映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

2019年の映画を振り返る

今回も年内に記事をアップすることができなかったが、そんなこと気にせず2019年の映画を振り返っていこうと思う。

 

2019年の映画鑑賞において大きく変わったことは、鑑賞した各作品のFilmarksをつけ始めたこと。

いままでもこのサービスは利用していたものの、鑑賞するたびにレビューを書くということはしていなかった。

映画を一作鑑賞するごとにFilmarksでスコアをつけるというのは映画好きの友人がやっていたので真似をしてみた。

年間ベストを決める際にも役立つだろうという予想もあってのことだ。

全部に感想は書き込めていないけど、振り返りが少しは楽になった……のだろうか。

実際この時点でトップ3以外は順位が固まっていないのでFilmarksスコアを参考に順位付けをする予定だ。

filmarks.com

 

さて、僕が観た2019年に観た映画作品は以下の通り。

 

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※タイトル前に○の付いた作品は2017年以前に公開された作品。

 ○“The Remains of the Day”/『日の名残り』

・“CREED”/『クリード 炎の宿敵』

・“GLASS”/『ミスター・ガラス』

○“BEING THERE”/『チャンス』

○“PULP FICTION”/『パルプ・フィクション』

・“MERY POPPINS RETURNS”/『メリー・ポピンズ リターンズ』

・“ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD”/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

・“AQUAMAN”/『アクアマン』

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・“FIRST MAN”/『ファースト・マン』

・『劇場版シティーハンター 新宿PRIVATE EYES』

・“THE FRONT RUNNNER”/『フロント・ランナー』

・“SPIDER-MAN INTO THE SPIDER-VERSE”/『スパイダーマン:スパイダーバース』

・“ALITA BATTLE ANGEL”/『アリータ:バトル・エンジェル』

・“THE FABOURITE”/『女王陛下のお気に入り』

・“GREEN BOOK”/『グリーンブック』

・“THE MULE”/『運び屋』

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・『コードギアス 復活のルルーシュ』

・“CAPTAIN MARVEL”/『キャプテン・マーベル』

・“THE GUILTY”/『THE GUILTY ギルティ』

・“BUMBLEBEE”/『バンブルビー』

○“CLOSE ENCOUNTERS OF THE THIRD KIND”/『未知との遭遇 ファイナルカット』

・“VICE”/『バイス』

○『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』

○『マクロスプラス MOVIE EDITION』

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・『名探偵コナン 紺青の拳』

・“SHAZAM!”/『シャザム!』

・“AVENGERS ENDGAME”/『アベンジャーズ:エンドゲーム』

・“DETECTIVE PIKACHU”/『名探偵ピカチュウ』

・“GODZILLA KING OF MONSTERS”/『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

・“SPIDER-MAN FAR FROM HOME”/『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

・“TOY STORY 4”/『トイ・ストーリー4』

・“DARK PHOENIX”/『X-MEN:ダーク・フェニックス』

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・『プロメア』

・『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』

○“ROMAN HOLIDAY”/『ローマの休日』

・“ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD”/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

・『天気の子』

○“BLADE RUNNER”/『ブレードランナー』

○“DEATH IN VENICE”/『ベニスに死す』

・『見えない目撃者』

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○『砂の器』

・“JOKER”/『ジョーカー』

○“A CLOCKWORK ORANGE”/『時計仕掛けのオレンジ』

・『蜜蜂と遠雷』

・“JOHN WICK: CHAPTER 3 - PARABELLUM”/『ジョン・ウィック:パラベラム』

・“La vérité”/『真実』

○“Léon”/『レオン』

・『ひとよ』

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○“THELMA AND LOUISE”/『テルマ&ルイーズ』

・“FROZEN Ⅱ”/『アナと雪の女王2』

○“WEST SIDE STORY”/『ウエストサイド物語』

・“STAR WARS: THE RISE OF SKUWALKER”/『スター・ウォーズ:スカイウォーカーの夜明け』

○“THE SOUND MUSIC”/『サウンド・オブ・ミュージック』

・『Gのレコンギスタ 行け!コア・ファイター』

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70本62作品(半券を紛失した作品もあり鑑賞本数はFilmarksを参照した)。

