った写真などありますか?

 

森崎さん:ヨガのポーズをデザイン化したページが良かった。

布の上にデザインとして落とし込むと非常に面白く見える

 

宇多丸さん:人が幾何学模様のようになっていて「チェック柄?……いや、よく見たら人だわ!」みたいな。面白いですね。

 

森崎さん:紙までこだわっている。

薄手の紙で市場の写真が透けて見えたり

 

宇多丸さん:一つ一つは何の変哲もない模様や色でも、全体としてニュアンスを出し始めるのが面白い。

写真だけでなく随所に南村さんの言葉が付記されているのも良いですね

 

森崎さん:そうなんです。スイスの医師にして錬金術師であるパラケルススの言葉を引用している。

「あらゆるものは毒であり、毒のないものは存在しない。あらゆるものが毒になるか薬になるかは、その容量次第である。」

 

この言葉が好き。薔薇ですらトゲがある。

毒のある物だからこそ、使い方によって毒になったり薬になったりする。

 

宇多丸さん:クリエイターとして、人の心を揺るがす何か、安定させない何か、世の中を乱す何かが必要。

しかし、それもただグチャグチャにすれば良いわけでは無く、バランスが重要。

別のページで南村さんが「日本人はバランスを尊ぶが、それは正しい。全ては全体のバランスなのだ」と書いている。

あらゆることに通じる。

(森崎さんの引用した部分の)対になっている。

 

また、森崎さんの表現していることの本質でもあると思う。

 

森崎さん:仰るとおりだと思います

 

宇多丸さん:哲学的なところにも行くし、単純に目で見て楽しい、「アイキャンディ」な一冊でもある。

要所要所違う紙を採用したり、本として非常に良い。

 

森崎さん:この本を作っている南村さんに会いたかった

 

宇多丸さん:テキスタイルは表面的な色相だけでなく、素材感が大切。故に本の装丁にこだわらないわけがないすでよね

 

森崎さん:なるほど……だから紙にこだわっているんでしょうね

 

宇多丸さん:テキスタイルに意識的にこだわっていたわけではなかったが、この本で見方が変わりました

 

森崎さん:イエーイ!

 

宇多丸さん:他の誰とも違う観点で良かったです!「特集に活かせるかな?」何て考えちゃいました!

 

- - - - - - - - - -

森崎ウィンさんは19時台のライブコーナーにも出演。

以前からメッチャファンだったんだけど、今回のライブは最高過ぎた……

1週間で聞けなくなってしまうので、絶対radikoで聴いて欲しい!

 

radiko.jp

 

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【関連】

南村さんのお店

ienotextile.com

11/15(火)アトロク秋の推薦図書月間2022⑧ 柚木 麻子さん

柚木 麻子さんによる書籍紹介。

 

柚木 麻子さん
1981年、東京都生まれ。2008年、女子高でのいじめを描いた「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞。

 

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』にハマっているらしく、劇中に登場する「喫茶どんぶら」のグッズを自作したようで、同好の士たる宇多丸さん、大盛り上がり!

 

先日発売されたばかりの『とりあえずお湯わかせ』を読んだという宇垣さん。

「最高でした!」と一言。

2018年から2022年までの四年間のエッセイ集。

 

宇多丸さん:「クリスマスに『ダイ・ハード』を観る」というくだりが良かったです

 

柚木さん:TBSに行く度に「ここでテロが起きたら……」と考えてしまうダイ・ハード脳です

 

宇垣さん:テロ対策で複雑な作りにしているらしいです

 

宇多丸さん:ジョン・マクレーンが「奥さんに謝りたいから」という動機で頑張るという視点も良かったです

 

入魂の一冊

 

異例の作家紹介無し。命懸けで書かれた女性18人による抵抗の作品集。

アフガニスタンの女性作家たち 著/古屋美登里 訳『わたしのペンは鳥の翼』

 

宇垣さん:これ読みたかったんですよ!

