映文計

映画と文房具と時計、好きなものから1文字ずつもらって「映文計」。映画のことを中心に日々綴っていきます。

“Poor Things”/『哀れなるものたち』を観て感じたこと

Filmarksで感想を書いていたらめちゃくちゃ長くなってしまったのでせっかくなのでブログにも載せてみる。 

「哀れなるものたち」“Rebirth”ポスタービジュアル

 

2024年8作目(9本目)

同監督作『女王陛下のお気に入り』よりも本作の方が好き。

リッチな衣装、リッチな美術から来るこれ以上ないほどのリッチな画にノックアウトさせられた。

 

外界から隔絶された邸宅の中で「箱入り娘」として育てられたベラが外界と、そして他者と関わることで成長していく描写は圧巻。

 

ベラが自身を解放していくキッカケは自慰行為と性交。
そして、彼女の個性が爆発するのは船上でのダンス。ダンスは歌と並んで世界でも最も古い芸術の一つと言われている。
持ち金が無くなってパリに流れ着いたベラが選択する職業は、世界最古の職業とも言われる娼婦。

 

このように、人間にとって原初的な領域で徐々に自我を形成していくベラだが、世界との接点を持ち、そして世界の歪みに気付くキッカケは船上で老婦人マーサに渡された本であるという点が示唆的。
文化の力とその可能性を信ずる僕にとって、素晴らしく背中を押されるシーンだった。
ベラの世界・社会・外界に向けた目は、今日的な文化・文明の象徴たる書物によって開かれたのだという点に勇気づけられた視聴者は多かったのではないだろうか。

 

「この本が純真なベラに無用な知恵をつけたのだ」とばかりに本を捨てるダンカンは、「女性は知恵をつけない方が良い」と主張する"悪しき男性性”を備えた男性の象徴のように思えた。
また、ダンカンに本を捨てられたそばから新たな本をベラに差し出すマーサの姿からは「暴力に屈しない文化の不滅性」と「男性から押しつけられる不当な扱いに対し、女性同士の連帯こそが何よりも力になるのだ」というメッセージを感じ取った。

 

マーサと共に船旅を満喫するハリーと寄港地アレキサンドリアで貧困に窮する人々を目撃したベラは大きな衝撃を味わう。
ダンカンがギャンブルで儲けた大金を見たベラは「このお金を貧しい人々に渡さなければ」と考えて行動するが、「自分達が恵まれない人々に寄付をします」と主張する船員に大金を手渡してしまう。それによりベラとダンカンは持ち金を全て失って浮浪生活を余儀なくされる。

 

この一連の流れは社会の現実そのものと言えるのではないだろうか。

 

友人であるハリーの意地悪から過酷な現実を突きつけられ、心に大きな傷を負うベラ。
これは「“友人”なる存在(或いは、自分が一方的に“友人”だと思っている存在、と読み替えても良いだろう)がいつ何時も自分にとって優しさを向けてくれるわけではないことのメタファーだと感じたし、「苦い経験によって初めて見えてくるものもある」というメッセージも感じた。これは社会生活を営んでいる者であれば誰もが思い当たる節があることだろう。

 

寄付金を自らの懐に入れる船員は、「自分自身が善意で起こした行動に対して、社会は時に不誠実を以て応えることがあるのだ」ということを示唆的に現していると感じた。

 

資本主義社会で特権的地位にいたダンカンが、お金を失ったことでその地位を失い、資本主義社会において自ら支払い行為を行う機会が無かった(「価値の交換」という金銭の役割から離れた邸宅で暮らし、駆け落ちの旅に出て以来ダンカンに経済的に依存したまま旅行を続けていた)ベラは、持ち金を全て失うことによる影響が殆どない。
それどころか娼館という働き場所を自らで見つける強かさを見せ、同僚トワネットの影響で社会主義に傾注していく。
自慰行為や性交に耽溺していたベラが、「娼婦」という性を道具にした職業を選択し、哲学や社会主義に耽る。

