「映画と文房具と時計、好きなものから1 文字ずつもらって「映文計」。」
ブログのプロフィールにそんなことを書いておきながら、時計のことに触れたことはかなり少ない。
旧ブログで一度、映画に関連した時計のエントリを書いたくらいかな。
映文計: 『イコライザー』の主人公マッコールさんと同じ時計を買った話eibunkeicinemafreak.blog.fc2.com
しばらく時計シーンを追うことをやめてしまっていたんだけど、ちょっと最近また時計にビビッと来ることがあったので、あらためて時計に向き合ったエントリを残しておきたいと思う。
僕は2010年くらいから腕時計が大好きになった。にもかかわらず、不思議なことに何が原因で好きになったのか全く記憶にない……
大学生の頃万年筆を初めとした文房具に興味が出始めて、多分時計への興味関心はその後だったような気がする。
高校生の頃、模擬試験を受けるのに必要だからと言う理由で親に買ってもらった時計が故障して買い換えの必要性が生じたのが、通っていたキャンパスや友人づきあいの記憶から大学3年か4年生の頃だったはず。
「就活に時計無しで面接に臨むのは余り良くないよなぁ」と思って調べ始めたのが時計に興味を持つキッカケだったかも知れないと今になって思う。
社会人一年目には時計好きの同期と時計談義をしていた記憶があるので、僕が時計を本格的に好きになったのは大学3〜4年の2011年か2012年。
その頃から数年の間に「いつかは憧れのあのモデルを……」と心に決めたモデルが幾つもある。
CITIZENに就職した先輩と時計談義をするために飲みましょうと一席設けた日、その先輩を待つ間僕はウォッチギャラリーで時間を潰していた。
そこであまりにも格好良いZENITHのEL PRIMEROのとある限定モデルを60回ローンでその場で買ってしまおうと思ってクレジットカードを店員に預け、今まさに信用調査に入らんというタイミングでやっぱりやめてもらったと言う過去もある。
さすがに衝動買いをして良い金額じゃ無いと気付いて思いとどまったけど、結婚して自由に使えるお金が無くなった今、あの時グッとアクセルを踏む決断をしていたら……と考えないこともない。
その頃は時計雑誌やコレクターの方のブログなんかも毎日のように見ていたけど、最近はあんまり情報収集をしなくなった。
僕が時計を好きになった頃はデカ厚ブーム真っ最中で、新規に出るものはほとんどのモデルが42mm以上という時代。
僕はメンズモデルでも36〜39mmくらいの方がエレガントで良いと思っているので、このブームは非常に煩わしかった。
僕が大学生や社会人になりたてという年齢層だったこともあって、NIXONやDIESELといった非時計ブランドの時計の愛用者が周囲に多かったように思うし、ファッション誌でも大きく取り扱われていたように思う。
会社の同期にも時計ブランドの時計を着用している人間とそうでない人間が半々といった感じだったかなぁ。
全体的なブームではなくて当時20歳前後だった僕の周辺の話になるけど、ファッションブランドやセレクトショップの時計の愛用者が多かった。
んで、僕はデカ厚ブームを牽引していたのはそう言ったファッションブランドの時計だったんじゃないかと思っている。特にアウトドアファッション。
ここからは飛躍した論理になるかも知れないけど、UNIQLOがHEATTECHを発売したのがゼロ年代前半で、ゼロ年代後半から10年代初頭にかけては他のメーカーも所謂機能性インナーを当たり前のように発売し始める時代。
そんな影響もあって衣服の持つ「機能性」がフォーカスされて、アウトドアブランドのアウターがバンバンタウンユースされ始めたのがこの時代だったんじゃないかなぁと。
で、アウトドアブランドが流行ればアウトドアウォッチが流行るし、アウトドアブランドのアウターに合わせようとしたらドレッシーな優等生三針時計よりもゴッツいなりをしたデカ厚の時計の方が映える。
何となく、世の中の動きと自分の身の周りで感じた流れを振り返ってみるとデカ厚ブームがこんな感じで分析できるかなと。
まぁ「デカ厚ブーム」と言う言葉は時計専門誌で用いられていた言葉なので、アウトドアブランドやファッションブランドの時計というよりも時計ブランドにおいて顕著な傾向だったんだけど、自分の観測範囲ではそんなような感じを受けましたという話。
この時代、時計ブランドでいうとPANERAIが存在感を放っていた印象。
あとSEIKOアストロンとかが出たのもこの時期だったかな。
価格も見た目も良さげで興味を持ったのに、着けてみたらとんでもなくデカくてやめた記憶がある。
(アストロンは機能的にあの大きさ・あの厚さが当時できる限度だったのかも知れないので、一般的な「デカ厚」的な文脈で語るのは少し違うかも知れないけど)