 

宇垣さんによる概要紹介

女性嫌悪、家父長制、法力、貧困、テロ、戦争、死。一日を生き抜くことに精一杯の彼女たちが、身を危険にさらしても表現したかった作品達。

アフガニスタンの女性たち18人による23の短編集。

イギリスの出版社がアフガニスタンとやり取りをし、「小説を書きたい」という女性を募って3年間をかけて刊行に漕ぎ着けた。

 

宇多丸さん:この作品の帯コメントを柚木さんが寄せているということで、宇垣さん是非お願いします。

 

宇垣さん:

「書くことがこんなにも強靭な抵抗になるなんて。
この炎のような短篇集を読み、語り合うことで、彼女たちの命懸けの戦いにくわわろう。」

 

(帯コメントを読みたい方はこちらから↓)

booklive.jp

 

柚木さん:帯コメントを寄せるに当たっていち早く読ませてもらった。

18人の女性作家の情報が全て伏せられているという異例の作品。

 

昨年タリバン政権が発足したことでアフガニスタン女性は行動制限を課され、教育機関に行くことを禁じられ、遊園地への入園を禁じられた。

身の危険を避けるため、作家は全員情報を伏せられているが、本書が版を重ねることで徐々に情報が出て来るかも知れない。

 

著者の一人の発言に「読んでもらうことが精神的支えになる。各国で売れて反響があるほど書き手の不安軽減に繋がる」とある。

一つ一つの物語の背景を知りたいので、是非筆者の情報が出て来て欲しいという思いがある。日本でも売れて欲しいと思い紹介。

 

宇多丸さん:教育をはじめとして権利を剥奪されている環境で小説を書くと言うことは、バレたらどんな弾圧を受けるか分からない状況ですよね

 

柚木さん:本書のプロジェクト始動時はタリバン政権下ではなかったが、タリバン政権発足後は状況が一転したらしい。

アフガニスタンの言語→英語→日本語、と重訳(じゅうやく)を経た一冊。

 

日本もミサイルが撃ち込まれたり、すぐ近くで戦争が行われていたり、戦争が身近なものに。

本書に描かれていることは私たちの生活に近いところもあれば、全く知らない世界でもある。

物語の力を感じられる。

 

宇多丸さん:宇垣さんも本書を注目していたようですが

 

宇垣さん:柚木さんが帯を書いたと聞いて読みたくなった。外国文学を読む理由はその国の人が考えていることに触れ、「知らない人」じゃなくて「知っている人」になることだと思う。

言葉を奪われている人のことを唯一知る方法なのではないか

 

柚木さん:宇垣さんに読んで欲しい短編がある。「遅番」。

タリバン政権下でキャスターをやっている女性アナウンサーの話。

スタジオ入りしてリップライナーを塗ったところで爆発が起きる。

 

宇多丸さん・宇垣さん:え〜!

 

柚木さん:家族の無事を考えながら仕事をこなし、帰宅して家族に爆発があったことを伝える。

そして翌日、爆発のあったテレビ局へ仕事をしに行く。

私達の知っている日常のすぐそばに戦争がある。

 

他にも「自分が死んだことに気が付いていない」といったような悲惨な話も収録されているが、女性同士の連帯で乗り越えていく物語もあり、元気の出る物語も収録されている。

 

宇多丸さんが好きそうな作品は一番最後の「エアコンを付けてくれませんか」という一作。

 

この後恐らく死ぬであろう校長先生が「自分死ぬんじゃないかな」と思いながら学校に行き、恐らく死に向かっていく話。

物語としてギリギリである一方、どこかおかしみもある。小説としての技法も非常に優れていて、宇多丸さんが好きそう

 

宇多丸さん:聞いているだけで読みたくなりました!

 

柚木さん:死と隣り合わせで普通に生きていて、それが全員にとっての日常であるという

 

宇多丸さん:ニュースで目にする情報などだと、単なる「数字」でしか無かったりするけど、物語を介することでより感じ入るものがある

 

宇多丸さん:柚木さんの推しの一節があれば是非

 

柚木さん:

「皆はタリバンが変わったと言っている。でも、本を読めないのにどうやって変われるわけ?本を読まずにどうやって変われるというの?

