18:00〜 山本さんの推薦図書
雨穴著『変な家』
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youtubeチャンネルを持つミステリ作家による著書。
中古物件購入について知人から相談された主人公。物件の間取り図には謎の空間が……知人の設計士にその空間について相談したところ、他にも二重扉や窓のない子供部屋など不可解な点がそこかしこに……
ブックカバーにも赤い線で描かれた物件の間取り図が描かれている。
間取り図を見てそこで生活する人を想像するのがたまらなく好きだという山本さん。
まず本屋さんで「ムムッ?不動産ミステリ?!」と興味を惹かれ、買ってみたら大当たりだった。
2階建ての戸建て住宅の間取りから始まり、暗く根深いところでねじれてこじれて付き纏ってくるような、呪いのような、「嗚呼、呪縛」というものがあった。
間取り図と推察を交えた会話劇。3軒の物件を題材にした本。
不可解な間取りの理由を想像する中でその間取りの理由を探っていく。
「間取り図を見返したいなぁ」と思うタイミングで間取り図を再掲してくれているため、前のページに戻って間取り図を確認する必要がないのが良い。
また、その間取り図がその辺にあった紙に鉛筆で手描きしたような風合いで生々しい。
家の中で動く黒い人影が見えてくるよう。
会話劇の中で間取りに関する推理考察が展開されるが、自分自身も推理を進めていくため、登場人物たちに混じって考察を繰り広げているような気持ちになれる。
思考の向かう先は過去か現在か未来か。
3軒の奇妙な物件は最後につながって見えてくる。それが恐ろしくて悲しくて沼のようなネットリとした陰湿なものが待っている。
3軒目の日本家屋の間取りの謎を読み解く際、所見時に感じる気持ち悪さたるや……
巧妙に仕組まれた間取りの中をこんなルートでこのタイミングで更にことが済んだらこうして……と想像する。何故か読んでいる際にモノクロの映像がずっと浮かんでいた。
探偵小説のように探偵の活躍を見守るような感覚ではない没入感がある。
※調べてみてこの記事にいきあたり、「あ、俺これ知ってる」と思った。この記事がリリースされた昨年10月頃、Twitterで話題になって記事を一気読みした記憶が蘇った。
僕は山本さんの語りのアツさにめちゃくちゃ興味を持ったのに、語り終わった山本さんを受ける宇多丸さんの反応が「うぅ〜ん」だったのは笑った。
「間取り図を見て気持ち悪いと感じるのは時間が折り重なっているから」という宇多丸さん。
「『東京の生活史』から感じるものとは全く逆の感慨。「いろいろな人が住んでいて面白い楽しいな、豊かだな」→「気味悪いな」。人それぞれ表には出せない何かがあるとすればその澱みが壁一枚隔てた向こうにある」という感想が宇多丸さんから漏れ出てきたのも、山本さんの解説に引き出された部分が大きいと思う。