映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

STRANGER THINGSから考えるジョジョとSTAR WARSシークエル

 

先日配信されたSTRANGER THINGS season4 vol.1が滅茶苦茶面白くて、7/1に配信されるvol.2が楽しみで仕方がない。

(今回、STRANGER THINGS season 4は第7章までをvol.1として配信し、7/1以降に第8章以降をvol.2としてまとめて配信するという形式を取っている)

 

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実はST s4配信日である5/27はスターウォーズファンにはおなじみの「スター・ウォーズ セレブレーション」というイベントの当日、会場にてサプライズで「“OBI-WAN KENOBI”を本日から配信開始するぜ!」というアナウンスがなされ、日本では13:00から配信開始となったのだった。

 

配信戦国時代の現在、ST配信日に被せることで話題をさらいたかったのだろうというのがSW仲間との共通認識だが、作品の出来は比べるべくもなくSTの圧勝というほかないだろう。こんなことを書かなければならないのはスターウォーザーの端くれとして非常に悲しいのだけれど。

 

で、ST s4が面白すぎて、現在s1から見直してs3まで来たんだけど、改めてこの作品の面白さにやられている。

 

そして「この面白さの正体は何だろう」と考えてみたところ、「主人公サイドの誰もが最善を尽くして行動し、それが事態を好転させる結果を生む」からではないかと思い至った。

 

そしてこれは『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦先生が常々語っていることに通ずるのではないかと感じたのだった。

(「ジョジョとか苦手なんだよ」と思った人がいたとしても、もうちょっと読み進めてほしい)

 

大好評の末、5/28に閉幕した「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」金沢会場。

以前名古屋に住んでいた頃、帰省を兼ねて上京する機会があった。

当日券があるだろうと友人二人と六本木会場を訪ねたところ、前売り券でしか入場ができないという悲しい現実に直面し、失意の中会場を後にした荒木飛呂彦原画展。

そのイベントが今の住まいである富山県のお隣、石川県金沢市で公開されるとあって喜び勇んで見に行った。

 

荒木先生は「主人公は常にプラス」を黄金律として作劇を行っている。

主人公がピンチに陥り、一時的にマイナスな状況に置かれようとも、後に敵を倒すという「プラス」の状況を描くことこそ少年漫画の王道であると氏は説いているのである。

 

主人公が直面する困難も徐々にパワーアップしていく。次々にレベルアップしていく困難に主人公が打ち勝っていく、克服していく中で主人公は「常にプラス」の方向に成長していく。

 

ジョジョ』は非常に個性的な作品で、世間からは王道漫画として扱われないこともあると思うが、荒木先生が自身の作品を王道であると強く認識して作品を生み出しているという事実そのものに、僕はアツいものがこみあげてくる。

 

さて、実はこの「主人公は常にプラス」という荒木先生流の作劇の美学を、実は僕は原画展に行く以前にも目にしたことがある。

荒木飛呂彦の漫画術』という書籍である。

 

 

定価1,000円弱の書籍なので是非とも出費を惜しまず書籍を購入してその作劇の神髄に触れてほしいというのが本音だが、本書では一度主人公がマイナスの状況に落ちてからU字の曲線を描くように振り戻しでプラスの方向に進んでいくことも王道少年漫画においては避けるべきストーリーテリングの手法であるとされている。

 

本書で述べられている「主人公は常にプラス」という内容と、僕がSTに感じた「主人公サイドの誰もが最善を尽くして行動し、それが事態を好転させる結果を生む」という事柄は必ずしも全ての面で一致するわけではない。

しかし、「僕がSTを愛してやまない理由はジョジョ的な文法で作られた作品だからなのではないか」という仮説や気付きは、2010年代以降のサブカルチャーの一つの大きなムーブメントであるSTというコンテンツを自分なりに咀嚼するうえで非常に役立つものであると感じる。

 

ところで、STAR WARS映画最新作『スカイウォーカーの夜明け』は周囲の映画仲間の内で近年最も不評だった映画作品の一つだが、本作に(と言うかSWシークエルトリロジー全体に)感じるストレスの大半は以下の二点に集約されているように思う。

・登場キャラの行動がチグハグ

・主人公サイドで報連相が取れておらず、各キャラの行動が事態を好転させることにつながらない(最終的には好転したとしても、キャラが折角とった行動の結果ピンチを招くという描写が多い)=「主人公は常にプラス」の立場にいない。

 

 

対するSTはとにかく各キャラがトランシーバーを使って情報の共有を試みる(主要キャラのほぼ全員がホウレンソウの鬼)し、連絡が取れない状況でも各キャラが最善の結果を信じて行動して、それが目に見える形で成果となって現れる。

S2でマインドフレイヤーにウィルが乗っ取られた時もジョイス達が「え?もう対処法見付けるの?」とちょっと驚いてしまうくらいに早く解決策を見付けていく。

 

「こりゃストレス無く観られるわけだわ」と思った次第。

 

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荒木飛呂彦の漫画術』はSTを楽しむ副読本と言うわけではないけれど、漫画のみならず様々な創作物のストーリーテリング手法を紐解く一助となること請け合いなので、是非一読を。

 

7/1のST s4配信開始、早く来てくれ〜と思ったけど、当日飲み会があるという事実に気が付いて一気にテンションが落ちた……

 

ビアガーデンや居酒屋よりも俺はホーキンスに行きたいんだってば。