映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

11/14(月)アトロク秋の推薦図書月間2022⑦ 伊賀 大介さん

伊賀さんが先日紹介したマネの企画展についての話を一頻りした後に書籍紹介に。

 

知っているつもり?20世紀最高のスポーツマンでありアジテーター、モハメド・アリのことを。そして--

ジョナサン・アイグ 著 /押野 素子 訳『評伝モハメド・アリ アメリカで最も憎まれたチャンピオン』

www.iwanami.co.jp

 

宇多丸さん:先日東京MXで玉袋筋太朗さんに「宇多ちゃん、モハメド・アリのやつ読んだ?」と言われた。流石玉さん!

 

小沢アナによる概要紹介(クマスは今日はお休み)

ボクシングの世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリ

挑発的な振る舞いで世界で最も嫌われたチャンピオンは、如何にして世界で最も愛される反逆のアイコンとなったのか。

200名以上の関係者取材などから明らかになるアリの最新評伝。

 

宇多丸さん:小沢さん、モハメド・アリってどんなイメージ?

 

小沢さん:「凄いボクサー」というくらいしか……

 

伊賀さん:9月くらいに購入したものの、積ん読になっていた。

先日アトロクでも特集されていたアントニオ猪木氏の死去に伴い、喪失感が。

毎日猪木のことを考えていたらモハメド・アリのことを考えるようになった

 

宇多丸さん:異種格闘技戦のはしり

 

伊賀さん:総合格闘技の元祖と言われている試合が猪木vsモハメド・アリ戦。

今が読み時と思って読み始めた。

 

587ページ二段組みの大著だが、3日ほどで読み終えてしまった。

 

宇多丸さん:アリの評伝は今までにもあったと思うが本作は?

 

伊賀さん:アリの本を全て読んではいないが、本書はデータが詳細。

ファクトチェックが精密に成されている。

 

モハメド・アリは華麗なボクサーだが、結構パンチを貰ってもいる。

パンチの応酬が多い試合はそれだけ視聴者は盛り上がる。

生涯食らっていたパンチのダメージの蓄積により、晩年彼がどうなっていくのかが描かれる。

 

本書ではどの試合に何発中何発パンチを貰ってしまったか、通算で何千発パンチを貰ったかが分かる。

体重90〜100kg級のヘビー級ボクサーのパンチを貰い続けるとどうなるのか。

ボクシングの残酷な一面も垣間見える1冊。

 

幼少時代からのアリの人生が描かれ、登場人物も豪華。マルコムXなどなど。

 

イスラム教の教えを受けて名前を変える過程なども描かれる。

 

宇多丸さん:アリはビッグマウスで、今で言う「プロレス的」な煽りも

 

伊賀さん:アリがもたらした革命は二つ。

1つにはボクシングスタイル。ヘビー級ボクサーなのに軽やかにジャブを使い、足を使って逃げるボクサーはいなかった。

ベタ足で強いパンチを打ちまくるのがヘビー級ボクサーのスタイル。

「蝶のように舞い蜂のように刺す。お前がパンチを打つとき、俺はそこにはいない」という口撃を試合中に相手に浴びせる。

 

宇多丸さん:もうラップですよね。名調子、ライムしてて、みたいな

 

伊賀さん:もう一つは試合前の煽り。

「お前なんて二秒で倒す」のようなことを言う。

それまではリスペクトがあって悪口じみたことは言わなかったが、アリは容赦なく打ちのめすような悪口を言う。

「お前は鼻が低くて……」というような今では許されないようなルッキズム的な口撃も。

試合前からとにかく盛り上げる。

 

宇多丸さんが「プロレス的」と言ったが、この様な盛り上げ方はプロレスラーに倣っている。

「お前は8R目で倒れる」というような予告ラウンドKOなどもアリがはしり。

 

宇多丸さん:相手は堪ったもんじゃないね

 

伊賀さん:チャンピオンとの試合、オッズは8:1でアリが不利だったが、口撃によるアップセットでアリが勝利を収める、といった番狂わせも

 

宇多丸さん:政治的な発言で目を付けられることもありましたね

 

伊賀さん:徴兵拒否でヘビー級チャンピオン剥奪などもあった。

今回出演に当たってNetflix『ブラットブラザーズ』と言うドキュメンタリーを見た。

(正式タイトル:“Blood Brothers: Malcolm X & Muhammad Ali”/『ブラッド・ブラザーズ: マルコムXモハメド・アリ』)

 

マルコムXとアリは義兄弟と言うほど仲が良かったが、その関係は3年ほど。

『ブラットブラザーズ』を観ると当時の映像が満載で非常に面白い。

本書の副読本(?)として最高。

 

宇多丸さん:猪木戦のことについては?

 

伊賀さん:悲しいかな、アッサリとしか書かれていない。

 

本書を読んで分かるのは、アリが滅茶苦茶チャーミングということ。

浮気も凄いし、取り巻きも凄い。

500ドル持って昼食に行くと帰宅時には1セントも残っていない。路上生活者を見れば手持ちのお金を全て与えてしまう。

どれだけ稼ごうが手元に残るお金は少なかった。

 

そして1976年、モハメド・アリアントニオ猪木の人生が交わる瞬間が……

 

宇多丸さん:経済的理由もあるのかな

 

推しの一節

ジョー・フレージャーと1971年に戦った「世紀の一戦」。3億人が見た試合。メジャーリーガーが15年で稼ぐ額を一晩で稼いだ。

「あらゆる人がそこにいた。そこにいなかった者も「そこにいた」と嘘をついた。マジソンスクエアガーデンのよどんだ空気を吸っていたのは……」(そこに出て来るセレブの名前が、フランク・シナトラとか、KFCのカーネル・サンダース、ダイアナロスもいて、ウディ・アレン……他多数)

伊賀さん:とにかく「観なきゃヤバい」試合だった。

 

 

 
 
 
 
 
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