 

自身が快感を覚えた人間の持つ原初的な衝動を職業に活かした上で、自身の内面的興味関心は哲学的・思想的な領域に向かっていく。

 

そして、そんな彼女の傍らには新たな友人トワネットいて、書籍がある。
これを文化・文明の力、そして連帯の力と言わずして何と言おうか。
そして、これによってヨルゴス・ランティモス監督が人間を「“野生”と“文明”が共存する存在」として規定しているらしいことが読み取れる。

 

アレキサンドリアでベラが目撃した「階層格差による絶望的なまでの人類の断絶」は本作の白眉とも言えるシーンだった……
ベラには自らが“彼らを見下ろす側”にいることへの絶望もあったように感じるし、それでいて彼女が“彼らの側に加わる”ことを選ばず船に戻り、施しをすることで罪の意識を贖うことを選ぶことのメッセージ性に気が付いて恐くなった

 

あそこで「下界」の人々を憂いて涙を流すことが出来るのは紛れもなくベラの優しさだと思う反面、ハリーの手を振りほどいてでも自分が特権階級の側から抜け出すことを選ばなかったベラは、この時点で既に「純真無垢」なキャラクターからは脱してしまっていると言える。
彼女はこの時、明確に無垢なる存在から“打算”を覚えた「人間」になってしまったのだと見ることも出来よう。

 

作中で男達や特権階級による支配に対して「否」と言い続けてきたベラ。
本作後半にはブレシントン将軍という「支配階級の男性」の象徴のようなキャラクターが登場し、ベラは自身の“元夫”である彼の家で束の間の共同生活を営むが……
そこで将軍がベラに求める役割は「自己主張をしない女性」、「口答えをしない女性」、「無知な女性」であり、自分の家を離れて哲学的知性を身につけた妻を将軍は疎ましく感じるようになる。

 

そして将軍が自分に向けた銃を取ったベラは将軍を撃ち、彼の怪我を治療するために生まれ育った邸宅へ帰る。

 

ラストでは自身が受けたのと同じ手術を将軍に施したベラが、彼の「飼い主」となって物語は幕を閉じる。

 

そこにアレキサンドリアで貧困に喘ぐ人々の姿にショックを受けて涙を流したかつての彼女の姿はない。
「作中で男達や特権階級による支配に対して「否」と言い続けてきたベラ。」と前述したが、そんな彼女が持つ者と持たざる者、支配者と被支配者という世界の構造の中に組み込まれてしまったことを雄弁に物語っている。

 

「体は大人、頭脳は子ども」で、外界の全てに新鮮な反応を示していたベラだが、ラストシーンに向かうにつれてその反応が薄らいでいく。
序盤ではあれほど自慰行為や性行為に喜びを見いだしていたベラが、中盤以降は殆ど性行為をしなくなっていく。
世界を知るにつれ、人は感動を失っていく。

 

“賢く”なることは、却って人に不幸をもたらすのではないか。
「哀れなるものたち」とは、知恵を得てしまった人類全般を示唆しているのではないか。

 

言わずもがな、この投げかけは旧約聖書『創世記』2章9節から語られる、「(蛇に唆されて)神との契約を破ったアダムとイブが、エデンの園で知恵の実を食べてしまった」というエピソードを下敷きにしている。

 

ベラの育ての親の通称は「ゴッド」だし、そう言った意味でかなりキリスト教的な思想の色が濃い映画だなと感じた。


【考察メモ】
・アレキサンドリアの「断崖」は、聖書におけるバベルの塔のメタファー?
バベルの塔の説話は「天まで届かんとする塔を建設する人類に怒りを覚えた神は、それまで一つだった言語を乱し、人々の意思疎通が出来ないようにした。それによって塔の建設は中止された」というもの。
本作における「断崖」がもたらす隔絶は「経済的格差が大きすぎて、異なる階級に属する人間はコミュニケーションすら取ることができなくなった資本主義の生んだ歪み」の象徴?