私達の親が皆文字を読めたら、あなたみたいな女の子が酷い目に合わずに済むのに」

 

宇多丸さん:この本全体のコアを成すような、ズバンとド真ん中ストレートな感じですね

 

柚木さん:他にも学校を爆撃され、女の子達が勉強をする機会を奪われて抗議デモをしようとしたら全員死んでしまう「花」という物語。

これは実話に基づいた話。

 

声を奪われ、教育の機会を奪われる絶望を描いているが、自分たちの知恵を武器に連帯する女性達を描いている。

 

宇多丸さん:何故女性が知性を持つことを弾圧するかといえばそれは恐れ。

「知の連帯」は為政者が恐れる最たるもの。

 

読んで反響が世界中に広がることは、希望と簡単に言ってはいけないかも知れないけれど、希望に繋がるのかな

 

宇垣さん:「貴女たちがそこにいること、知ってるよ」って読むことで言える気がする。

 

柚木さん:「小説で何を変えられるのか」と自分で思うことがあるが、この本は間違いなく読んで感想を言い合うことが連帯に繋がる。

 

 

 
 
 
 
 
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【関連】

柚木さんのインタビュー①

bunshun.jp

インタビュー②

bunshun.jp

11/14(月)アトロク秋の推薦図書月間2022⑦ 伊賀 大介さん

伊賀さんが先日紹介したマネの企画展についての話を一頻りした後に書籍紹介に。

 

知っているつもり?20世紀最高のスポーツマンでありアジテーター、モハメド・アリのことを。そして--

ジョナサン・アイグ 著 /押野 素子 訳『評伝モハメド・アリ アメリカで最も憎まれたチャンピオン』

www.iwanami.co.jp

 

宇多丸さん:先日東京MXで玉袋筋太朗さんに「宇多ちゃん、モハメド・アリのやつ読んだ?」と言われた。流石玉さん!

 

小沢アナによる概要紹介(クマスは今日はお休み)

ボクシングの世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリ

挑発的な振る舞いで世界で最も嫌われたチャンピオンは、如何にして世界で最も愛される反逆のアイコンとなったのか。

200名以上の関係者取材などから明らかになるアリの最新評伝。

 

宇多丸さん:小沢さん、モハメド・アリってどんなイメージ?

 

小沢さん:「凄いボクサー」というくらいしか……

 

伊賀さん:9月くらいに購入したものの、積ん読になっていた。

先日アトロクでも特集されていたアントニオ猪木氏の死去に伴い、喪失感が。

毎日猪木のことを考えていたらモハメド・アリのことを考えるようになった

 

宇多丸さん:異種格闘技戦のはしり

 

伊賀さん:総合格闘技の元祖と言われている試合が猪木vsモハメド・アリ戦。

今が読み時と思って読み始めた。

 

587ページ二段組みの大著だが、3日ほどで読み終えてしまった。

 

宇多丸さん:アリの評伝は今までにもあったと思うが本作は?

 

伊賀さん:アリの本を全て読んではいないが、本書はデータが詳細。

ファクトチェックが精密に成されている。

 

モハメド・アリは華麗なボクサーだが、結構パンチを貰ってもいる。

パンチの応酬が多い試合はそれだけ視聴者は盛り上がる。

生涯食らっていたパンチのダメージの蓄積により、晩年彼がどうなっていくのかが描かれる。

 

本書ではどの試合に何発中何発パンチを貰ってしまったか、通算で何千発パンチを貰ったかが分かる。

体重90〜100kg級のヘビー級ボクサーのパンチを貰い続けるとどうなるのか。

ボクシングの残酷な一面も垣間見える1冊。

 

幼少時代からのアリの人生が描かれ、登場人物も豪華。マルコムXなどなど。

 

イスラム教の教えを受けて名前を変える過程なども描かれる。

 

宇多丸さん:アリはビッグマウスで、今で言う「プロレス的」な煽りも

 

伊賀さん:アリがもたらした革命は二つ。

1つにはボクシングスタイル。ヘビー級ボクサーなのに軽やかにジャブを使い、足を使って逃げるボクサーはいなかった。

ベタ足で強いパンチを打ちまくるのがヘビー級ボクサーのスタイル。

「蝶のように舞い蜂のように刺す。お前がパンチを打つとき、俺はそこにはいない」という口撃を試合中に相手に浴びせる。

 

宇多丸さん:もうラップですよね。名調子、ライムしてて、みたいな

 

伊賀さん:もう一つは試合前の煽り。

「お前なんて二秒で倒す」のようなことを言う。

それまではリスペクトがあって悪口じみたことは言わなかったが、アリは容赦なく打ちのめすような悪口を言う。

「お前は鼻が低くて……」というような今では許されないようなルッキズム的な口撃も。

試合前からとにかく盛り上げる。

 

