映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

『荒木飛呂彦の漫画術』内で言及されている作品一覧

何ヶ月か前、職場でブチャラティの画像を待ち受けにしている人がいたのでジョジョの話を振ってみた。

どうやら昨年金沢で行われた「荒木飛呂彦の世界展」で掲出されていたイラスト共に撮影した写真をモノクロに加工して待ち受けにしているらしい。

モノクロ加工する前のカラーイラスト

 

「僕も行ったんですよ」と伝えた。

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すると「岸部露伴の衣裳は見に行きましたか?」と訊かれた。

僕の住む富山県では数ヶ月前に『岸部露伴は動かない』のTVドラマで使われた衣裳が飾られていたらしく、どうやらそのお姉様も実物を見に足を運んだらしい。

全くアンテナを張っていなかったので知らなかった……悔しいぜ……

 

荒木飛呂彦先生の名前を口に出したことで、「そう言えば暫く読んでいないな……」と思って本棚から『荒木飛呂彦の漫画術』を取り出して読んでみた。

 

本作では数多くの創作物が荒木先生の“漫画術”を語る上で登場する。

このエントリでは、作中で登場する創作物やその作者を挙げていく。

 

荒木先生の口からそれぞれの作品がどのような温度で語られているかは本書に目を通していただくとして、このエントリはあくまでも荒木先生が著書の中でどんな作品・作者に触れているかを紹介するメモ書き程度のものとして捉えていただければ幸い。

 

 

はじめに

<ジョジョは王道漫画である>

P8『ドラゴンボール』、『キャプテン翼』、『キン肉マン』、『聖闘士星矢』、『北斗の拳』


第一章 導入の描き方

<ゆでたまご先生と自分の違い>

P20『キン肉マン』

(同学年が在学中にデビューしたことへの衝撃)

 

<原稿を見もせず袋に戻す編集者>

P20『バビル2世』

(どこかでみたような漫画の一例。大好きだった作品と言うことで、荒木先生ご自身、初期の持ち込み作品を「『バビル2世』の真似みたいでしたし」とのこと)

<最初の一ページをどう描くか② 読みたくなるタイトルを探せ!」>

P25『手天童子』、『無頼・ザ・キッド』

永井豪作品のタイトルにはダジャレが多い。


P25〜26 『サザエさん』、『ジュラシック・パーク』、『紙の月』、『ちびまる子ちゃん』、『BLEACH』、『ONE PIECE』、『魁!!男塾』、『DEATH NOTE』、『NARUTO』

「自分ならどのタイトルに興味を持つか」「そのタイトルが優れている理由は何か」

「個人的に好きなのは、カッコイイ雰囲気のタイトルよりも、『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』のように、主人公の名前が入っているタイトルです。作者が主人公を大切にしている感じが伝わるように思うからで、僕の場合も、『真少年ビーティー』『バオー来訪者』『岸部露伴は動かない』のように、キャラクターの名前をタイトルに入れています。」

<他人が描いていない分野に踏み込む>

P36『荒野の少年イサム』

『武装ポーカー』を描くきっかけとして「日本人と「インディアン」の間に生まれた少年が主人公の『荒野の少年イサム』を除けば西部劇はほとんど描かれていなかったこと」を挙げている。

<最初の一ページはこう描く!:デビュー作『武装ポーカー』

P38『シャーロック・ホームズ』

冒頭、主人公ではなくストーリーの語り部を描く手法を説明する際に同作とホームズの助手ワトソンの名前が挙がる。


第二章 押さえておきたい漫画の「基本四大構造」

<欠かせないものは「キャラクター」と「世界観」>

P50 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』

「漫画にストーリーは必要ない」の一例として、キャラクターを中心に描く漫画の代表として『サザエさん』と共に紹介。


『AKIRA』、『COBRA(COBRA THE SPACE PIRATE)』、『蟲師』

「世界観を中心に描くことを主軸にした漫画の代表作」

 

<ヒット作を分析する習慣>

P53 『孤独のグルメ』


第三章 キャラクターの作り方

<主人公キャラの「黄金道」>

P57 『ドラゴンボール』

<動機リストを作ろう>

P63『テルマエ・ロマエ』

よい動機(「良いお風呂を作りたい」)