2018年は81本58作品だったことを考えると、2019年は例年と比べて同じ作品を鑑賞する回数が減った気がする。

eibunkeicinemafreak.blog.fc2.com

(fc2ブログから過去のエントリをそろそろ引っ越ししないといけないよなぁ)

 

62作品中15作品が旧作だったため、2019年度公開作品は47本。

この47作品からベスト10を選出していく。

 

 

第10位:“BUMBLEBEE”/『バンブルビー』

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作品自体の出来はそこそこで特筆すべきものはそれほどないかなぁという印象。

だが、「エイリアン」という立ち位置のトランスフォーマーと人類の出会いを描いく作品としては非常に良かったのではないだろうか。

トランスフォーマー1作目ではサムが状況に流されるままビーやオプティマスといったトランスフォーマー達と出会い、戦いに巻き込まれてしまうが、本作ではエイリアンであるビーと主人公のチャーリーの心の交流が非常に丁寧に綴られており、ハートウォーミングなストーリーに仕上がっていた。

 

本作の白眉ともいえるシーンはなんと言っても序盤のセイバートロン星の戦い。

YouTubeのタカラトミーチャンネルで初代トランスフォーマーを見ておいて良かったと思えるほどG1ルックなトランスフォーマーたちの活躍を見ることができた。

 

サウンドウェーブの「イジェ〜クト」も完璧だったし、そこから飛び出すラヴィッジも完璧そのもの!

スタースクリームのトライアングルなエイリアンジェットも最高だし、オプティマスの如何にも地球上のトラックという感じのビークルモードも最高!

序盤は兎に角褒める箇所しかないくらい。

中盤以降の冗長さは目立ったものの、マイケル・ベイ以外の監督が撮る新たなトランスフォーマーとして最高の船出だと感じさせる序盤だったと思う。

 

バンブルビー大好き悠木碧さんがシャッター姉さんのCVを努めたことも非常に感慨深い。

 

彼女が3Aのバンブルビーの高クオリティフィギュアを自宅に迎え入れたことも知っているし、『バンブルビー』の作中においてメインヴィランの声優を務めて非常に喜んでいたことも知っている。

Twitter界隈では彼女がメインヴィランの声優を務めたと知った時の衝撃も大きかったような気がする。

 

正直なところ本作以上に映画としてよくできた作品は昨年観た中にあったが、自分は劇場版トランスフォーマーというコンテンツが好きなんだなぁということに気づかせてくれたこともあってのランクイン。

最初はあの変形シークエンスに対してアレルギーもあったんだけどなぁ。慣れとは怖いものだ。

 

 

第9位:“SPIDER-MAN FAR FROM HOME”/『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

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正直ランキングに入れるかどうか迷ったが、今後のMCUのさらなる躍進に期待してのランクイン。

スパイダーマンはサム・ライミ版、アメイジング・スパイダーマン、そして現在MCU体制化におけるトム・ホランド版スパイダーマンと、リブートスパンが短すぎるという問題があるが、そのスパンの短さを最大限に活かして「オリジンストーリーを描かない」という英断を下した前作『ホームカミング』。

オリジンストーリーを描かないということはそれ即ちベンおじさんの死が描かれないということで、トム・ホランドの演じるピーターはベンおじさんとの別れが描写されないままヒーローとなった。

あるコンテンツに対するファンの意見が鮮度を持って観測できるのが現代SNS社会のいいところだと思うが、「トニー・スタークとの別れを描いた『エンドゲーム』、トニー亡き後の世界を生きる『FFH』の2作品を通じて“おじさんの死”というピーター・パーカーのオリジンストーリーを描いたMCUはすごい」という趣旨の意見を目にして思わず膝を打った。

 

