映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

11/30(水)アトロク秋の推薦図書月間2022㉑ 安藤 優子さん

2022年の推薦図書月間の大トリはこの方。

キャスター/ジャーナリストの安藤優子さんによる入魂の一冊

 

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CM中も金言連発だったという安藤さん。

 

そんな安藤裕子さんについて、日比さんによる紹介。

1958年生まれのキャスター・ジャーナリスト。

在学中から番組に携わり、学生ながら海外取材に赴くなど。

取材先はポーランドソヴィエト連邦、フィリピンの米軍基地潜入ルポなど多岐に亘る。

 

各番組を歴任しつつ、上智大学大学院にて博士号修士号を取得。

博士論文が「国会における女性過少代表の分析: 自民党の政治指向と女性認識の形成」。

それに加筆修正して今年7月刊行されたのがこちら。

 

自民党の女性認識――「イエ中心主義」の政治指向』。

様々なメディアで話題になり宇多丸さんもいち早く読んだとのこと。

 

宇多丸さん:Amazonのおすすめで出てきて「これは長年の疑問にも答えてくれる一冊かも」と思って読んだ。

 

大学で学び直そうと思ったキッカケは?

 

安藤さん:現場にイクことが多かった。後から考えると歴史の一コマ。

実況として中継する、言葉にすることはできるが、その前後を繋ぐ知識が欠落しているとコンプレックスが膨らんだ。

「今ベルリンの壁が壊されました」と実況できても過去の歴史と今後どう繋がっていくか、両者を結びつける「のり代」たる知識が圧倒的に欠けていた。このままでは自分はとんでもないハリボテだ、と思ったことがキッカケ

 

宇多丸さん:自分に厳しい評価を下すこと自体が凄い

 

安藤さん:「女性キャスターの時代」とか持て囃されると、自分が凄いわけではないのに、と恐くなった

 

日比さん:取材は事前の知識習得も必要。そこに学びを加えるなんて安藤さんはどれだけ体力があるんだろうと思いました

 

安藤さん:決して楽では無かったです。でも現実と現場の往復をしながら、かたや勉強は一人ぼっち。テレビはチームワーク。たった一人自分がその事に向き合わねばならぬ時間がとても大切だった。

毎日応報を伝えることの他に何かに向き合って何かを得ようとする厚意は真逆。それを両立できたことは精神の両立に繋がり、助けられた。

勉強は自分が本を読まない限り、誰も代わりにやってくれない。代わりがいない。自分にとって実りある時間だった。

 

宇多丸さん:そこで研究対象として法律上も謳われているのに進まない女性の政治進出を選んだ。その理由は?

 

安藤さん:報道の世界は学生アルバイト。見渡す限りおじさん一色。今は活躍する女性も多いけど。

当時、そんな環境に女子大学生が入っていくとハレーションが起きる。

そこで「どうしたら自分はここに居場所を作れるのか」と考えた。おじさんからすれば宇宙人のような存在の自分。「そうか、おじさん達に気に入られれば良いんだ」と思った。そこでおじさん達の「ペット化」に走る。

それから少し仕事が出来るようになったら「おじさんの敵では無い」と思って貰うためにおじさんに同化政策をとる。

 

後に顧みたときに、「何で日本の社会は女性はこうあるべきだという意識が変わらないのだろう」と思った。

政治学を研究してきたが、女性に注がれる視線を政治学では分析できなかった。社会学的なアプローチが必要だった。

 

社会学的にアプローチで「女性かくあるべき」という化石のような価値観は意外と自民党政権下で戦略として再生産を続けてきたものなのだと気づき衝撃を受けた。これが研究の端緒でも在り結論。

 

宇多丸さん:ご自身の必要性から取った処世術みたいなものから「これは」というのを見つけたと

 

安藤さん:後輩達には同じような生き方をして欲しくない。

オジさん達に同化することは、自分が女性(或いは男性)であることを否定することにも繋がる。それは自分の性別をリスペクトしていない、自分自身をリスペクトしていないことと同義。

 

社会通念としての女性認識を詳らかにしたいと思った。

 

日比さん:読み始めから胸の奥が震える思い。あとがきも拝読した中で、安藤さんがここまで生き抜いてきたからこそ言える切り口だと感じた。

「ペット化」、「弁える」など、私自身自覚がある中で、そうして振る舞う自分が悔しかった。しかし、それには自分に原因があるのでは無いかと思ってしまう

 

安藤さん:自分に原因を求めるわけですね

 

日比さん:どうしても媚びているんじゃないかと。でも安藤さんの徹底した取材の中で文字にして貰ったことで救われた

 

安藤さん:自己否定をするようにレッスンを受け続けてきている。自己否定感の無いままに「こうあるべき」という呪文のようなレッスンをずっと続けてきてしまった。それは1枚1枚引き剥がす必要がある。

女性に注がれる視線の正体を知ろうよ、と言うメッセージ

 

宇多丸さん:その正体のコアを浮き彫りにしたような一冊。

それが見えたのだから有権者として現実を変えようよ、という思い宿題を渡された思い

 

安藤さん:女性候補が増えない理由の一つは「24時間働けますか」の精神ではないか。24時間政治にコミットしなければという市民感情

 

宇多丸さん:労働に関する考え方がそもそもマズい

 

安藤さん:飲み会に言って街頭で名前連呼して。普通に働いている女性が24時間供出するのはちょっと、となる。

「24時間働けますか」という精神は有権者を含めて変えていく必要がある。出なければいつまでも変わらない。

 

宇多丸さん:「24時間働けます」と言っている人は誰のお陰でそれが出来るのかと言う話でもある

 

安藤さん:良いこと言ってくださいますね。

「女性議員定数を義務化しましょうよ」というと、「何で女性に下駄を履かせるんだ」と反論が来る。下駄を履かせるんじゃなくて、下駄を返して貰うだけなんですよ。

 

宇多丸さん:女性だけに負担が行っているのに「少子化」といっても「は?」と言う感じ

 

安藤さん:救われるのは自民党議員がこの本を読んで公演に招いてくれたりしたこと

 

(この辺りで「時間がヤバい」ということに。CMを挟んで書籍紹介)

 

安藤裕子さんによる入魂の一冊

『日本にとって最大の危機とは〝情熱の外交官〟岡本行夫 最後の講演録』

 

安藤さん:若者に向けた講演録。外務省外交官、小泉政権参与として政治の場でどうやって外交問題を解決するか。その経験も元にした講演録。

 

単に右の話左の話という極論のためにする議論ではなく、解決策を求めて東奔西走された方。その言葉は極めて現実的。

 

宇多丸さん:人となりを分かっていなかったことも在り、読んでいて意外だった

 

安藤さん:保持系の論客と思われることも多いが、岡本さんにとって不本意なこと。戦争は絶対的に愚かなことだという前提に立っている。

日米安保以外の方策を持ちうるのか。最善では無いがより良い選択肢は何かを常に呈示する方。

 

宇多丸さん:日本の植民地支配における加害責任なども現実的に直視していた

 

安藤さん:意外だったでしょ?それがこの本をオススメする理由。極論では無い、どっちでも良いけど解決策を探ろうよと言うスタンス。

 

宇多丸さん:日本の未来に希望を持ちづらい若者にこそ読んでもらいたい

 

 

 
 
 
 
 
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