2022年になりました。
てなわけで2021年に観た映画の振り返り。
2020年の映画の振り返り、実はしていないんです。
でも、2021年の振り返りをしちゃう。
2019年の振り返りはこちら。
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2021年に鑑賞した映画はこちら。
28本/24作品。試写を含めて29/25。
2021年、緊急事態宣言もあってマジで観た本数少ないな……
今は富山に住んでいるのだけれど、寒すぎて外に出るのが億劫になったことも影響として大きい。
富山、人間が住むには寒すぎると思うんだけど……
※タイトル前に○の付いた作品は2020年以前に公開された作品。
○『佐々木、イン、マイマイン』
・『花束みたいな恋をした』
・『すばらしき世界』
・『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』
・『騙し絵の牙』
・“21BRIDGES”/『21ブリッジ』
・劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』
・“NOMADLAND”/『ノマドランド』
・“THE FARTHER”/『ファーザー』
・“BLACK WIDOW”/『ブラック・ウィドウ』
・劇場版『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』
・『映画クレヨンしんちゃん 花の天カス学園』
・“THE SUISIDE SQUAD”/『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』
・“SHANG-CHI AND THE LEGEND OF THE TEN RINGS”/『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
・『狐狼の血 LEVEL2』
○『隠し砦の三悪人』
・“THE LAST DUEL”/『最後の決闘裁判』
・“ETERNALS”/『エターナルズ』
・“007 NO TIME TO DIE”/『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
・“VENOM:LET THERE BE CARNAGE”/『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
・“LAST NIGHT IN SOHO”/『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』
○『モスラ』
・“SPIDER-MAN: NO WAY HOME”/『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(試写鑑賞)
そんなわけで2022年1月2日現在における「2021年度鑑賞作品ベスト10」いきます。
10位:“LAST NIGHT IN SOHO”/『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』
サイコスリラーというジャンルにはあまり明るくないんだけど、めちゃくちゃ引き込まれる一作だった。
別途感想も書いたので後ほど公開したいところ。
(2022/01/10 追記↓)
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のどかな風景・ゆったりとしたテンポで始まる冒頭と、スピーディかつ恐ろしいラストの対比が非常に鮮やか。
スリラー作品であるが故の展開上の恐ろしさは勿論あるけれど、それ以上に恐ろしいのは「搾取される女性」と「搾取する男性という」構造が現実世界にも厳然たる事実として存在し続けていることはでないだろうか。
この作品がエドガー・ライトという男性クリエイターの手でこの世に生み落とされたことも大きな意義があると思わせてくれる一作。
本作を鑑賞して最も怖いと感じたのはパンフレットを読んだ時。
本作が遺作となったダイアナ・リグが、
これ、作中のどんな描写よりもホラーでしょ……
周囲の映画ファンからはめっちゃ不評だけど俺は好き。ドゥニ・ヴェルヌーブに対して映画ファンのみんなが言いたいことも分かるんだけどね。
原作付き作品ということを直前まで知らなかったし、コロナ禍で延期があったために劇場で長期間予告が流れていたことで「あれ?デューンっていつの間にか一作目が公開されてもう2作目やるわけ?」と思ってしまった。
主役とヒロインを演じるティモシー・シャラメとゼンデイヤ。
二人の手足の長さからくる立ち姿の美しさは非常に絵になる。
ただ砂漠にこの二人が佇んでいるだけで
この作品のアイコンとなってしまうそれ程までに画になる二人だと思う。
シャラメとモモアのバディシーン、もっと観てみたかったな。
あとは作品を観ていてジョシュ・ブローリンが演じるガーニィというキャラが気になった。
