映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

11/25(金)アトロク秋の推薦図書月間2022⑯ 山本 匠晃さん

タカキこと山本アナによる入魂の一冊紹介。

 

本のカバーを目にした瞬間、気になってしょうがない。

雨穴著『変な絵』

 

宇多丸さん:雨穴さん、去年と連続じゃないですか?

 

【去年】

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タカキ:そうですね。去年は『変な家』を推薦


宇多丸さん:間取り図から読み解く作品でした。

これは良い意味ですが「気持ち悪い」作品


タカキ:よくこんな作品を思い付くなと思う。ホラーな作風が得意なwebライターにしてYouTuber。

良いタイミングで10/20に刊行され、「あら!雨穴さんまた新しいの出してる。読まなきゃ」と。

前作は家の間取りを見ながら、文字を追っていきながらその家でどう生活していたのかを想像するのがゾクゾクして楽しかった。

今回は絵で、間取りを眺めるのとはまた違った不気味さが、もう本のカバーからも溢れている。


宇多丸さん:カバーの時点で絵を見せるんですね


タカキ:間取りと違うのは、絵ですから誰かが自分の手で描いているわけで。

この絵に間取りよりも個人的な感情が強く宿っている。その不気味さと注意を惹きつける力があると感じた


宇多丸さん:嫌だな〜


タカキ:で、「読まねば」となって手に取った。合わせて9枚の絵が登場し、その絵に関わる凄惨な過去・事件が紐解かれていく。


ある少女が描いた絵やブログに書かれた絵、失踪した男の子の描いた絵、死体から見付かった絵などが登場する。


何に描かれた絵なのか、線の細さ太さ、どんな気持で描かれたのか、絵の構図など含めて様々な興味が湧いてくる。


本日は表紙に載っている絵について。

宇多丸さん、カバーの裏の絵を観てください。


宇多丸さん:なんか素朴な感じの絵に見えますよ。家があって真ん中には女の子が立っていて、右側には木があってその中には鳥ちゃんがいるのかな?


タカキ:こちらは本書の冒頭に出て来る絵。11歳の少女が描いた絵。

初見が楽しい瞬間だと思う。読み進めずにまずは絵を見る。


宇多丸さんはどう感じましたか?


宇多丸さん:『変な絵』と言う本を読むつもりで見たから構えて見たけど、何も言われなければそんな何も思わないというか


タカキ:シンプルな、可愛い小さな子が描いた絵かな、と言う感じですよね。

でも実はこれ、物語上11歳の頃に母親を殺害した女の子が描いた絵とされているんです。


宇多丸さん、それを聞いてこの絵を見るとどう感じますか?


宇多丸さん:え……でも絵を描くというのは、絵の心理療法なんていうのもあるわけですから、そう言われてみると木の形だの中の鳥だのが意味を持ってくるのかな……

家はあるけどドアがないとか?


タカキ:あ!はい!家に窓はあるけど入口がない。とか、他にもポイントがあって。

宇多丸さんが言うように、この絵から読み取れる少女の心理を心理学者が本編が始まる前に紹介する


宇多丸さん:一応効いてますけどフィクションですよね?


タカキ:そうです。

女の子の口元。笑顔なんだけど、よく口元を見ると何度も書き直したようなあとがあったり、家に入口がなかったり、木の枝の形だったりとか。

この三つの要素から心配な部分がある。

推しの一文


私はこの絵を描いたA子ちゃんを、更生の可能性が十分にあると判断しました。何故だか分かりますか?もう一度木の絵を見てください。今度は枝ではなく幹に注目しましょう。鳥が住んでいますよね?この様な絵を描く人は庇護欲があり、母性愛が強い傾向にあります。自分より弱い生き物を守ってあげたい、安全な場所に住ませてあげたい。そう言った気持が現れている。だからこそA子ちゃんは刺々しい攻撃心の奥にとても優しい心を隠し持っていると言えます。動物や小さな子供と触れ合う機会を与えれば彼女の優しい心は育ち、やがて口撃心は和らいでいくだろう。私はそう考えました。今でも当時の自分のその診断に自信を持っています。A子ちゃんは今では幸せなお母さんになっているそうですから。


宇多丸さん:『変な絵』と言うタイトルで雨穴さんが書いている本なんで、冒頭に短くそんなのが載っていたらこれは「フリ」だろうと正直思いますわ


タカキ:そうなんです。この後の人生でとる行動とは。そして今お母さんになっているけどどんなお母さんなのか。この本を通じて分かっていく。

色々な絵が出て来るが、冒頭に出ているこの絵が全ての始まり。悲惨な過去が全てこの絵に詰まっている。


合計9枚の絵が出て来る。

別の話かと思っていたが、点と点が繋がっていくように暗い闇深い過去に繋がっていく。


雨穴さん、よくこんないやな物語を書くなぁと思った。


ゾッと出来るサスペンス的な1冊と言うだけでは無いと感じた。

絵とは人が何かを残したいと思って切り取られたもの。

そこにはメッセージや叫びがある。

一見しただけでは汲み取りきれない、不気味さの奥に優しさや気遣いが含まれている。


この絵を描いた直後や書いている最中に気付いてあげれば起こらなかった悲劇もあるのではないかと感じさせられた。


宇多丸さん:絵は間取りと違って難しい感じがする。

一つ一つの絵は何の変哲もない感じだけど、そんな大きな物語に繋がっていくとは。

私読むの速いので聞きながら一章読んじゃいましたけど、恐いんだけど(笑)


タカキ:ちなみにYouTubeでは雨穴さんがこの冒頭の章に触れている音声が聞けます


宇多丸さん:図像を使った新しいミステリの形を雨穴さん作っているんですね。

しかも変哲もない絵で。


イヤ〜薄気味悪いわ〜

 

 
 
 
 
 
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