先日、ゼミの友人と神保町で一席設けた。
僕は法学部卒だが、所属していたゼミは憲法21条の規定する「表現の自由」とマスメディアの報道、そしてメディアの倫理のせめぎ合いを研究するゼミだった。
そんな訳で教授からは報道、特に新聞報道に関する金言を多くいただいた。
「なぜ新聞を毎日読まなければならないのか。それは皆さんが読んでいる漫画週刊誌のようなものだと考えてほしい。
漫画作品を一週間飛ばして次週の号を読んだらストーリー展開がわからなくなってしまうだろう。新聞報道も同じだ。
新聞も毎日の報道内容は繋がっており、それを毎日読むことで一本のストーリーが見えてくる。
だから、新聞は毎日読み続けることが大切だ」
「可能であれば新聞は複数紙定期購読することが好ましい。
複数紙を読み比べていると、同じ事柄を扱っているのに好意的に書いている新聞と否定的に書いている新聞があることに気がつくだろう。
これは各新聞社のスタンスの違いによって生じるものだ」
「東京の新聞には左寄り・リベラルな大衆紙の朝日新聞、同じく左寄り・リベラルだが発行部数で朝日に劣る毎日新聞、右寄り・保守の大衆紙読売新聞、右寄り・保守だが発行部数が読売よりも少ない産経新聞がある。
2紙読むのであれば右寄りの大衆紙と左寄り小規模紙、というように立場と規模が正反対のものを読み比べることが好ましい。それによって多面的に事象を捉えることができる」
「何故同じ事柄を扱っているにもかかわらず紙面によって書き味が異なるのか。
それは新聞とは各社が信ずる“社会敵正義”に基づいて紙面を構成するものだから。
為政者に対して反対意見を述べる論調の新聞もあれば、好意的に論旨展開をする新聞もある。それは時の政府がリベラルか保守かによっても異なる。
なお、『日経新聞』は“社会的正義”ではなく、“日本経済の情報を発信する”という目的に基づいて紙面を構成しているため、毛色が異なる」
転勤の都合で富山に転勤した当初、先輩に「富山に住むなら『北日本新聞』読めよ。これ、着任した若手みんなに言うんだけど、読む奴と読まない奴がいる。お前はどっちかな」(大意)と言われた。
転勤前は「ニュースとかwebで読みゃ良いし、別に新聞は契約しなくても良いべ」とか思っていたけど、こう言われてしまうと「そうまで言われちゃ読まなきゃなるめぇ」となった。
そんな訳で北日本新聞を読み始めた。
地方新聞を購読するのは初めてなので色々と驚いた。
『北日本新聞』、右寄りだとか左寄りだとかそういうこと以上に“富山県内の情報を発信する”というのが第一義に来ている。
コロナ禍でのキャバクラ通いが明るみに出て6場所出場停止して幕下に降格した朝乃山関。
彼は富山県出身なので、大関在籍時は誌面に占める彼の情報の割合が大きく、1面に「日刊朝乃山」なる小コーナーがあったくらいだ。
また、昨年の東京オリンピックで大きな存在感を示したNBAプレイヤーの八村塁選手の出身地が富山県ということもあり、シーズン中は八村選手のゴール・リバウンド・アシスト数が試合中の写真と共に報じられるのが常だ。
アウトサイダーからするとぜんっぜん興味もないのだが、「○月×日に市町村の首長が交代する」と言った類いの記事も頻繁にある。
また、今回の参院選では「××県の〇〇選挙区で出馬する誰それは富山の△△出身」みたいな情報がうんざりするほど出ていた。
最近だと日本維新の会の代表選出場を決めた梅村何某が富山県の呉羽高校出身だという情報が、これまたうんざりするくらい繰り返し紙面に踊る。
「身近な政党にしたい」 維新代表選出馬表明の梅村氏(呉羽高卒)
呉羽(くれは)高は富山県内の高校。
「各社の信ずる社会的正義」、「経済情報」。
それらに勝る重要な幹が地方紙にはあるんだね。
そんな話をしながら、友人に北日本新聞を手渡したのだった。
彼は学生時代、新聞記者を志していたこともあって面白そうに紙面を眺めていた。
友人と行った2軒のお店が滅茶苦茶良かったので、神保町でお店を探している人は是非。
【1軒目】
鳥元 神保町店
【2軒目】
Bar Plat
富山の報道機関が成し遂げた偉業の一つとして知られるのがこちら。
「劇場で見たい!」と思ってリバイバルがないかと待っている。(まだ観られていない)
【参考】
新聞各紙の立場の違いを纏めた記事。
僕が本記事で書いたこととこちらの図を合わせて考えると、何故テレビ東京が在京キー局の中で独自の立ち位置にいるのかがわかる。