僕が大好きな漫画作品『サイボーグクロちゃん』には本作と同じく砂漠を舞台にした長編ストーリー、「異世界サバイバル編」がある。
そのエピソードにガーニーというキャラが登場するのだ。
アトロクで宇多丸さんが「『砂の惑星』の砂漠は海をイメージしている」と言っていたけど、異世界サバイバル編の砂漠はまさしく海そのものといった印象を読者に与える。
そんなわけで、劇場鑑賞後に感じたことをTwitterで呟いてみたら原作者の横内なおき先生からリプをいただけて非常に嬉しかったなぁ。
人生のバイブルである横内なおき( @kur0nana )先生の『 #サイボーグクロちゃん 』の「異世界サバイバル編」にガーニーというキャラが出て来る。
— ナヲト/RN:借りぐらしのナヲトッティ (@naw0t0) 2021年10月24日
で、本日観てきた『DUNE 砂の惑星』にジョシュ・ブローリンが演じるガーニィというキャラが。
異世界サバイバル編も砂漠が舞台だし、もしや元ネタ……? pic.twitter.com/Duw1u70RFy
元ネタです。https://t.co/iGJTsEIcJZ
— 横内なおき (@kur0nana) 2021年10月27日
2016年には先生自らガーニーの元ネタが砂の惑星であることを呟いていたらしい。
異世界サバイバル編は砂世界イメージの拠り所として『ドミニオン』(士郎正宗)もあるけど、やっぱり映画版『デューン/砂の惑星』があって、リスペクトの印として「ガーニー」(パトリック・スチュワート演じる副官)の名前を使いました。 pic.twitter.com/qPTR9mEaKB
— 横内なおき (@kur0nana) 2016年3月12日
8位:“007 NO TIME TO DIE”/『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
007に全然触れないまま今まで齢を重ねて来てしまっていたので1作目から全て鑑賞しようと思い立つ。
一作目からいくつか作品を鑑賞したものの、五作品くらいでストップしてしまった。
全作視聴を諦め、「みんな大好きクレイグボンドが卒業するのだから」ということで『カジノ・ロワイヤル』からダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じた四作品を急いで予習してからNTTDを鑑賞。
007に思い入れのある人からしたらまた感覚も違うのかもしれないけど、僕には非常によかったと思う。
1位に挙げた作品にも共通するんだけど、長期シリーズに区切りをつけるのってすごく難しいことだと思う。そんな中ダニエル・クレイグの卒業作品として素晴らしい花道だったと思う。
まぁ007シリーズが終わるわけじゃないんだけどね。James Bond will reaturn!!
あとは……アナ・デ・アルマス美しかったなぁ……
7位:“THE FARTHER”/『ファーザー』
下手なホラーよりもよほどホラーな展開が最後に視聴者を襲う。
けれど、僕らは自分の人生のどこかでこの事態に直面するかもしれない。
これは物語の最後の展開以上に怖いことだと思う。
夢とも現ともつかない、覚醒直前のまどろみのなかにいるような不思議な映像体験はオリヴィア・コールマンとアンソニー・ホプキンスとあいう名優二人の共演だからこそ形になった作品ということができると思う。
なんて優しくて、なんて残酷な作品なんだろう。
小室さんによる音楽解説が最高なので、
作品鑑賞→音楽解説→再び作品鑑賞 のルートで楽しんでいただきたい。
僕も特集を聴いてから もう一度鑑賞したい。
6位:“NOMADLAND”/『ノマドランド』
『ファーザー』と『ノマドランド』が同時期に劇場にかかっていたことは幸いだったと思う。
両作品とも対象を「見つめる」ことに主眼を置いた作品だと思うから。
日本でも近年「ノマドワーカー」という言葉と共に知られるようになったこの単語。しかしアメリカでは近年車上生活者が増えて社会問題化しているらしい。
作品の舞台こそ現代ではないけれど、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でブラッド・ピッドが演じたクリフ・ブースも似たような生活をしていたなぁとか思ったり。
で、そんな感じで本作は「車上生活」という社会問題を扱う作品なんだろうなと思って鑑賞してみた。
もちろん作品を作る原動力になったものの一つには「社会問題としての車上生活者」という視点もあったのだと思うけど、僕は本作を観てそういった「説教」めいたものはあまり感じなかった。
実際にノマド生活をしている方がキャストとして出演していることもあり、非常にリアリティのある空気感を纏った作品。
ノマドとして生活する人に向けられた視線の優しさと自然描写の美しさ。
この二つの要素、僕は別個のものではなく同じ場所から発されたものだと思っている。
5位:『花束みたいな恋をした』
以前こんなエントリを書いた。
