映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

2022/05/30〜2022/06/03 先週のアトロク フューチャー&パスト

先週の金曜日は『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を観るために有給休暇を取っていて時間があったので、映画を2本観てから放送開始までに月〜木曜放送分のパストメールを作成して番組に送ったのだった。

 

1本のメールは採用していただいたけど、文章量も結構あるので折角だから他のメールもこのエントリに載せて紹介しようかなと思った次第。

(最近、ブログ内で「アーカイブ」のカテゴリに属するエントリが増えてきて、自分の中のアーカイブ癖を自覚する数週間である)

 

【月曜日】

今週最も心に残ったのは、タップリの時間を使ったビヨンド・ザ・カルチャーではなく、短いながらも濃密な時間を味わわせてくれた月曜日のカルチャートークでした。

 
安彦良和先生がアトロクに初登場した際は「こんなビッグゲストが!」と大変驚きましたが、この日本のマンガ・アニメ界のリビングレジェンドの登場に若干驚かなくなっている自分が少し怖いと思いながらも、貴重なお話を心して聴かせていただきました。
 
ラジオから聞こえてくる安彦良和先生のお声はまだまだお元気でしたが、「『ガンダム ジ・オリジン』の本編の映像化をどうするかという話で擦った揉んだがあったが、それは僕の年齢もあるから無理だと諦めた。
映画一本くらいなら出来るぞということで『ククルス・ドアンの島』の制作が決まった」と言う先生の言葉を聞き、アニメーション映画の監督として本作をフィルモグラフィの最終盤の重要な一作に位置づけていらっしゃることが伝わってきました。
 
もともと本作の鑑賞のために有給休暇を取っていたのですが、この放送を聴いたことで一層背筋を伸ばして朝一番の回の上映を観てきました。
 
宇多丸さんも言及していた「戦争に巻き込まれる子供たち」にフォーカスした安彦良和先生の作家性の溢れた非常にウェルメイドな一作だと感じました!

 

【火曜日】←読まれた

今まで新聞紙上でつぶさに情報を追っていたウクライナ危機。

しかし、日々悪化する戦況や街中の痛ましい惨状から、最近は記事をしっかり読むことを避けるようになっていました。
そんな中、今週火曜日のビヨンド・ザ・カルチャー で「小説で深く知るロシア・ウクライナという特集を組んでくださったことは、自分にとってある種の救いとなる出来事でした。
 
 池澤春菜さんの持ち込みで、ロシア文学の翻訳者である沼野恭子さんを招いての企画と言うことで、内容の充実度は言うに及ばず。
文学という窓を通して両国を見ることで、「戦争」を一時忘れて2つの国に思いを馳せることが出来ました。
 
ジョージ・オーウェルの代表作『1984の構想の下となった作品がロシア文学であったと言うことなど、初めて知る情報ばかりで、兎に角充実した内容の1時間でした。
 
この放送の翌日水曜日の特集コーナーでは、戦中・戦後において、軍部が映画という文化に対して強く干渉したという歴史を知りました。
水曜日の放送を聴きながら、僕は火曜日に聴いた「小説で知るロシア・ウクライナ」の特集を思い出しました。
そして「今起きている戦争のただ中に、昨日紹介された小説家の何人かは巻き込まれているんだ。彼らが現在書いている作品が、政府や軍部の検閲を受ける可能性もあるんだ」と思い至り、非常に恐ろしさを味わったのでした。

 

【水曜日】

今週水曜日の放送では20時台のビヨンドのザ・カルチャー『人々は映画をどこでどう観てきた?日本の映画館の歴史について考える』が面白かったです。

 

「コロナ禍で映画の上映が中止される期間があったが、日本でこんなことが起こったのは敗戦直後だけ。

しかも、敗戦一週間後には上映を再開していた」という岡田さんによる冒頭の話からもう興味津々!