宇多丸さんが「プロレス的」と言ったが、この様な盛り上げ方はプロレスラーに倣っている。

「お前は8R目で倒れる」というような予告ラウンドKOなどもアリがはしり。

 

宇多丸さん:相手は堪ったもんじゃないね

 

伊賀さん:チャンピオンとの試合、オッズは8:1でアリが不利だったが、口撃によるアップセットでアリが勝利を収める、といった番狂わせも

 

宇多丸さん:政治的な発言で目を付けられることもありましたね

 

伊賀さん:徴兵拒否でヘビー級チャンピオン剥奪などもあった。

今回出演に当たってNetflix『ブラットブラザーズ』と言うドキュメンタリーを見た。

(正式タイトル:“Blood Brothers: Malcolm X & Muhammad Ali”/『ブラッド・ブラザーズ: マルコムXモハメド・アリ』)

 

マルコムXとアリは義兄弟と言うほど仲が良かったが、その関係は3年ほど。

『ブラットブラザーズ』を観ると当時の映像が満載で非常に面白い。

本書の副読本(?)として最高。

 

宇多丸さん:猪木戦のことについては?

 

伊賀さん:悲しいかな、アッサリとしか書かれていない。

 

本書を読んで分かるのは、アリが滅茶苦茶チャーミングということ。

浮気も凄いし、取り巻きも凄い。

500ドル持って昼食に行くと帰宅時には1セントも残っていない。路上生活者を見れば手持ちのお金を全て与えてしまう。

どれだけ稼ごうが手元に残るお金は少なかった。

 

そして1976年、モハメド・アリアントニオ猪木の人生が交わる瞬間が……

 

宇多丸さん:経済的理由もあるのかな

 

推しの一節

ジョー・フレージャーと1971年に戦った「世紀の一戦」。3億人が見た試合。メジャーリーガーが15年で稼ぐ額を一晩で稼いだ。

「あらゆる人がそこにいた。そこにいなかった者も「そこにいた」と嘘をついた。マジソンスクエアガーデンのよどんだ空気を吸っていたのは……」(そこに出て来るセレブの名前が、フランク・シナトラとか、KFCのカーネル・サンダース、ダイアナロスもいて、ウディ・アレン……他多数)

伊賀さん:とにかく「観なきゃヤバい」試合だった。

 

 

 
 
 
 
 
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【昨年】

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2022年38人目:福田 ルミカさん/熊崎風斗アナ オススメグラビアアイドル(2022/11/07)

クマスが毎週おすすめするグラビアアイドルをアーカイブするエントリ2022年第38回。

 

福田 ルミカさん

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宇多丸さん:さて今週のおすすめグラビアアイドル。熊崎さんどなたでしょうか?

 


クマス:今フラッシュの表紙になっています福田 ルミカさんという方ご紹介させてください。

 


宇多丸さん:うん

 


クマス:あの、2020年のコカ・コーラ東京オリンピックキャンペーンのCMに抜擢されたという方で、11月24日に写真集も発売になりますし

 


宇多丸さん:はい

 


クマス:去年ヤンマガの表紙でグラビアデビューしたんですけれども

 


宇多丸さん:お〜

 


クマス:初登場・初水着・初表紙でヤンマガ

 


宇多丸さん:うん

 


クマス:表紙になったというのがこれ20年ぶり

 


宇多丸さん:え〜

 


クマス:ちょっと20年前じゃあ誰だったんだって、ちょっと調べ切れなかったんですけど、

 


宇多丸さん:あ〜

 


クマス:まぁ相当期待されている逸材

 


宇多丸さん:グラビア界のもう、エース中のエースとして

 


クマス:もう、そうですね

 


宇多丸さん:もう、あの将来が期待されている

 


クマス:今後間違いない。初写真集が11月24日木曜日発売。是非みなさん、チェック、お願いします

 


宇多丸さん:福田 ルミカさんです。“ルミカ”さんはカタカナです。

- - - - - - - - - - -

 

【所属】:株街acali

acali.co.jp

 

 

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【関連】

www.sanspo.com

 

「日本史をやらないと」って言ってるのめっちゃギャップ。

お題:「地元自慢」

友人達から地元大好き人間として知られていた僕が地元を離れて早6年(6年?!)……

 

地元に帰りたいっす。

 