トニー・スタークという巨大な存在を失った世界、そしてピーター。

「トニーの後を継いでアベンジャーズをリードするヒーローになる予定は?」そんな質問を受けてチャリティ・イベントの会場を逃げるかのように立ち去ってしまうピーター。

高校生の少年が背負うには余りにも重すぎる責任。

そんな悩める彼のもとに現れたミステリオことクエンティン・ベックに亡きトニーを重ね、イーディスを託してしまうのも無理からぬことだろう。

 

また、同年に『スパイダーバース』というマルチバース作品が公開されたタイミングでミステリオがマルチバースを語る点も、メタ視点が作品世界の理解を助けるというところで非常に面白かった。

 

虚実が入り混じった戦闘シーンも非常に見応えがあった。

疑り深いニック・フーリーが何故ミステリオに騙されてしまったのかというアンサーが用意されていたりしていつものMCUおまけシーンも見応えあり。

 

J・ジョナ・ジェイムソンの登場、そして衝撃の報道内容という(その配役も含めて)完璧なクリフハンガーで次回作への繋ぎ!

アベンジャーシリーズがひと段落してしまったMCUだが、今後も見逃せない!

 

 

第8位:“GODZILLA KING OF MONSTERS”/『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

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「ミリー・ボビー・ブラウンちゃんが出演するとはいえ、前作があの出来だったから心配だなぁ」と思っていたらとんでもないものを見せられてしまった。

なんと怪獣愛に溢れた作品なのだろう。

 

ゴジラの再起動方法が雑だとか、芹沢博士が死なない方法もあったのではないかとか、ケチを付けようと思えばいくらでも思い浮かぶが、ドハティ監督の怪獣愛でその辺りのことはどうでもいいかなぁと思ってしまう。

ただ、モスラとゴジラの関係性に関してだけは僕は受け入れがたいものがあるかな。

「ゴジラを模した模様が羽に描かれたモスラ」は田舎のヤンキーが若気の至りで恋人の名前をタトゥーで掘ってしまうような……何ともいえぬアホっぽさを感じてしまった。

 

「ゴマスリクソバード」という最低な愛称が定着してしまったものの、ラドンの扱いが非常に良かったのが印象的だった。

あのきりもみ回転で戦闘機を一網打尽にするシーンは格好良さに声を上げてしまいそうになった。

 

怪獣達が世界各地で同時に目覚めることによる恐怖。その中でも特に恐ろしいキングギドラという存在。そんなキングギドラすら寄せ付けぬ覚醒した怪獣王ゴジラの圧倒的強さ。

歩くMAP兵器のようなゴジラの強さの演出は最高にクールだった。

ただ、バーニングゴジラは僕らVS世代にとっては単なるパワーアップ形態というような軽い扱いをされてしまうと耐えられないものがある。

命を削りながらデストロイアを倒したあの痛々しい姿こそバーニングゴジラであり、断じて単なるパワーアップ形態として描いていいものではない。

 

王として再臨したゴジラの呼びかけに応じた世界各地の怪獣達。

髑髏島で同じく「王」として君臨していたキングコングが登場する次回作はどういった作品になるのか楽しみだ。

 

 

第7位:“GREEN BOOK”/『グリーンブック』

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KFCのコマーシャルムービー(違う

MARVELドラマシリーズ『ルーク・ケイジ』を観てからと言うもの、マハーシャラ・アリの演技に魅せられてしまった。

 

今作においても彼の演技は冴えに冴えていた。

彼が演じたドン・シャーリーと、リップことトニー・ヴァレロンガを演じたヴィゴ・モーテンセンの演技の掛け合いがこの平坦なロードムービーを感動の一作に押し上げている。

 

※Filmarksに書いた感想が鑑賞時に感じた熱を上手く乗せて書けていたので大部分を引用する

 

この作品の素晴らしいところは、マイノリティたる黒人ピアニストのドン・シャーリーに寄り添うトニーが、アメリカ社会のマジョリティのように見えてマイノリティである点だろう。