<人間の基本的な欲望が動機になる>

P65『必殺』シリーズ


P65『運命の女』(2002)ダイアン・レイン


<主人公と敵役は対比させる>

P67『巨人の星』


<ヒーローは孤独に戦う>

P70『続・夕日のガンマン 地獄の決斗』、『ダーティハリー』、『許されざる者』、『グラン・トリノ』

「クリント・イーストウッドの映画の主人公たちは、正にこのヒーロー像を体言しています」

「ちなみに、理想のヒーロー像であるイーストウッドを最も色濃く投映させたキャラクターは、『ジョジョ』第三部「スターダストクルセイダーズ」の空条承太郎です。知性や育ちのよさを感じさせる、ただ立っているだけでサマになるイーストウッドのイメージは、ポケットに手を突っ込んで静かに発っているだけなのに、存在感、威圧感を与える、承太郎のあの感じの元になっています。」

 


P71<男と女の描き分けについて>

『ターミネーター2』


<連載の鍵は強力なキャラクター>

P95『スター・ウォーズ』
P96『キャリー』当時『スター・ウォーズ』が大流行していたが、自分が好きなのは『キャリー』。自分の嗜好がヒット作とは違うところにあると気付く


第四章 ストーリーの作り方

<ストーリーが邪魔になるとき>

P104『金田一少年の事件簿』

P103「「キャラクター」と世界観どちらかだけで漫画は成り立つ」と書きましたが、「ストーリーだけの漫画というものは、ちょっと思い付きません」(略)こういうタイプ(推理小説のような作品)の作品では、「キャラクターが動かない」という欠点が出てくるのです。

P104「たとえば、『金田一少年の事件簿』は昔の推理小説を踏襲していて、一見、ストーリーが中心になっているように思えるかもしれません。しかし実際は(略)主人公のためにストーリーを動かしていく図式になっているのです。」

 


<主人公は「常にプラス」>

P114 『キック・アス・ジャスティス・フォーエバー』

「常にプラス」のよくない例として登場。

「幸せから一度下がって上がる。人生は実際そういうものだがストーリー作りでは欠点

例:ヒロインをやめた『キック・アス・ジャスティス・フォーエバー』のヒットガール」


P114『ウォーキング・デッド』

「常にプラス」の例外として登場。

「あえて人間の暗黒面のテーマに挑戦している。

この場合読者は落ちていく人間に興味がある。」

<「スターダストクルセイダーズ」が読者に認められた理由>

P119『水戸黄門』

「トーナメント制でない「常にプラス」の方法」のために生み出した道中ものの一例。

<「壁にぶつかる」のはダメ・パターン>

P123 『キック・アス』、『キック・アス・ジャスティス・フォーエバー』

荒木先生はヒット・ガールが大好き。

続編ではヒロインであるヒット・ガールが普通の女の子に戻るストーリー。

視聴者は「早くヒット・ガールに戻れよ!」とイライラしてしまう。これではただのプラスマイナスゼロでしかない。

 


<エンタメで現実を追及しない>

P128 『ゴッドファーザー』


<あえて挑戦する「マイナス」>

P128 『ゴッドファーザーPART2』


<なぜジョナサン・ジョースターを死なせたか>

P131 『旧約聖書』カインとアベル
『エデンの東』
『キャプテン』(ちばあきお)

「主人公は変わるけれども、大切なものが受け継がれていくという物語」

 


<表現はヘミングウェイに学べ!>

P139 『殺し屋 The Killers』(『ヘミングウェイ全短編Ⅰ』収録)


<サスペンスを演出したストーリ-の作り方:『ジョジョ』第三部より>

P148 『七人の侍』


第五章 絵がすべてを表現する

P154 手塚治虫先生、ちばてつや先生

(「誰が見ても絵が「上手」」な一例)


P154〜155「売れている漫画は、たとえば5メートル、10メートル先から見ても、その「あ、あれはあの先生の作品だ」というのが分かるのです。10年ほど前までは、電車の中ではみんな漫画を読んでいたものですが、ドア二つか三つ分ぐらい離れたところからでも、売れている漫画は、絵の雰囲気そのものが違っていて、一目で誰の漫画を読んでいるのかがわかりました。」