今週のお題「地元自慢」

僕は生まれは茅ヶ崎育ちは小田原、大学時代のバイト先は四年間藤沢という神奈川っ子。

 

帰属意識の引力は幼少期を過ごした小田原に対して強く感じる一方、大学時代サークル以上の強い結びつきを持っていたバイト先のあった藤沢にも感じていたりして。

 

転勤で名古屋、富山と生活拠点を移してみて思うのは、神奈川ってマジで良いところってこと。

 

これが横浜や川崎が地元だとまた違うのかも知れないけど、小田原を含む県西部〜藤沢くらいの場所で生まれ育った人間の多くは、東京に居を構えない。

神奈川県内に生活基盤を持ち続けるケースが多い。

 

県内で大抵のものは揃って、カルチャーを摂取したければ東京に出れば良い。

都内ほど家賃は高くないし、人も多くない。

 

程よく緑もある。

 

実家の周りは一家庭車二台持ちが当たり前の交通の便がちょっと悪い所ではあるんだけどね。

 

「海も山も近くて〜」とか言う人もいるかも知れないけど、「都内へのアクセスが容易で都内ほど生活コストが高くない」。これが地元の良いところ。

身も蓋もないことを言うようだけど、地元を離れてみて実感したポイント。

 

なんだかんだいいところ!

今週のお題は「地元自慢」です。

大人になってみて初めてわかる、地元のよさってありますよね。でも、どんな場所で育ったかって、意外と人に話したりする機会が少ないもの。遠く離れて暮らしている人も、ずっと住んでいる人も、地元のよさを再確認して、ブログに書いてみませんか? 今週は「地元自慢」をテーマに、みなさんのエントリーを募集します。「小さいころから海に通った」「あの店のご飯がうますぎる」「大人になってから知ったけど街の歴史がすごい」など、あなたの「地元自慢」にまつわる出来事を、はてなブログに書いて投稿してください! ご応募をお待ちしております。

11/9(水)アトロク秋の推薦図書月間2022⑥ ひろた あきらさん

f:id:naw0t0:20221111002647j:image

宇多丸さん:毎回ひろたさんに紹介されなければ知ることがなかった作品と出会えるので楽しみ。

前回は8/17。フェスのシーズンに合わせて最強の絵本のセットリストを教えていただいた。

 

芸人・絵本作家 ひろたあきらさんによる書籍紹介。

 

入魂の一冊

 

捲っているのはもはや紙ではない。仕掛け絵本の世界。

駒形 克己さん“BLUE TO BLUE”

MOMAでの発売をきっかけに世界に活躍の場を移していく。

駒形さんの展覧会に足を運んだ際にミュージアムショップで見つけてシビれた作品。1994年発売。

著者の有名な一作として“LITTLE TREE”がある。

 

“Little Tree”。

本作で以前から知っていた。7,000円ほどする大型の仕掛け絵本

ページを捲る毎に木が生長していく。

 

他にも沢山の絵本を出しているが、その殆どが仕掛け絵本

仕掛けのバリエーションも豊富。

絵本に関わる方で知らない人はいない程の有名人。

 

駒形さんは元グラフィックデザイナー。絵本作家はグラフィックデザイナーが多い。ミッフィーの原作者など。

www.one-stroke.co.jp

 

“BLUE TO BLUE”

魚の本。本の中に空いた丸い穴から全てのページの一部が覗いており、紙の重なりで波を表現している。

1Pは表紙と同じ素材の紙を採用。

ページを捲ると魚の形に切られたページがある。

ページ毎にそのページに合った素材の紙が採用されている。

 

捲っているのはページではなく「水」。

水を捲りながらサケの気持になって水を旅していくような本。

 

宇多丸さん:飛び出す絵本じゃないのに奥行きを感じる

 

ひろたさん:魚が一枚の紙で表現されているため、影が出来る。それが立体感を生む。

 

日比さん:捲ると影がユラユラ揺れて、まるで魚が波に揺れているみたいですね。

 

宇多丸さん:ページをめくることで海草の中を掻い潜って進むような感覚がある!

