先日、こんなツイートが話題になった。
あとぜき is 何 pic.twitter.com/AovlF83Irq
— 磯部祥行 (@tenereisobe) 2023年11月16日
リプ欄で「開けたら閉めなさい」の意味の熊本弁であるらしいことは分かったが、その所以が気になって調べみた。
アトゼキの語源は、「戸を開けたあとをせく」で、その「せく」は、奈良時代から使われている古語の「せく(堰く、塞く)」に当たる。もともとは「水を堰きとめる」意味で使われていたが次第に空間を「塞ぐ」意味に広がっていったようだ。単に「戸を閉める」意味のセクは九州全域で使われるようだが、アトゼキとなると、なぜか熊本限定の表現なのだ。
なるほど、「せく」とは「堰き止める」という表現で使われる「堰く」と言う漢字を当てるのだなと学びがあった。
また、もともとは水を止める意味合いで使われていた単語が、次第に空間を塞ぐという意味合いに変化していったという推移も非常に面白い。
そして「あとぜき」という言葉を調べていたのに、別の表現に繋がるとても気になる記述を見付けた。
「門、戸、襖、障子などを閉ざす、閉める」意味では、古くは「立てる」が使われていて、『万葉集』にも用例が見られる。したがって、使われる地域も東北北部や九州南部をはじめ全国に点在しており、周圏分布の様相を呈している。「戸を立って」と言われて、玄関の前で立ち尽くしていたなどという笑い話もある。
慣用句として「人の口に戸は立てられぬ」という言葉がある。
僕は「戸を立てる」という表現は、「もともと戸のついていない口に、新たに戸を拵える」というイメージを持っていた。
ところが、この説明から「立てる」は単に「閉ざす、閉める」という意味合いでしかないと言うことが分かった。
一つの言葉を調べているとこのような発見の連続が待っているから素敵だ。
ちなみに、上に引用した「ことばのまど」なるサイトでは、「あとぜき」という言葉が二度特集されている。
いかに「あとぜき」という言葉が熊本では一般的であり、また熊本の外では通じない言葉なのかが窺い知れるというものだ。