一方、デカ厚ブームへのカウンターなのかSKAGENのミニマルデザインも腕時計シーンでかなり存在感を放っていた。
そしてSKAGENからシームレスにムーブメントを継承したのがBERINGだったかなと言う印象。
1〜3万円で買える主張しすぎないモデルが多いということで、就活生から社会人2〜3年目あたりでも買いやすいこともあり、年齢層的にも僕の周囲で人気があった。
BERINGの設立が2010年ということなので、非常に早期に日本に入ってきていたんだなぁと今になってバイヤーの感度の高さに感心する。
SKAGENとBERINGは双方デンマーク生まれのブランド、薄さがトレードマーク、多くのモデルがメッシュバンドを採用している……など非常に似通った印象だった。
デザイナーが同じだったという話も聴いたことがある。
当時流行の兆しのあった青文字版の採用に積極的だった点でも共通していた印象がある。
今でこそ完全に市民権を得た青文字版だけど、2010年だったかそれくらいにROLEXがバーゼルワールドで青文字版のモデルを発表して、それが注目を集めて青文字版ブームが起こったんだよね。
2015年くらいまでは一過性のブームに終わるのか定着するか時計ファンも注視していたようなイメージがある。
先程挙げた2ブランドに話を戻すと、今でこそそこまで「そっくり」というモデルは多くない気がするものの、以前は今以上に似たモデルが多かった。
こんな記事を見つけたので貼っておく。
で、ミニマルデザインのブームに乗っかって、その後ダニエルウェリントンブームが来るんだよね。
気がつけば男女を問わず猫も杓子もダニエルウェリントンという時期があった。
誰の手を見ても「DW」のロゴが入った時計をしている、みたいな。
別にダニエルウェリントンが悪いと主張する気持ちはないんだけど、人のつけている時計を見るのが好きな僕にとってこの時期は多様性が乏しくてすごく寂しい思いをしたものだと思い出す。
会社の設立が2011年で、日本で流行ったのは僕の感触だと2015年くらいというイメージ。
女性も40mmクラスの大きい文字盤のDWをつけるのが流行って、男性は40〜44mm・女性は36mm以下が主流だったそれまでのスタンダードなシーンが覆ったような印象がある。
DWのブランドページの「会社案内」のページにある「旅行中に出会った紳士の名前をもらってダニエル・ウェリントンというブランドを立ち上げた」というストーリーは、ちょうどその頃検索をかけて一読しただけだなのに非常に僕の心に残っている。
「ダニエル・ウェリントンのアイデアがひらめいたのは、世界一周の旅に出かけていたときの偶然の出会いでした。」
「この人こそが、ダニエル・ウェリントンその人なのです。」
SKAGEN、BERING、DWはムーブメントがミヨタだったはずなので、その辺りからブームを考察するのも面白いかも知れない。
少し脱線すると、日本におけるDWの流行と前後して(時計好きでない一般人に波及するほどの流行という大きな波にはならなかったようにものの)、非常にコンセプチュアルな国内ブランドが誕生していた。
それが吉祥寺に本拠地を置く「Knot」。設立は2014年。
文字盤及びケースを選択して、バンドも自分の好みのものを選んで自分だけの時計を作り出すことができるということで、時計好きとしてもガジェット好きとして設立当初から非常に気になっていた。
前出のCITIZENに勤めている先輩とも吉祥寺のお店を訪ねた記憶がある。
幼馴染の友人が腕にKnotの時計をつけているのを見つけて驚いたこともあった。
サイトではケースの形状やバンドの組み合わせをバーチャルに楽しむこともできるのでちょっと興味がある人は以下のリンクを覗いてみてほしい。
トノータイプが加わっていたなんて知らなかったのでサイトに行ってみて驚いた。
レクタンギュラー(長方形)やトノー(樽)型といったケースは色気があって良いのよ。
僕がオーダーするならこんな感じがいいかなぁ。
こんな感じのブームの推移がありつつも、作りもしっかりしていて尚かつ手が届く価格帯の時計を欲しがる人間にはやっぱりSEIKOやCITIZENが強かったし、積極的にファッション誌やセレクトショップとコラボを打つHAMILTONも、時計好きでない人間にもしっかりリーチしていた印象。
そしてApple Watchが登場するのが2015年。
時計はその人の個性が最も出る装飾品だと僕は思っている。
ORIENT STARを着けている人は国産時計が好きで、且つ他の人とは違うものを着けたいんだろうなとか、BREITLINGが好きな人は航空機やエアショーが好きなのかなとか、ROLEXと同じくらいの価格帯のGRAND SEIKOを着けている人は良いものを身につけたいけど「ブランドものをつけている」と周囲の人に思われたくないのかなぁとかね。