 

(紹介を終え、思わず宇多丸さん・日比さん拍手)

 

ひろたさん:非常に繊細な細工が施されているため、子供は破いてしまいそうに思える。

しかし筆者は「壊すことも学びだ」と考えている。

破ってしまった時に「もっと大切に使用」と学べる。

自分も買ってからは自然と袋に入れてから本棚にしまうなど、他の本よりもかなり大事に扱っている。

 

宇多丸さん:見た目は薄いのに、こんなに奥行きを感じるとは……何か(テーマパークなどの)ライドに乗ったような感覚。

 

www.one-stroke.co.jp

 

宇多丸さん:残りの時間で是非他にも仕掛け絵本を。

 

ひろたさん:今絵本の中を泳いでいただいたので、今度は空を飛んでいただこうかと。

 

とぶえほん: ほっきょくからみなみのしまへ

 

鳥の形をしている本。

北極を飛び立った鳥が暖かい南を目指していく。

 

日比さん:鳥が飛んでいる姿を上から見下ろしているような……

 

「鳥瞰」視点で北極から南の島へ空を移動する様を追体験できる。

 

宇多丸さん:高所恐怖症だからちょっと怖い

hello-iroha.com

 

あっちとこっち

箱の中に蛇腹状のカードが四つ。

蛇腹状の紙に描かれた絵を角度を変えてみることで、怒った表情から笑った表情に変化して見えたり。

見る角度によって違ったものが見える。

 

物事の多面性のメタファー?

www.one-stroke.co.jp

 

 

 
 
 
 
 
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11/8(火)アトロク秋の推薦図書月間2022⑤ ラランド ニシダさん/『鮨』(岡本 かの子著)

ラランド西田さん、先日のアトロク出演時に太宰治の『畜犬談』を紹介したことで番組内にプチ太宰ブームが。

 

前回のアトロク出演が自分にとっても潮目の変わるきっかけになったと語るニシダさん。

その理由とは?

 

宇垣さん:(番組内でいち早く『畜犬談』を読んで)「これ書いた奴、ヤベェぞ」となりました

 

宇多丸さん:小説でこんなに笑ったの久し振り。それでいて紛れもなく「文学」というところに着地している

 

宇多丸さん:来週、日本近代文学研究者・斎藤 理生(まさお)先生をお招きして「笑える太宰特集」を遂にやることに。

これも全てニシダさんから『畜犬談』を紹介されたからこそ!

 

ニシダさん:おめでとうございます!

 

宇多丸さん:この番組に出たことでニシダさんも流れが変わったとのことですが?

 

ニシダさん:この番組の「ブックライフトーク」に出たことで「コイツ本当に本に詳しいんだ」となり、「木曜日は本曜日」という東京の本屋の協会の仕事を貰い、10冊の選書を出すことに。

honyoubi.com

 

そして池袋のジュンク堂に念願のポップが出たました!

(※『アメトーーク!』の読書芸人放送後、番組に登場した芸人達の勧める書籍の棚が出来ていたにもかかわらず、ニシダさんの棚だけがなかった)

 

宇垣さん:お勧めいただいた本、殆ど読みました。

 

ニシダさん入魂の一冊

鮮烈な文章で描かれる人間関係の無常観。

岡本かの子著『鮨』

宇多丸さん:渋いところ来ましたね

 

ニシダさん:『畜犬談』がハマッたと言うことで古い短編を持ってきました。

 

宇垣さんによる概要紹介:

東京にある寿司屋の看板娘の「ともよ」は50歳過ぎの常連客の一人、湊(みなと)に惹かれる。

ある日お店の外で湊にであったともよは、病院焼け跡の空き地で湊と二人で時を過ごす。

湊に何故寿司を好んで食べるのかと問うともよ。湊は寿司を食べるのは慰めだと幼少期の思い出を語り出す---

 

宇多丸さん:手に取ったキッカケは?

 

ニシダさん:高校・大学の一番本を読んでいた時期に図書館で全集を手にしたのがキッカケ。

人生の中でもトップクラスに好きな作家。岡本太郎の母親。

 

全集の中には息子太朗に宛てた手紙も入っているが、恋人に宛てたような内容でかなり「拗らせてるな」と思えるもの。

 

今回この本を選んだのは「良い読書体験が出来たな」と思える作家だから。

 

歌人というバックボーンもあってか、多少難解なところが筆者の文章の特徴。

短いながらもじっくり向き合うような読書体験が出来る。

 

何が起きる訳でも無いようなミニマルな話。

 