白人という意味で確かにトニーはマジョリティに属しているが、物語の冒頭から彼の訛りのある英語やスラング混じりの英語が、イタリア系である彼の出自を物語っている。特にトニーがドンの運転手兼用心棒となってハイソサエティな人間たちのコミュニティに身を置くようになってからは、彼の話す粗野ともいえる言葉遣いが今まで以上に目立つ。

マイノリティの側から偏見や差別と戦うドンを間近で見ていたトニー自身が、マジョリティではなくマイノリティであったという構造が、出自も人間性も全く異なる彼ら二人が親友としての友情を育んだことに圧倒的な説得力を持たせているのだ。

 

黒人差別からレストランの使用を認めなかったホテルに対し、ドンは演奏を行わず敷地内を出る。

そのあとに立ち寄った黒人御用達の場末のバーにドン・シャーリーとトニーが入店した瞬間、客たちは二人に奇異な視線を向ける。

黒人しか客のいない店内に白人のトニーが来たことへの疑問は言うに及ばず、その視線は黒人であるにも関わらず燕尾服に身を包んだドン・シャーリーに対しても向けられていた。

劇中、ドンは自身が白人のコミュニティにおいても黒人のコミュニティにおいても孤独であるとこぼすシーンがある。

このドンの抱える孤独を共有できる存在がトニーなのだ。

 

そして旅を終えたクリスマスイブ、トニーを家に送り返したドンは自宅に帰る。

貧しいながらも家族に囲まれたトニーと、物質的には満たされながらも使用人を家に帰してしまうと自分以外は部屋の中に誰もいないドン・シャーリー。この対比からの最後のシーンはとても美しかったし、旅を通して二人の間に芽生えた友情の深さを感じてとても温かい気持ちになれた。

差別に対し暴力に頼らず、自身の尊厳をかけて戦い続けたドン・シャーリーの“Dignity always prevails”というセリフが心に残った。

 

 

第6位:“AQUAMAN”/『アクアマン』

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オリジンを描かないヒーロームービーとしてスパイダーマン:ホームカミングに言及したが、本作はヒーローのオリジンものとして非常にストレス無く観ることが出来る作品。

 

STAR WARS新3部作世代なので、テムエラ・モリソンが父親役にいてくれるだけで著しい加点要素だ。

 

メラとアーサーの交流を描くシーンで凄く好きな描写があるのだが、いつか記事を書こうと思っていたら2019年が終わっていたといういつものあれ。

 

ブラックマンタが格好良かったのでMAFEXが楽しみだ。

ブラックマンタ目線で物語を見てみると、「特殊能力を持たない普通の人間が、アーマーアップすることで人ならざる力を有する父親の敵の超人と戦う」という下手なヒーローよりもヒーローらしいストーリーであることに気付く。

 

次回作にブラックマンタは出て来るのかだろうか。

アクアマンを敵視するバックグラウンドがとてもしっかりしているので、もっと深掘りをして欲しいと思えるキャラクターだ。

 

序盤の潜水艦内での戦闘シーンも良かった。

 

展開がダレて来そうなところで爆発が起こり、集中力をリロードできる親切設計が最高!

ヒーロー映画のデビュー作に良いかも。

 

 

第5位:“ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD”/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

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シャロン・テートの身に起こった凄惨な事件を何も知らぬまま鑑賞。

その後wikipediaで事件の概要を勉強してから二度目を鑑賞した。

 

僕はタランティーノ監督作品を観て頭部を鈍器でぶん殴られるような衝撃を覚えたことはないし、先日午前十時の映画祭で『パルプフィクション』を観たときは自分には合わない監督だとさえ思ったほどだ。

しかしこの作品の持つ生命力には抗い難い魅力があった。

この作品よりもストーリーが面白いと思える作品は他にもあった。

しかし本作以上にパワフルな作品は稀であると感じ、この順位にランクイン。

 

この作品を語る上で僕にとって大きい存在感を放っていたのはTBSラジオ『アフター6ジャンクション』のパーソナリティ宇多丸さんによる監督インタビューだ。

 