文字盤に「SEIKO」のロゴが躍っていると時計に興味がない人からすると「あのSEIKOの時計をつけているんだな」と思うだろうから。まぁ2017年を境にGSの文字盤から「SEIKO」の文字が消えてしまったので、ちょっと話が変わってくるけど。
で、時計はその人の個性が最もでる装飾品である反面、Apple Watchは何というか選んでいる人の「顔」が見えづらいので最初ちょっと嫌いだった。
ところで“THE INTERN”、邦題『マイ・インターン』が2015年9月の全米公開なんですよ。
2015年の9月公開と言うことは、どんなに遅くとも2015年上旬には撮影を終えているはず。
急成長したファッションECサイト運営会社の社長ジュールズ(アン・ハサウェイ)とベン(ロバート・デ・ニーロ)とその周囲の人間の交流を描く作品ということなので、今この作品が作られれば間違いなくこの会社の社員の多くがApple Watchをつけていそうなものだが、2015年の作品ということで登場人物の誰も装着していないのが現在と比べると隔世の感がある。
2015年以前と以降に製作された作品とではApple Watchの有無が、2017年から2018年あたりを境にワイヤレスイヤフォン着用者の割合が、その作品の作られた「時代感」を表す重要な小道具になるような気がする。
……と思わず話題が逸れた。
2015年の登場直後こそさほど愛用者の多くなかったApple Watchだけど、Series3が出たあたりから着用している人を街中でもよく見かけるようになった印象あがる。
Fitbitが一瞬ウェアラブルデバイス界でApple Watchに肉薄したものの、そのごApple Watchが完全に置き去っていったイメージ。
2015年にApple Watchの登場あがり、2015〜16年あたりには時計雑誌で青文字版の時計に対して「定着しつつある」という評価が下され、17〜18年くらいには「白、黒に続く第3の選択肢として完全に定着」というような文言が紙面に躍るような状態だったと思う。
そんなわけで、自分が一人称で体験したシーンということで高級ブランドには縁遠かったけど、なんとなく2010年から僕が感じていたここ10年間の腕時計シーンはこんな感じだったのかなと。
2017年から2018年を境にとんと時計雑誌を読むこともなくなってしまったので直近の3年くらいが抜けているんだけど……
自分が社会人の年次も上がるにつれ、徐々に周囲で「おっ」と思う時計をつける知り合いが出始めたり、007が好きな友人がオメガのシーマスター プラネットオーシャンを買ったと聞かせてくれたりするようになる。
別に周囲に腕時計でマウントを取ってくるような人はいなかったけれど、時計を見れば大凡の価格帯がわかる目はある僕。
色々と疲れてしまって高級モデルに手を伸ばすことも諦めて安価なモデルを着けることを楽しむようになり、ついに2019年の年末にApple Watchを入手して今に至る。
登場した当初色々と思うところのあったApple Watchだけど、これが非常に良い。
「毎日充電が必要な腕時計なんてあり得ない」などと思っていたけど、入浴中に充電してそれ以外の時間は寝ている時も起きている時も常に着用している。
夏場こそ普通の時計よりも熱く感じて不快感を覚えることはあるが、それ以外は快適そのもの。
料理していて時間を計りたくなった時も「タイマーを5分掛けて」といえば済むし、iPhoneを出すのが億劫なシーンでもLINEの着信内容にさらりと目を通すこともできるし、ワークアウト中は消費カロリーを測定してくれるし、ウォーキング中は何km歩いたかを教えてくれるし……
スマートフォンほど生活を劇的に変えてはくれないけど、「痒い所に手が届く」ガジェットだと思う。
今回時計に関するエントリを書こうと思った背景には二つの出来事があって、そのうちの一つは年末に読んだこの記事が非常に良かったから。
「真の時計好きにG-SHOCKを馬鹿にする人間はいない」と言われるくらい、時計好きからも評価されているのがG-SHOCK。
時計好きになったばかりの人間は「G-SHOCKはスーツ似合わないし、第一カシオ計算機って……時計ブランドじゃないじゃん笑」というのが時計好きになったばかりの人間が一度陥る謎のG-SHOCK下げ。
でも一周するとG-SHOCKの革新性に痺れて評価が逆転するんすよ。
僕が今欲しい時計もG-SHOCKのとあるモデル。
とある人へのプレゼント探し中に見つけたんだけど、格好いいんだよね……
そんなわけで結構な分量の記事になってしまった。
時計のことを考えてアウトプットするのは楽しかったので、気が向いたらまた書こう。