あまりネット上で連載を追いかけるということはしないのだが、最近見付けた『東京の台所2』という連載記事が何ともエモーショナルでノスタルジックで良い。
“2”と銘打たれているだけあって、当然過去には“1”にあたる連載があった。
1も含めてバックナンバーがしっかり読めるのは僕のような人間にはありがたい。
何を隠そう僕は個人ブログ全盛の時代、気に入ったブログを見付けたらそのブログのエントリを開設時まで遡って読むようなコンプリート願望の強い人間だったので。
朝日新聞デジタルマガジン「&W」というプラットフォームで連載されている。“W”だから女性向けの連載なのかな。
「&M」という恐らくは男性をターゲットに据えたプラットフォームにはこんな気になる記事を見かけた。
古谷さん、格好いいよな……
この『東京の台所2』という連載を読んだ感触を言語化するのは難しいんだけど、友人宅の本棚を視界に入れる感覚に少し似ているかも知れない。
本棚を知ることはその人の感性の源泉を知ること。見たいけど、どこか見てはいけない領域。
知人宅を訪ねた際に台所を見ることも失礼に当たる。
大学生の頃は友人の部屋で鍋パーティをしたり宅飲みをしたりというタイミングで結構冷蔵庫を開けていたけど、大人になった今同じことはできない。
この連載はタイトル通り実際に台所の写真も掲載されているし、「台所のビジュアル」というある種表層的(「台所」という領域自体が表層を超えてその人の人となりを示す深層心理に近いものであることは認識しつつ、敢えてこう記す)な視覚情報を通じて、対象者の心奥に迫る連載だ。
僕は中高生時代、模型誌をよく読んでいた。
模型誌は発売されたばかりの模型商品をプロのモデラー(模型・プラモデルを作る人)が作る「作例」が大写しの写真で紙面に鎮座する。
そしてその大写しのコマに付随する形で、制作作業の合間の写真も掲載されているのだが、僕は以前からこの制作途中の写真がバッチリ決まった作例写真と同じくらい好きだった。
自分のような素人には決して再現できないような超絶技巧の作例を生み出すプロモデラーの作業スペースの片隅。そこに自分が使っているのと同じアイテムを見付ける。或いは、自分が見たことも無いような謎のアイテムを見付けて「あれは何に使うんだろう?」、「もしやあのアイテムが超絶作例の秘密か?!」などと想像を膨らます。
そんな製作者の「顔」が垣間見える模型誌における制作途中(そしてその中に写るモデラーの部屋の一部)の写真と同じフェティシズムを、僕は『東京の台所』から感じるのだ。
きっと実家を出て料理をするようになったことで、「料理」という営みがこの世で最もクリエイティブな行為の一つであることを知ったことも、今の僕が他人の台所に興味を持つことの遠因の一つにあるのだろう。
ともあれ、「誰かが何かを作る際、その人の傍らにあるもの」に僕は強く興味を引かれ、惹かれてしまう癖があるようだ。
台所に並ぶ調理用具の一つ一つから、見知らぬ誰かの人となりすら垣間見えてくるweb連載、『東京の台所』。
知らない誰かに会いに、あなたも是非。