 

「当初は映画のみを上映する常設の映画館という物は無かった。映画は数ある見世物の1つとして位置づけられていた」

1903年、日本初の映画専門館として「電気館」が出来た。電気館の「電気」とは、それ即ち「最先端」を表す言葉だった」

など、100年以上前の初めて知る情報が目白押しで興味深く聴かせていただきました。

 

(当時電気が貴重なものであったと言うことは分かっても、電気のある生活を当然のように享受している我々にとって、「電気」が「ブリーディングエッジ」を意味する言葉だなんて想像も付きませんので)

 

「人気活動弁士を目当てに映画を観に行くという行動は、推しの声優を目当てに映画を観に行くことと同じ地平にある」

「(当時の人々が)格好良いアートの映画館パンフレットを目当てに映画館へ足を運ぶのは「大島依堤亜デザインだ!買おう!」と言うのと同じ」

という宇多丸さんの一言には、「目から鱗ならぬ耳から鱗が落ちる思いでした。

 

戦前戦中戦後と、それまでは「昔の人々の話」として聴いていた今回の特集が、宇多丸さんの一言で一気に今の時代を生きる僕らと何ら変わりない、実体を伴った人間の話として受け取ることが出来たからです。

 

ゲストのトークが素晴らしいのは勿論、パーソナリティ・宇多丸さんの存在がゲストの話す内容を、より伝わりやすい形でリスナーに届けてくれるという、この番組の真骨頂を味わえた特集でした。

 

追伸:

アトロクパートナー陣は皆さんカルチャー感度が高く、映画を観る目にもそれぞれの人となりが透けているのが非常に好きです。

宇垣さんはフェミニズムなどその作品の持つ社会批判の精神を読み解く力が、山本さんはイート描写を初めとするその作品の持つフェティシズム的な細部に宿る拘りを浮き彫りにする力が優れていると思います。

 

この特集を担当した水曜日の日比さんはティモシー・シャラメをはじめ今回もトム・クルーズにメロメロになっていたように、見目麗しいスターへの心酔を通して作品の魅力をリスナーに届ける力が随一だと思うのですが、投稿コーナー「シアター一期一会」を担当されていることもあってか、「作品そのものよりも劇場という場・空間に対するアンテナの感度」はパートナー陣の中で随一のものがあると思います。

故に「人々は映画をどこでどう観てきた?」という今回の特集の精神性に最もシンクロしているパートナーであると思い、この特集を水曜日に扱ってくださったことに非常に感謝しています

 

 

【木曜日】

今週木曜日の特集コーナー、『こどもの文房具最前線』滅茶苦茶面白かったです!

 
僕は自他共に認める文房具好きですが、他故さんも仰っていたとおり子供向け文房具は完全に守備範囲外だったので、今回の特集は驚きと発見の連続でした。
 
サンスターの「ニニピー」は文房具売り場でもよく目にするので知っていたのですが宇内さんが「これ欲しかった……」と反応していたのが印象的でした。
「受験期は細いペンとラインマーカーを2本持ちして使っていた」と言っていたり、「緑×ピンク」などバイカラーのものを紹介されたら「「これ両方色違ったら良いな」と思っていたらもうあった!」「タイムマシンに乗って持って帰りたいわ!」と反応していたり、宇内さん的にクリーンヒットだったことがラジオの電波越しに伝わってきて微笑ましかったです。
 
宇多丸さんも宇内さんも気に入っていた「お散歩BINGO」は非常に街歩きが楽しくなりそうなアイテムだなと思いましたが、「イヤイヤ期の子供もこれがあればお散歩に行ってくれる」というのは目から鱗でした。
 
「ミミズとか東京にいるかな〜」という宇内さんに対して、「子供の視点で見ればミミズとかアリの行列は東京でも見付かるんだよきっと!」という宇多丸さん。
このビンゴカードが1枚有るだけで、見知ったはずの町が違った意味合いを持つ。違って見えてくる。
これは宇多丸さんが映画“mid90's”を評した際、「スケボーという文化はストリートをスケボーのフィールドに読み替えるものだ」と語った言葉そのものだと思い、「お散歩BINGO」は新たなストリートカルチャーになり得るのではないかと感じました。

 

以上、そんな感じでした。

何だかフューチャー&パストにメール送るとグッとその週に聞いた内容が頭に残るな。

今後も積極的にパストメール送っていこう。