このインタビューで宇多丸さんの語った「映画で現実と戦う」というタランティーノ監督の姿勢。

「シャロン・テートという人物を話題に出すとき、人は皆あの凄惨な事件を思い出す。僕の映画で彼女を救いたかった」というその優しさが凄く心に刺さった。

 

レオナルド・ディカプリオが演じるリックのダメっぷりも最高だったし、ブラッド・ピットの格好良さは歴代ベスト級!加えてマーゴット・ロビーのキュートさも爆発していたし、大好きなアル・パチーノの演技も凄く良かった。

クリフに再三ヒッチハイクを試みたプッシー・キャット役のマーガレット・クアリーもめちゃくちゃ可愛かったなぁ。

 

思わず「やりすぎでしょ!」と言いたくなるような暴力描写はあるが、その描写も実際に起こった凄惨な事件の恐ろしさを示唆していると考えれば納得もいく。

 

最後の最後にリックが火炎放射器でヒッピーの悪漢を蹴散らすの様は爽快さすら感じる。

あの描写一つで見事にシャロン・テートを暗い事件から救済して見せた。

タランティーノ監督、あんたスゲーよ。

 

 

第4位:“JOKER”/『ジョーカー』

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ジョーカーというキャラクターは2008年の『ダークナイト』におけるヒース・レジャーによってある種の頂点を極めてしまったという考えが僕ら映画ファンの中では支配的だったといえるだろう。

しかし2019年、ホアキン・フェニックスという一人の天才の怪演によってジョーカーというアイコニックなキャラクターの歴史に新たな1ページが書き加えられた。

 

誰もが ヒーローたりえることを描くヒーロームービーが受け入れられる一方、隣人はもしかしたらジョーカーかもしれないという不安を掻き立てる本作が評価されるというのも面白い(ここで「自分」ではなく「隣人」と言える辺り、僕は人間関係に恵まれているのだと思う)。

 

夢と現、現実と虚構の境界で揺れ動く作品世界。

自らその二つ名を名乗り始めたのではなく、アーサーが憧れたマーレイによって名を与えられ、またゴッサム市民がその存在を受け入れたことにより誕生してしまったジョーカーというアイコン。

社会が作り出してしまった悪であるというバックボーンが本作におけるジョーカーという存在の特異さを表している。

 

先ほど『ダークナイト』を引き合いに出したが、以前書いたエントリで指摘した通り『ダークナイト』におけるゴッサム市民と『ジョーカー』におけるゴッサム市民にまつわる比較が非常に面白く感じた。以下にそちらを引用する。

この作品(※ダークナイト)の冒頭にはバットマンの真似をして裏取引を止めようとするヴィジランテが登場する。

自分の格好を真似て銃火器をぶっ放す彼らをブルースは良しとせず、縛り付けてしまうが、あの世界では市井の人々は善をなそうとバットマンを模倣する。

終盤の二隻の船と爆弾のスイッチのエピソードを見ても、この作品は人間の善性を信じて作られた作品のように感じる。

 

一方の『ジョーカー』では、マスメディアが貧困層の代弁者として担ぎあげてしまったことも手伝い、人々はジョーカーというアイコニックな存在をマスクをつけることで模倣し、崇めてしまう。

「人の命を奪う」という悪行を称えてしまう『ジョーカー』世界のゴッサム市民のメンタリティと、『ダークナイト』のそれとは好対照をなしていると言えるのではないだろうか。

※以前アップしたエントリの全文は以下より

eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

 

 

第3位:『見えない目撃者』

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 事故により視力を失った元警官のなつめを吉岡里帆が演じたサイコスリラー。

聞けば2011年に作られた韓国映画『ブラインド』が原作であるという。韓国映画、すごいな……

作品を第三者視点で観ている僕らでも迫りくる恐怖に慄いてしまうのに、実際に目が見えないなつめの恐怖はいかばかりだったろうか……などと考えてしまう。

 

