映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

11/15(火)アトロク秋の推薦図書月間2022⑧ 柚木 麻子さん

柚木 麻子さんによる書籍紹介。

 

柚木 麻子さん
1981年、東京都生まれ。2008年、女子高でのいじめを描いた「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞。

 

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』にハマっているらしく、劇中に登場する「喫茶どんぶら」のグッズを自作したようで、同好の士たる宇多丸さん、大盛り上がり!

 

先日発売されたばかりの『とりあえずお湯わかせ』を読んだという宇垣さん。

「最高でした!」と一言。

2018年から2022年までの四年間のエッセイ集。

 

宇多丸さん:「クリスマスに『ダイ・ハード』を観る」というくだりが良かったです

 

柚木さん:TBSに行く度に「ここでテロが起きたら……」と考えてしまうダイ・ハード脳です

 

宇垣さん:テロ対策で複雑な作りにしているらしいです

 

宇多丸さん:ジョン・マクレーンが「奥さんに謝りたいから」という動機で頑張るという視点も良かったです

 

入魂の一冊

 

異例の作家紹介無し。命懸けで書かれた女性18人による抵抗の作品集。

アフガニスタンの女性作家たち 著/古屋美登里 訳『わたしのペンは鳥の翼』

 

宇垣さん:これ読みたかったんですよ!

 

宇垣さんによる概要紹介

女性嫌悪、家父長制、法力、貧困、テロ、戦争、死。一日を生き抜くことに精一杯の彼女たちが、身を危険にさらしても表現したかった作品達。

アフガニスタンの女性たち18人による23の短編集。

イギリスの出版社がアフガニスタンとやり取りをし、「小説を書きたい」という女性を募って3年間をかけて刊行に漕ぎ着けた。

 

宇多丸さん:この作品の帯コメントを柚木さんが寄せているということで、宇垣さん是非お願いします。

 

宇垣さん:

「書くことがこんなにも強靭な抵抗になるなんて。
この炎のような短篇集を読み、語り合うことで、彼女たちの命懸けの戦いにくわわろう。」

 

(帯コメントを読みたい方はこちらから↓)

booklive.jp

 

柚木さん:帯コメントを寄せるに当たっていち早く読ませてもらった。

18人の女性作家の情報が全て伏せられているという異例の作品。

 

昨年タリバン政権が発足したことでアフガニスタン女性は行動制限を課され、教育機関に行くことを禁じられ、遊園地への入園を禁じられた。

身の危険を避けるため、作家は全員情報を伏せられているが、本書が版を重ねることで徐々に情報が出て来るかも知れない。

 

著者の一人の発言に「読んでもらうことが精神的支えになる。各国で売れて反響があるほど書き手の不安軽減に繋がる」とある。

一つ一つの物語の背景を知りたいので、是非筆者の情報が出て来て欲しいという思いがある。日本でも売れて欲しいと思い紹介。

 

宇多丸さん:教育をはじめとして権利を剥奪されている環境で小説を書くと言うことは、バレたらどんな弾圧を受けるか分からない状況ですよね

 

柚木さん:本書のプロジェクト始動時はタリバン政権下ではなかったが、タリバン政権発足後は状況が一転したらしい。

アフガニスタンの言語→英語→日本語、と重訳(じゅうやく)を経た一冊。

 

日本もミサイルが撃ち込まれたり、すぐ近くで戦争が行われていたり、戦争が身近なものに。

本書に描かれていることは私たちの生活に近いところもあれば、全く知らない世界でもある。

物語の力を感じられる。

 

宇多丸さん:宇垣さんも本書を注目していたようですが

 

宇垣さん:柚木さんが帯を書いたと聞いて読みたくなった。外国文学を読む理由はその国の人が考えていることに触れ、「知らない人」じゃなくて「知っている人」になることだと思う。

言葉を奪われている人のことを唯一知る方法なのではないか

 

柚木さん:宇垣さんに読んで欲しい短編がある。「遅番」。

タリバン政権下でキャスターをやっている女性アナウンサーの話。

スタジオ入りしてリップライナーを塗ったところで爆発が起きる。

 

宇多丸さん・宇垣さん:え〜!

 

柚木さん:家族の無事を考えながら仕事をこなし、帰宅して家族に爆発があったことを伝える。

そして翌日、爆発のあったテレビ局へ仕事をしに行く。

私達の知っている日常のすぐそばに戦争がある。

 

他にも「自分が死んだことに気が付いていない」といったような悲惨な話も収録されているが、女性同士の連帯で乗り越えていく物語もあり、元気の出る物語も収録されている。

 

宇多丸さんが好きそうな作品は一番最後の「エアコンを付けてくれませんか」という一作。

 

この後恐らく死ぬであろう校長先生が「自分死ぬんじゃないかな」と思いながら学校に行き、恐らく死に向かっていく話。

物語としてギリギリである一方、どこかおかしみもある。小説としての技法も非常に優れていて、宇多丸さんが好きそう

 

宇多丸さん:聞いているだけで読みたくなりました!

 

柚木さん:死と隣り合わせで普通に生きていて、それが全員にとっての日常であるという

 

宇多丸さん:ニュースで目にする情報などだと、単なる「数字」でしか無かったりするけど、物語を介することでより感じ入るものがある

 

宇多丸さん:柚木さんの推しの一節があれば是非

 

柚木さん:

「皆はタリバンが変わったと言っている。でも、本を読めないのにどうやって変われるわけ?本を読まずにどうやって変われるというの?

私達の親が皆文字を読めたら、あなたみたいな女の子が酷い目に合わずに済むのに」

 

宇多丸さん:この本全体のコアを成すような、ズバンとド真ん中ストレートな感じですね

 

柚木さん:他にも学校を爆撃され、女の子達が勉強をする機会を奪われて抗議デモをしようとしたら全員死んでしまう「花」という物語。

これは実話に基づいた話。

 

声を奪われ、教育の機会を奪われる絶望を描いているが、自分たちの知恵を武器に連帯する女性達を描いている。

 

宇多丸さん:何故女性が知性を持つことを弾圧するかといえばそれは恐れ。

「知の連帯」は為政者が恐れる最たるもの。

 

読んで反響が世界中に広がることは、希望と簡単に言ってはいけないかも知れないけれど、希望に繋がるのかな

 

宇垣さん:「貴女たちがそこにいること、知ってるよ」って読むことで言える気がする。

 

柚木さん:「小説で何を変えられるのか」と自分で思うことがあるが、この本は間違いなく読んで感想を言い合うことが連帯に繋がる。

 

 

 
 
 
 
 
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【前回】

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【関連】

柚木さんのインタビュー①

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インタビュー②

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