幼少期、拒食症で何も食べられなかった自分に母親が寿司を作ってくれ、それは食べることが出来た。

そんな思い出話をした翌日から、湊は寿司屋に姿を現さなくなる。

ともよは湊を探すでも無く、「他の寿司屋に行ったんだろうな」と思って終わる。

 

大学時代語らった友人と、卒業後はぱったり会わなくなるような人間関係のリアリティを感じる作品。

 

推しの一文

客のなかの湊というのは、五十過ぎぐらいの紳士で、濃い眉がしらから顔へかけて、憂愁の蔭を帯びている。時によっては、もっと老けて見え、場合によっては情熱的な壮年者にも見えるときもあった。けれども鋭い理智から来る一種の諦念といったようなものが、人柄の上に冴えて、苦味のある顔を柔和に磨いていた。

一発読んだだけでは湊の顔は浮かばない。

しかし読み返して、一度本を閉じて人相を想像する。

そのような作家は自分にとっては岡本 かの子以外いない。

この描写だけで、ともよが湊にどこかしら好感を抱いていることが分かる。

ちょっと好き、ちょっと憧れているんだろうな。

 

偶然のように顔を見合して、ただ一通りの好感を寄せる程度で、微笑して呉れるときはともよは父母とは違って、自分をほぐして呉れるなにか暖味のある刺戟のような感じをこの年とった客からうけた。

宇多丸さん:ちょっと踏み込みましたね

 

ニシダさん:何でともよが湊を気になっているかが書かれているが、そこまで詳には明かしていない。

両親はそこまで仲良くないが、お互いのメリットで暮らしていると言うことにともよは気づいている。

湊のシンプルな優しさに惹かれている。

幼いともよは自信に芽生えた感情が何かはわかっていない。

父母からは得られない優しさを感じている。

 

宇多丸さん:「暖味のある刺戟」なんて上手いね。

 

「いやどうも、僕は身体を壊していて、酒はすっかりとめられているのですが、折角せっかくですから、じゃ、まあ、頂きましょうかな」といって、細いがっしりとしている手を、何度も振って、さも敬意を表するように鮮かに盃を受取り、気持ちよく飲んでまた盃を返す。そして徳利を器用に持上げて酌をしてやる。その挙動の間に、いかにも人なつこく他人の好意に対しては、何倍にかして返さなくては気が済まない性分が現れているので、常連の間で、先生は好い人だということになっていた。

ニシダさん:大したことではないが、「奢ってもらう時の態度が良い」ところに惹かれているのが良い。

こういった描写を読んでいるうちに顔と人間像が出来上がっていく。

 

宇多丸さん:医者に止められているのに人がいいから飲んじゃう。それが店に来なかった理由かも、などと考えてしまう。

 

青空文庫

www.aozora.gr.jp

 

 

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2022年37人目:岸 みゆさん/熊崎風斗アナ オススメグラビアアイドル(2022/10/31)

 クマスが毎週おすすめするグラビアアイドルをアーカイブするエントリ2022年第37回。

 

岸 みゆさん

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宇多丸さん:はい今週のおすすめグラビアアイドル。熊崎君、どなたでしょうか

 

クマス:はい。岸 みゆさんという方ご紹介させてください。

今発売のプレイボーイの表紙、初めてプレイボーイの表紙になったという方で

 

宇多丸さん:うん

 

クマス:あのゼロイチファミリアに所属する女性アイドルグループ「ババババンビ」のメンバーでもあるということで

 

宇多丸さん:へ〜

 

クマス:念願叶ってプレイボーイ初表紙ですので、ぜひ見ていただきたい

 

宇多丸さん:ゼロイチファミリア、この、だからババババンビはね、あの〜曲も、アルバムとかも出して

 

クマス:そうですね。所属メンバーみんなゼロイチの所属で

 

宇多丸さん:そういう音楽グループもやってるんだね

 

クマス:そうです!そしてゼロイチですから当然ねグラビア活動も

 

宇多丸さん:うんうんうん

 

クマス:積極的に展開してますし

 

宇多丸さん:強いね

 

クマス:もうずっと言い続けて言い続けて満を持して念願かなってプレイボールの表紙に。まぁ「つみたてNISA」の特集とかもこのプレイボーイやってますので今日発売ですからぜひ

 

宇多丸さん:なっ(笑)何でその……そこを?