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2015年という相対化するにはあまりにも近すぎる過去と、「東京めを描いた映画という点が非常に僕の心を掴んで離さなかった。
総合評価で順位こそ5位に置いているけど、2021年で一番食らった作品は間違いなくこの作品。
4位:“THE LAST DUEL”/『最後の決闘裁判』
ポリティカル・コレクトネスやフェミニズム、me tooなど現代の映画を理解するために知っておくべき文脈は数多くある。
その中でもやはり男性・女性間における性の不均衡というテーマは避けては通れないものだと思うし、僕ら男性視聴者こそ積極的に学ぶべきことだと思う。
先に“THE FARTHER”/『ファーザー』と“NOMADLAND”/『ノマドランド』が同時期にスクリーンにかかっていたことの幸運さを述べたが、本作と“LAST NIGHT IN SOHO”/『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』が同年公開であるということも、今後映画史において非常に重要なターニングポイントとして記憶されるかもしれない。
『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』が「スウィンギング・ロンドン」と呼ばれた華やかなりし1960年台のロンドンで蔓延っていた女性に対する性的搾取を描いた作品であるとするのなら、『最後の決闘裁判』は中世において「家長の所有物としか見なされなかった“女性”による告発」を描いた作品であると言うことができるのではないだろうか。
人権侵害があった(と歴史上されている)にも関わらず、現代の法律体系であれば人権侵害を受けた主体であるはずの女性は、法廷で“原告”として主張することもできない。
恥を忍んで法廷で主張し、真実を明らかにしようとすれば命を賭さねばならない。
勿論、西洋的な価値観に基づいた法治国家であれば、女性が法の下に「夫」や「家」から独立した個人として扱われることは自明のことだ。
しかしこの不均衡さ、現代において完全に是正されていると言い切ることはできるだろうか。
本作品はジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)→ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)→マルグリット・ド・カルージュ(ジョディ・カマー)視点が移映っていくオムニバス形式で物語が展開していく。
ジャンパートでは冒頭の戦いにおいてジャックの命をジャンが救う。そのためジャンは「あいつ(ジャック)は俺に命を救われた借りがある」と考えている。
しかしジャックの視点でストーリーが紡がれると、僕らはジャンが命を救うよりも先にジャックがジャンの命を救っていたのだと知る。
そのような構造、即ち物語は一人称視点を何処に置くかによって捉え方がかわるのだということ脳に刻まれた状態でジャック(アダム・ドライバー)のパートを観てみると、「ジャンのパートではジャックはマルグリットを強姦したように見えたけど、実は彼は強姦なんてしていないのではないか。本当はマルグリット自身、ジャックに惹かれていたのではないか」と思ってしまう。
そしてマルグリットの視点で物語が綴られるにつれて、僕らはその直前に自らが抱いた考えが誤りであったと思い知らされる。
「ジャン(マット・デイモン)がジャック(アダム・ドライバー)の命を救ったと思っていたら、実はそれよりも先にジャックがジャンの命を救っていた」という事実と、「ジャックが強姦したか否か」というのは全く別なのに、僕らは何か一つの側面からある人間を信頼してしまうと、別の側面に於いてもその人は正しいのだと勘違いしてしまう。
そんな人間の認識の危うさを僕らに突きつけてくれる作品だ。
3位:『閃光のハサウェイ』
こちらも散々公開を散々焦らされた作品。
富山に引っ越してきて2年が経とうとしているけど、鑑賞に際して使用したムビチケは前任地である名古屋で購入したものなんだよなぁ……
鑑賞に合わせて原作小説を読破したけれど、愚直なまでに原作を素直に映像化したと思える作品であるにも関わらず、「映像化されたことに意味がある」と言える、不思議なバランスの上に成り立つ作品。
ガンダムシリーズを見たことのない友人が本作を見て十分面白かったという感想を抱いていたが、本作を語る上でこれ以上ない賛辞であると言えるだろう。
真っ暗闇の市街地の中戦闘を繰り広げるグスタフ・カールとメッサー。
その「巨人」同士の市街戦は、ちっぽけな人間の命を容易に奪う破壊力がある。
“市街地でのMS戦に巻き込まれる民間人”という描写は『F91』でも扱われたが、それを今日的なリアリティで再度ガンダムシリーズに復活させてくれた本作の意義は非常に大きい。
調度品の一つ一つに至るまで徹底的にリアルを追求した豊かな生活描写。
特に高級旅客機や高級ホテルで供されるに相応しい料理や飲み物が画として説得力を持って銀幕に映し出されるその体験だけでも映画館に足を運ぶ価値があると思った。