本作は序盤でなつめのすぐ近くでスケボーと自動車の接触事故が起こり、事故現場に近づいたなつめが車中から助けを求める少女の声を聞いたことからストーリーが始まる。

そのスケボー少年の春馬となつめが次第に関係を深め、バディムービーとしての様相を呈し始めてからストーリーが加速度的に面白くなっていく。

 

真犯人が実は……というのは勘の良い視聴者なら気づいてしまうんだろうな。

僕は勘が悪いタイプであるため直前まで別の人物を真犯人だと思っていたのは内緒だ。

ゴア描写がだいぶキツかったので画面をから目を逸らしてしまうシーンが多かったが、全体を通じて非常によく出来た作品だった。

春馬を演じた高杉真宙君、今後スターになるかも。

 

國村隼=日本のモーガン・フリーマン説、推していきたい。

 

 

第2位:“SPIDER-MAN INTO THE SPIDER-VERSE”/『スパイダーマン:スパイダーバース』

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2019年。アニメーション作品の歴史が変わった瞬間を目撃した。

試写会で鑑賞し、事前に買っていたムビチケ2枚を使った後さらにもう一度観に行った。

僕が観た名古屋会場での試写会では「一方その頃NYでは……」という字幕がずっと消えないというトラブルがあったが、東京会場で試写会に参加した友人も同じ状態だったというツイートをしていて笑った。

 

週替わりで作中に登場するスパイダーガイが描かれた2枚が1組になったポストカードが配布されるキャンペーンが実施され、3組のポストカードを入手してスパイダーガイをコンプリートしたのも良い思い出。

スパイダーマンノワールがとにかく格好良かったなぁ。

楽曲も最高だったのでサウンドトラックも買ってしまった。

 

各平行世界で活躍するスパイダーマン達のタッチがそれぞれの世界観に合わせたものになっていたのに、それらが全く破綻なく一つの画面に収まっていることの奇跡。アニメーションという表現の限界に挑む挑戦と冒険が今まさに目の前で繰り広げられているという実感。眼福という言葉以外見当たらなかった。

 

縦横無尽のカメラワーク、短時間で沢山のキャラクターを魅力的に描ききる技量、能力もさることながら何度打ちのめされても立ち上がるその姿勢こそスパイダーマンの資質であるという力強いメッセージ。

思い出しただけで感動の振動が体内で足の先から頭まで登ってくるような感覚を覚える。“スパイダーマン”の名を冠する映画作品の中で最も好きな作品かもしれない。

本作でつくづく僕はスパイダーマンというヒーローが好きなんだということに気付かされた。幸福感をもらった本当に大切な作品。

 

 

第1位:“AVENGERS ENDGAME”/『アベンジャーズ:エンドゲーム』

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永らく僕の映画ランキング一位の作品は動くことがなかった。

“STAR WARS EPISODE Ⅴ: THE EMPIRE STRIKES BACK”がそれだ。

しかし本作はそれを超えてきた。

2019年度どころか僕の人生で1番の作品。それが本作“AVENGERS:END GAME”/『アベンジャーズ:エンドゲーム』だ。

 

ぶっちゃけ僕は08年の『アイアンマン』からMCUを追いかけて来た人間では無い。

地上波で放送された『アイアンマン』を何となく観たことがあるかなぁ程度で12年の『アベンジャーズ』を観てMCUデビューを果たした半端者だ。

でも僕はあの夏、バイト仲間との毎年恒例八ヶ岳旅行の帰りに同僚二人と『アベンジャーズ』を観に行く決断を下したあの日あの時あの場所の自分を褒めてあげたい。

 

あの日のお前がいたから俺は人生で最も幸せな3時間を過ごすことが出来たと過去の自分をハグしてやりたい。

 

僕は映画を観ていて感動をした時は感情に任せて泣くタイプの人間だ。

そんな僕が今までに最も泣いた映画は『素晴らしき哉、人生!』と『ショーシャンクの空に』だ。

特に前者は初見時に今までにこれほど泣いた映画経験は無かったというくらい泣いたので、それ以上に泣ける映画なんてこの世に存在しないと思っていた。

 

