映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

11/25(木) アトロク秋の推薦図書月間2021

宇内さん:紹介する書籍はお手洗いに連れておきたい作品。『こち亀』みたいに。

実家に住んでいる時、長男が友人から『こち亀』を100巻近く借りパク。

トイレの中には本来トイレットペーパーを置くためであろう棚があり、そこにこち亀を置いていた。

今回紹介するのもお手洗いにぴったりの作品。

小学校中学年になるとその友人との関係が友好でなくなったのか「こち亀全部返して」とある日突然その友人が家を訪ねてきた。

100巻近くあったので家の中で散逸、カバーの取れた状態のものもたくさん。また、当時飼っていたウサギが噛んでしまった巻も……

 

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18:00〜 宇内さんによる推薦図書

『親愛なる僕へ殺意を込めて』原作:井龍 一/漫画:伊藤 翔太

 

スマートニュース、インスタ、TwitterなどでコミックシーモアやLINE漫画の広告を読んで興味を持つということが多い。

この作品もその一つ。

主人公が大学内で評判の美人とどうやら一夜を共にしたらしいという状況が広告で示され、甘酸っぱい恋愛漫画だと思って読んでみたらハードなサスペンス漫画だった。

連続殺人犯を父に持つ主人公が、知らぬ間に自分も殺人事件に関与している?ということが徐々に明らかになるストーリー。主人公の父は殺人などを起こすような人間ではないが、状況証拠から殺人事件の犯人であるらしいとされており、主人公には負い目がある。

そんな彼がキャンパスクイーンと何故か付き合っている。が、3日間の記憶が欠落している。

そこに何ら超常現象的な要素はない。

最近は『僕だけがいない街』、『テセウスの船』などタイムスリップや超常現象でサスペンスを成り立たせている作品が多いように感じるが、それらがなくともサスペンスになっている。

後から振り返っても設定に齟齬がない。全11巻で読みやすい。

画力も高い。

 

宇多丸さん:今スタジオに9巻だけあんのよ。9巻だけあっても触れもしねぇし!

 

宇内さん:ワンシーンだけ見せていいですか?

 

宇多丸さん:は?(マジトーン)

 

 

お兄ちゃんもサスペンス漫画が好きなので紹介したら太鼓判を押してくれた。

兄に評価されると「合格したな自分も」と思う。

 

18:30〜 荻上チキさんによる推薦図書

〜些細なそれも、差別かも。日常の中に潜む暴力を炙り出した力作が日本上陸〜

デラルド・ウィン・スー著(マイクロアグレッション研究所訳)『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション―』

 

ヘイトスピーチヘイトクライムの根底にあるものは何か。

あからさまな差別と対比される曖昧であるが無意識で見えにくいな差別。そのメカニズムや影響、対処法を紐解く。

2020年12月に書籍が発売されて以来注目される新たな差別概念。

 

差別、人権研究の解像度をあげてくれる概念。

社会には見逃しがちなこき下ろしや侮辱に溢れている。

「20歳です」と年齢を伝えるとチラリと薬指を見られる、女性の仕事だけ「女性カメラマン」「女芸人」と冠言葉がついたり、男子同士で仲良くしすぎることは気持ち悪いと揶揄われたり、抗議の声を上げると「落ち着けよ」と言われたり……こういった小さな攻撃は日常に埋め込まれている。

社会の中で「あるべき人」と、そうでない「異常な人」の区別を人々に確認し、叩き込み、突きつけ、挫く役割を持っている。

言葉自体は1970年第アメリカで登場していた。

 

「女性にしてはゲーム上手いね」などという言葉を投げかけられたときに感じる「ザラり」とした感覚。

こういった概念に名前を与えた。

 

 

SNSやニュースサイトに出てくる広告から興味を持ち、お金を払って漫画を買うという動線は今という時代を反映した作品との出会い方だなと思う。

「マイクロアグレッション」という概念は、カルチャー周りの概念のアップデートに積極的なアトロクという番組と非常にマッチした概念だと思う。