「実写作品を観ているような感覚で観ることができる」と評されることの多かった本作はガンダムシリーズのみならず日本アニメの新時代の到来を予想させるような素晴らしい作品。
2位:『すばらしき世界』
おばあちゃんが役所広司のことを好きだったこともあり、僕も小さい頃から役所広司のことが大好きだったが、本作に触れてより一層役所広司のことが好きになった。
助演の仲野太賀の演技も非常に良かったなぁ……
あまりにも良い作品だったので原作小説『身分長』も購入してしまった。
エンディングは原作小説とも異なる展開なので、原作読了組も楽しめる一作に仕上がっていると思う。
原作小説は長らく絶版が続いていたが、映画公開に合わせて復刊。復刊に尽力された西川美和監督のトークも合わせて聞くことで、作品に関する解像度が上がること請け合い。
本作の鑑賞を終えた人、原作を読むのが手間だと言う人はこのカルチャートークだけでも聴いてみてほしい。
1位:『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』
もう何も言うまい。
「エヴァ」というコンテンツを終わらせる。
それが如何に困難で厳しい道であったことか。
それを成し遂げた時点で年間ベストは決まったようなものだった。
そりゃあね、言いたいことが無いと言えば嘘になるよ。ただやられるためだけに出てくるような敵機とかさ。
でも良いんだ。だって、監督自らが望む形で迎えた作品の「終わり」を目にすることができたんだから。
近年のハリウッド大作シリーズがIPを延命させんがために終わることすらできないことを考えると、シリーズに終止符を打つということが如何に尊いかがわかる。
僕はコミックス版の最終巻を買って以来、エヴァを自分の中で終わらせるということが怖くて7年間封を切ることができなかった。
その最終巻を、シン・エヴァ公開日にやっと読むことができた。
きっと庵野監督はエヴァを終わらせる覚悟を持ってこの作品を仕上げてくれるはずだという確信にも似た願いを持って。
果たしてその願い、通りエヴァは見事な終わりを迎えた。15年以上エヴァを好きでよかった。そう思えるラストだった。
個人的には2016年に『シン・ゴジラ』をベスト1にしたかったけどできなかったことへの贖罪的な意味合いもある。この作品を2021年の1位にすることができて良かった。
終始誰目線なんだって話だけど笑
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公開時期に合わせてポスターが変わっていくのもよかったな……
書いているだけで幸せな気持ちになってきた。
エヴァを好きでいさせてくれてありがとう。エヴァを好きでいたことを肯定してくれてありがとう。
僕が「シン・エヴァ良かった」とSNSに投稿したらわざわざご丁寧に「いまひとつだった」とコメントをよこしてきた同級生がいたけど、この作品の良さを享受できないなんて何と可哀想なんだろうと思った。
というかエヴァに対して捧げてきた思いの丈も時間も違うんだし、人の好きなものを腐すのはダメよね。
番外:(オールタイムベスト) “SPIDER-MAN: NO WAY HOME”/『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
本来は2022年公開作品なのでランキングに入れることはできないので番外扱い。
だったら扱うなよという話なんだけど、本作がオールタイムベスト級に好きになってしまったんだから仕方がない。
何故僕たちはヒーロームービーが好きで、スパイダーマンというヒーローが好きかなのかが詰まった一作。
「親愛なる隣人」には重すぎる使命だけど、優しい彼だからこそできた「救い」の物語。
感涙に咽び泣くこと必至の本作。全てのアメコミヒーロー映画ファンに観ていただきたい。
はい。そんなわけで2021年マイベストでした。
番外:(オールタイムベスト) “SPIDER-MAN: NO WAY HOME”/『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
1位:『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』
2位:『すばらしき世界』
3位:『閃光のハサウェイ』
4位:“THE LAST DUEL”/『最後の決闘裁判』
5位:『花束みたいな恋をした』
6位:“NOMADLAND”/『ノマドランド』
7位:“THE FARTHER”/『ファーザー』
8位:“007 NO TIME TO DIE”/『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
9位:“DUNE”/『デューン 砂の惑星』
10位:“LAST NIGHT IN SOHO”/『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』