<リアル化とシンボル化>

ミッキーマウス、ドラえもん

「丸を三つ並べたらミッキーマウス、丸の中に水色があればドラえもんとすぐわかる、それがシンボル化です。


P158 鳥山明先生

(P157〜158 「水と油のように相対するリアル化とシンボル化ですが、ふたつを同時にやることは可能です。そして、それをまさに体現しているのが、鳥山明先生の絵でしょう。ひと目で誰の絵かわかるようにしながらも、メカや小道具は細部にわたってよく描かれている、これはかなり高度なテクニックです。」

<イタリアで自分の絵をつかむ>

P179 白土三平先生、横山光輝先生


P180 アポロとダフネ(バロック彫刻)


<ポージングの何が記憶に残るのか>

P182 円盤投げ(ディスコボロス)ミュロンの有名なオリンピックの彫刻


<見えないものを可視化する>

P183 ドラえもん、ミッキーマウス、アンパンマン

「親しみやすさ、優しさといったものを絵で伝えていると言えるでしょう」


P184 童夢

「小さなカットで、サラリーマンのおじさんが公園のベンチに座ってラジオを聴いているとき、そのラジオがパンと壊れるところを描いた何気ない絵から、見えないエネルギーの破壊力がとても強く伝わってきました。「こういうものが描ける漫画って、すごい!」と感動したのを覚えています。」

<永遠の一瞬を封じ込める>

P188 『モナ・リザ』


<すべてをアナログで描き続ける理由>

P190 『カムイ外伝』

原画を初めて見たときに感じた圧倒的な迫力

 


第六章 漫画の「世界観」とは何か

<読者は世界観にひたりたい>

P197 星野之宣

「架空の壮大な世界を緻密かつリアルに作り上げた典型」


『サザエさん』、『こち亀』

<ムードで勝負できるのは天才だけ>

P200 鳥山明先生、大友克洋先生、『綿の国星』


<徹底的にリサーチする>

P201 『スター・ウォーズ』


<世界観を描ききった後>

P214 『AKIRA』、『スター・ウォーズ』


第七章 すべての要素は「テーマ」につながる

<「基本四大構造」をつなぐ「テーマ」>

P215 『アナと雪の女王』

P216「ヒットした原因は、ヒロインの力強い現代的なキャラクターにあると言われていますが、僕はあの雪に閉ざされた白く寒い世界こそが『アナと雪の女王』の最大のポイントだと考えています。主人公の孤独な心という「テーマ」は雪の世界でなければ表現できないものでしたし、だからこそ、その凍えるような寒さと姉妹愛の温かさが際立った形で対比され、感動が生まれたわけです。」


P216 『蟲師』

水木しげる先生、楳図かずお先生

(「たとえば○○先生が『蟲師』を描いたら」の例として)

「水木しげる先生だったら背景を描き込み、楳図かずお先生であればキャラクターを描き込んだはず。『蟲師』はムードを描くというテーマで、「必ずしも描き込んでいく必要はないと判断したのではないかと僕は推察していますし、描き込まない絵によってこそ、あのムードが表現できているように思います。」


<「テーマ」はぐらつかせない>

P217 『こち亀』

「『こち亀』の「テーマ」は、大人でありながら子どもの心を持っているおまわりさんが起こす日常騒動のスケッチを描く、ということ」


<「人間讃歌」は偶然の産物>

P221 『エデンの東』、『ルーツ』(「アメリカの黒人奴隷を描いたテレビドラマ」)


実践編その1 漫画ができるまで-アイディア、ネーム、コマ割りの方法-

<アイディアはどこから生まれるか>

P226 植村直己

「植村直己さんという冒険家の実録旅行記」

ジュール・ヴェルヌ『八十日間世界一周』


実践編その2 短編の描き方-「富豪村」(『岸部露伴は動かない』)を例に-

P274 横溝正史の『犬神家の一族』や『八つ墓村』

 

荒木先生の作品作り(=アウトプット)は、これほどまでのインプットがあってこそなのだと気付かされる一冊。

クリエイターを志す人もそうでない人も、創作の裏側に何があるのかを知るために、是非。