以前「余波」と書いて"なごり"と読むことを知った際に書いたエントリの冒頭で「"ルビ"を振る」という表現を使った。
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ところでこの"ルビ"って何だろう、と思って調べてみた。
「ルビという名前は宝石のルビー(ruby)と関係があります。電子化以前では本文に付ける振りがなの文字サイズには、5.25ポイントに相当する大きさの活字を使っていました。一方、イギリスでは文字サイズの呼び名に宝石の名前を使っていて、ルビーは5.5ポイントでした。この大きさが振りがなに使っていた文字サイズに最も近かったので、この振りがなのことをルビと呼ぶようになったそうです。」との記述がある。
響きから外国語由来の言葉らしい感じはしていたが、宝石のルビーに関係があるとは思わなかった。
活字の文字サイズを宝石の名前で呼ぶ習わしがあるというのも、非常にお洒落で何ともイギリス的?である。
そういえば、同じく出版関係出典の言葉の中で、現在も使われているものとしては"ゲラ"という言葉がある。
この"ゲラ"とはどんな由来がある言葉なのだろうか。
調べてみたところ、こちらのページには以下のような記述があり、僕と同じく「ルビ→ゲラ」と回路がつながった読者がいたらしいことが分かってちょっと嬉しくなった。
第146回で「ルビ」について書いたら、「ゲラ」についても書いて欲しいというリクエストをいただいた。
このページによると、「ゲラ」の由来はこうだ。
底の浅い木製の盆のことをかつてそう呼んでいたのである。これは英語のgalleyに由来している。galleyなどということばを聞いたことがないとおっしゃる方も、古代から中世に地中海で用いられた多数のオールを持つ軍用船、ガレー船の意味でもあると言えば、なるほどと思われるかもしれない。
なるほど!ガレー船という言葉は、大学受験時に日本史選択だった僕であっても高校一年生の世界史の授業で触れた覚えがある言葉だ。
"ゲラ"という言葉が、”galley”という英語に由来しているということは分かった。
しかし、"galley"という綴りを見て、僕は本来の発音は日本語表記するなら「ギャリー」が近いのではないかと思った。
発音記号を見てみると[gǽli]とあるので、僕の思った通りの発音だ。
印刷で"ギャリー"と言えば、近い響きを持つ言葉として「ガリ版印刷」がある。
「はっ!「ガリ版印刷」の"ガリ"と、「ゲラ刷り」の"ゲラ"。実は同じ英単語”galley”をルーツに持つものの、別の意味合いの2つの単語として今日まで残っているのではないか?!(アイアンとアイロンみたいなイメージ)」などと興奮を覚えながら調べてみると、以下のような記述があった。
原紙に鉄筆 で文字などを書くときガリガリと音がすることから、ガリ版と呼ばれるようになったという。単に「ガリ」と呼ばれることもあり、印刷したものは印刷作業も含めて「ガリ版刷り」「ガリ版印刷」などと呼ばれた。鉄筆で文字などを書いて印刷用の原版を作ることを「ガリを切る」などといった。
何じゃい!単なる擬音語だったんかい!
それにしてもこの「ガリ版」、調べてみると面白いもので、1893年にかのトーマス・エジソンが原型を完成させ、翌1894年には日本人の堀井新治郎なる人物が改良版を完成させたとある。
(そういえば改良版の"版"ももとは印刷関係の言葉だろう)
昨今、洋画が日米同時上映されるのは当たり前。それどころか日本が世界最速公開となる洋画もあるくらいだが、少し古い映画を調べていると本国公開から2~3年待って日本公開される作品などザラである。
映画は配給の都合や字幕監修の作業などがあるので同一視ができないのは当たり前だが、海外の文化が日本にやってくるのはかなり日程的な隔たりがあって当たり前だと思っていたので、19世紀末に西洋で生まれた新技術が、僅か1年でが日本に伝播し、更には改良を施してしまうというのは俄かには信じがたい。
堀井新治郎、あっぱれである。
「ガリ版」とは何ぞや、と言う方はスタジオジブリの『コクリコ坂から』をご覧いただきたい。
本作で風間が発行している学校新聞の印刷技術こそ「ガリ版印刷」だ。
ガリ版印刷の仕組みなぞ考えたことも無かったが、パラフィン紙から蝋を削り取ることで、狙った箇所にだけインクを乗せる技術ということらしい。
和紙にパラフィン等を塗ったロウ原紙と呼ばれる原紙をやすりの上にのせ、「鉄筆」という先端が鉄でできたペンで文字や絵をかきます(この作業を「原紙を切る」と言います)。この部分は紙のロウがけずれ落ちて細かい孔がたくさん開き、「透かし」となります。
なかなか面白い。
ここで体験ができるらしいから、チャンスがあれば行ってみよう。