しかしである。

『エンドゲーム』は違った。

序盤中の序盤。

バートンが家族との時間を過ごしていたところ、サノスの指パッチンでバートン以外の家族が全員消えたところでまず泣いた。

“MARVEL”のロゴが出て来るオープニングすら始まる前の僅か5分ほどの間のことだ。

 

そこからは泣きのシーンがひっきりなしで、アベンジャーズ基地で仲間との通信を終え一人涙を流すナターシャに泣き、ピム粒子で2012年に戻るシーンで『アベンジャーズ』一作目のアッセンブルシーンを2019年に再び観ることが出来た喜びに泣き、自らを犠牲にしたナターシャの決意に泣き、ムジョルニアが浮かび上がった瞬間に後の展開を予想して泣き、引き寄せられたムジョルニアがキャップの手に収まったところで堰を切ったように涙が溢れ、“Assemble”のセリフでは声を挙げて泣いた。

 

と言うかムジョルニアが浮かび上がってからは涙の量の多寡に違いがあるだけで基本的に泣きっぱなしだった。

バトルシーンほぼ全泣きの映画って何だよ……

 

初回は公開日である4/26の00:00からの回を観たため、周りにはMCUファンしかいないという環境だった。

その為同じところで啜り泣く声が聞こえたし、同じように身を乗り出して画面に食い入るようにして観るファンがそこら中にいた。

 

皆同じ物が大好きで、観客は「これが観たかったんだよ!」って物が観られて、クリエイター達は「これが観せたかったんだかったんだよ!」ってものを観せてくれた。

 

クリエイター達に完敗した。

こんな物を観せられてしまっては他のどんな作品も「『エンドゲーム』以外の映画」でしか無くなってしまう。

 

とにかくこんな多幸感という名の棍棒で頭を全力でぶん殴られまくるような映画体験は今後の人生においてもう二度と訪れないだろうという予想が立ってしまうくらいに鮮烈で強烈な作品だった。

MCUシリーズ第22作目として、過去の21作全てを肯定し内包し、辻褄を合わせ、シリーズ最高の感情的な盛り上がりを観客が味わえるような仕掛けを各所に散りばめた最強のエンタメムービー。

 

オールタイムベストofベスト映画。

本作が楽しめなかったという人は申し訳ないが『エンドゲーム』に連なる21作品全てを観てから出直して欲しい。

それでも尚良さが分からないというのなら……僕はもう何も言うまい。

 

さて。

そんなわけで僕の2019年度ベストは以下の通りだ。

 

第1位:“AVENGERS ENDGAME”/『アベンジャーズ:エンドゲーム』

第2位:“SPIDER-MAN INTO THE SPIDER-VERSE”/『スパイダーマン:スパイダーバース』

第3位:『見えない目撃者』

第4位:“JOKER”/『ジョーカー』

第5位:“ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD”/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

第6位:“AQUAMAN”/『アクアマン』

第7位:“GREEN BOOK”/『グリーンブック』

第8位:“GODZILLA KING OF MONSTERS”/『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

第9位:“SPIDER-MAN FAR FROM HOME”/『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

第10位:“BUMBLEBEE”/『バンブルビー』

 

 

『エンドゲーム』が圧倒的で次点が『スパイダーバース』であることは早々に決定。

3〜5位の三作品と6〜10位の五作品の順位は結構流動的かなぁ。

 

2020年はどんな名作と出会うことが出来るのか今から楽しみだ。

映画好きとしての僕の基礎体力の土台を作ってくれた「午前十時の映画祭」が3月で終わってしまうため、できる限り多くの作品にこのイベントで触れておきたいところ。

 

ブラック・ウィドウ、ワンダーウーマン、ハーレイ・クインという女性ヒーロー&ヴィランの単独作が立て続けに発表される本年アメコミムービーのターニングポイントになるような気がしてならないぞ!