 

クマス:16ページ大特集

 

宇多丸さん:いや、そうだけどさ……

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【所属】:ゼロイチファミリア

01familia.co.jp

 

 

 

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11/7(月)アトロク秋の推薦図書月間2022④ 野村 雅夫さん/『老いた殺し屋の祈り』(マルコ・マルターニ著)

野村 雅夫さん

映画や小説など様々なイタリア文化を伝える京都ドーナツクラブの主催を務め、日本のイタリアカルチャー先生として活躍。

大阪のラジオ局で月〜木の朝の番組でMC。

 

前回は9/8出演。

18:30〜「カルチャートーク

イタリアカルチャー先生、野村雅夫によるピエル・パオロ・パゾリーニ監督入門

open.spotify.com

 

いくつになっても人生はやり直せる!……のか? 元殺人マシン、老いさらばえたヒットマンの場合。

マルコ・マルターニ著『老いた殺し屋の祈り』

 

 

 

クマスによる概要紹介:

主人公は還暦を過ぎた最強の殺し屋オルソ。ある日心臓発作で生死の境を彷徨ったオルソ敗のちのつきる前に生き別れた恋人と娘に会いたいと思うようになる。

彼は組織に楯突き、恋人と娘の暮らす町に旅に出るのだが……

 

宇多丸さん:このBGM、内容に合ってないから変えた方が良いよ!笑

 

宇多丸さん:この本を手に取ったキッカケは?

 

野村さん:海外文学に触れるとき、多くの日本人は。翻訳されたものを読む。

そうすると「翻訳家で本を選ぶ」と言うことも出て来ると思う。アトロクであれば翻訳家の柴田元幸さんが訳した作品なら「今まで読んだことのない作者だけど読んでみたいな」となるのでは?

 

僕自身翻訳をするが、イタリア語→日本語訳者の中で飯田さんの訳を信頼していて新刊が出る度にチェックしている。

 

飯田さんは何でも訳す方。

『老いた殺し屋の祈り』とはどんな作品だろうと思ったらスリラー、「ジャッロ」作品。

飯田さんがこんな作品を訳すのか、という思いがあった。

 

「ジャッロ映画」などと良く評されるが、「ジャッロ」という小説のジャンルが転じたもの。

ジャッロは「黄色」の意味。

ある出版社が100年ほど前にミステリー・スリラー・ハードボイルド作品を黄色い表紙でまとめて刊行したことで、いつの間にかそのジャンルを「ジャッロ」と呼ぶことになった。

 

宇多丸さん:映画の世界における「ジャッロ」映画は他の国のミステリー・スリラー作品とは異なる空気感があって好き。

 

野村さん:マルコ・マルターニさんは1968年生の方で本作が処女作。50代半ばの方だが、ベテランの映画の脚本家。

コメディなど多ジャンルの経験があるが、一番自分が読みたいジャンルを書こうと志向して本作を書き上げた。

 

アクションをつぶさに言語化しているタイプの作品。

 

宇多丸さん:拝読しましたが、画が浮かんで読みやすい。

 

野村さん:「クマ」の異名を持つ人間離れした強さの巨漢が心臓発作を起こすところから物語が始まる。

彼の心の中に残ったヒューマンな部分が彼を生き別れた彼女と娘の元に向かわせるが、身に覚えのないヒットマンからの襲撃を受け……

 

観光映画的な007的な要素を多分に含む。

 

宇多丸さん:すぐにでも映画化しそうですね

 

野村さん:実は国内のみならず海外でも評価が高く、ルッソ兄弟が映像化権を取得したと噂が?

 

ハリウッド映画化?Netflixドラマ化?

イタリア映画では予算的な都合がつかないため、どちらかで実現して欲しい。

 

宇多丸さん:『モスル』でしっかりとイラクを描いたルッソ兄弟なら、ちゃんとイタリアを舞台に映像化してくれそうな気がする。

 

推しの一文

(彼が人生をやり直したいのにやり直せない状況に置かれ、「それでもやっぱりやり直したい」と決意するシーン。

「暴力は暴力しかもたらさない」という事実にオルソが気付く)

自ら代償を払って深く思い知らされた。それが、「暴力は暴力しかもたらさない」という事実だ。
彼がこれまでのように暴力で暴力に反応するのをやめれば、誰にとっても有益なはずだ。

 

 

 
 
 
 
 
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