夫婦ともどもハンカチが好きだ。妻と百貨店に出かけると自然とハンカチ売り場に足が向かう。
妻はVivienne Westwood、僕はBrooks Brothersのコーナーに真っ先に目が向いて、お互いに「これあなたに似合うんじゃない?」などと言いながら1シーズンに1~2枚ほど新しいものを買う。
(贔屓のブランドだけに2020年に発表されたBrooks Brothers経営破綻の報は非常に悲しかった)
先日夫婦で買い物をしていて、贔屓のブランドではないながらも可愛らしいハンカチを見つけた。
「ねぇ見てこれ。可愛いよ」
「ほんとだ可愛いね」
そんな話をしながら、妻が言った。「私、コロナでハンカチの売り上げって伸びたと思うんだよね」
「あ~ジェットタオル使えなくなったし?」
「そうそう。今まで女の人でもハンカチを持ち歩かないっていう人結構いたんだよ」
これを聞いて僕はちょっと身構えた。
「ハンカチを持ち歩く割合は女性のほうが大きい。これって決めつけじゃない?もしかしてジェンダーバイアス?」などと考えたからだ。
で、気になって調べてみた。
結果、清潔に美しく健やかな毎日を目指すことで有名な花王さんがこんな研究結果を公開していた。
結果、女性のハンカチ携帯率9割に対し男性は7割。
よかった。妻の一言は決めつけによるものではなく、実際に女性のほうが携帯率が高いというデータがあるということが分かったのだ。
まぁ自分自身の実感に即してみても、男性のほうがハンカチ携帯率は低い気がするもんな。
そういえば大学生のころ飲み会でお手洗いに行った帰りにハンカチで手を拭いている姿を見た女性から、「男性でハンカチ持ち歩いているの珍しいね」などと言われたことが何度かある。
これが成人前の男子になるとより一層悲惨で、小学校にハンカチをもっていって正しく利用している男子は更に稀だったような気がする。
中休みや昼休み、砂や泥にまみれて遊びまわって手を洗い、ハンカチで手を拭くなどせずにズボンやシャツで水気を拭ってハイおしまいという男子がほとんどだったのではないだろうか。
僕自身そんな感じだったので、冬にあかぎれを作って母親と祖母にユースキンのハンドクリームを塗ってもらった経験は数知れず。
給食前に手を洗った際にハンカチを忘れたことに気付き、給食用のランチマットで手を拭く……なんてことも記憶にあるな(苦笑)
そもそも男子のハンカチ携帯率が高ければ一大フィーバーを巻き起こした元プロ野球選手斎藤佑樹さんが「ハンカチ王子」と持て囃されることもなかった気がする。
(……いや、仮に高校生による平時のハンカチ携帯率が9割を超えていても、マウンドでスポーツタオルではなくハンカチで汗を拭う高校球児がいたらやっぱりそれは持て囃されそうだぞ)
で、コロナ禍におけるマスクの売り上げの推移を探してみたところ、こんな記事が出てきた。
この記事は2020年6月2日掲載のもの。
こちらを読んでみるとわかるのだけど、この頃はマスクが手に入らなくてハンカチやらガーゼやら、果ては靴下まで使ってマスクを手作りする人が多かったんだよね。
この記事ではハンカチの売り上げが伸びたことの背景にはマスク不足による手作りマスク需要があるのでは?と考察している。
只今2022年4月。マスク不足に喘いだあの時期から僅か二年しか経過していない現時点の僕が「そう言えばそんな時代もあったなぁ」というくらいの認識なので、こうしてブログに残しておくことは後ほどコロナ禍を振り返るときに意味があることかも知れないぞ。
そうそう、「コロナ禍では、トイレの洗面台横に設置されている“手洗い後に風圧で水滴を飛ばす装置”=ジェットタオル、ハンドドライヤーに対し、飛沫を拡散させる恐れがあるとして各施設で利用を中止する風潮があった」という情報も書き添えておかないと「何で?」と思う人が数年後に出て来かねないので残しておこう。
その後2021年に経団連が「ハンドドライヤーの利用停止」という文言をガイドライン上から削除したものの、現時点においてハンドドライヤーの利用を再開していない商業施設やオフィスビルが大半というのが実情だ。少なくとも富山では。
で、肝心のハンカチの売り上げの変化を追うと前述の通り手作りマスク需要の影響で2020年4月に百円均一大手キャンドゥが前年同月比180%を記録していたり、コロナ特需に関する話題が多かった。
「ハンカチ 売上 推移」などのワードで検索すると「川辺」という企業の情報が出て来た。
同社に関する最新(2021年7月)の企業調査レポートを見ていくことにする。
https://www.kawabe.co.jp/_wp/wp-content/uploads/2021FISOCO.pdf
前述の通り2020年は特需があったため、直近2021年との比較は2019年以前のデータが相応しいだろう。
3ページ下部に「事業概要」に関する記述がある。
同社の売上高の内、ハンカチ(同社においては「ハンカチーフ」)の占める割合は以下のように推移している。
17年3月期:65.1%
18年3月期:62.4%
19年3月期:60.8%
20年3月期:62.1%
21年3月期:65.7%
2021年3月期決算と言うことで、21年3月のデータは2020年度のもの。
やはり2020年は同社の売上に対するハンカチの割合が増加していることが見て取れる。
同社はでハンカチ、スカーフ・マフラー、タオル、雑貨その他を「身の周りの品」事業と位置づけているらしい。次ページで同事業の売上高を見てみる。
17年:14,646百万円
18年:14,186百万円
19年:13,985百万円
20年:12,915百万円
21年:9,729百万円
うわ、メッチャ減ってる。
経常を見てみても、過去「フレグランス事業」はで赤字の年があっても黒字を維持していた「身の周り品事業」が21年3月には赤字になっているのが苦境を物語っている。
で、4ページ目の売上高合計にハンカチーフの%をかけて額を算出したのがこちら。
17年:11,172.46百万円
18年:10,159.34百万円
19年:9,869.66百万円
20年:9,227.43百万円
21年:7,419.50百万円
……ということで、withコロナの時代におけるハンカチの売り上げ、落ちてるじゃん!というのがこのエントリの結びでした。
(一社だけのデータだからこれを業界全体の話として扱うのは危険だけど)
妻の話を聞いたときは僕も「なるほど!絶対そうだ!」と思ったものだけど、調べてみたら現実は異なるみたい。