filmarks.com

 

『イコライザー3』のマッコールさんの腕時計

うちのブログで安定して一番読まれている記事、マッコールさんと同じ時計を買ったという記事なんですよ。

 

eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

 

やっぱりマッコールさんの時計って気になるもんね。

さて、来る10/6はイコライザー3作目の公開日。

 

www.youtube.com

www.youtube.com

 

トレイラーを見る限り、今作では過去2作でマッコールさん愛用の品だったSUUNTO CORE ALL BLACKとは別の時計を着用しているらしい。

https://youtu.be/GzIFPDi3XrM より


トレイラーだとベルト部分が不明瞭だけど、以下のモデルのように見える。

 

SUUNTO 9 PEAK PRO ALL BLACK(スント ナイン ピーク プロ オール ブラック)

https://www.suunto.com/ja-jp/Products/sports-watches/suunto-9-peak-pro/suunto-9-peak-pro-all-black/ より

www.suunto.com

 

上にリンクを貼った公式サイトによると、この商品のウリは以下の通りらしい。

 ・高性能プロセッサ

 ・21日間の耐久バッテリー

 ・軍用レベルの耐久性

 ・あらゆる機能が搭載されたスポーツウォッチ

 ・正確なGPS とナビゲーション

 ・フィンランド製(職人による手作り)

 

マッコールさんのハードな運用に耐えうるモデルともなれば軍用レベルの耐久性は納得。

また、「職人による手作り」という点も丁寧な暮らしを送るマッコールさん的には見逃せないポイントだろう。

 

SUUNTO CORE ALL BLACKと比べると多少値が張るけど、これも欲しいな。

 

アニメーション美術監督・山本二三氏逝去

悲しい知らせが届いた。

 

現在公開中の『君たちはどう生きるか』にも関わっている美術監督、山本二三さんが逝去されたとのこと。

www.asahi.com

 

山本二三さんといえば、男鹿(おが)和夫さんと共にスタジオジブリの美しい背景美術を手掛けてきた方。『君たちはどう生きるか』のエンドロールでは背景美術担当の一番最初に名前が載っていた。

 

僕はスタジオジブリ作品の大ファン。

現在住んでいる富山県で昨年「山本二三展」が開催された際に足を運び、その素晴らしい背景美術の数々を浴びるように味わって来て日も浅いだけに、今回の訃報を聞いて悲しんだ。

 

調べてみたところ現在静岡県浜松市で「新・山本二三展」が9/10まで開催されているとのこと。

www.city.hamamatsu.shizuoka.jp

 

終了まであまり日がないものの、スタジオジブリの魂とも言える美しい自然描写の数々を描いてきたレジェンドの仕事を体感できるまたとないチャンスであるため、お時間のある方は足を運んでいただけると宜しいかと。

郷里の長崎県五島市には江戸時代の武家屋敷を改修して作られた「山本二三美術館」がある。

www.goto-yamamoto-nizo-museum.com

浜松市の「新・山本二三展」に間に合わない方は、こちらに行ってみるのも一つ。

 

 

"#barbenheimer”で思い出したこと 「遺憾砲」、「文春砲」。次なる“砲”は?

 

#barbenheimer というハッシュタグが炎上したことは、2023年に起きた不幸な映画関連の出来事として、日本の映画ファンの心に残ってしまうと思う。

 

www.cnn.co.jp

 

theriver.jp

 

 

作品に罪はないと思うので僕はこの出来事をきっかけに両作品を観ないという選択肢をとるつもりはないし、今回の騒動を発端に両作品を見てもいない人間がレビューで低評価をつけまくるというのは絶対に「違う」と思う。

 

一方でこの騒動によって考えさせられたこともある。

そのきっかけになったのがこちらのツイート。

 

 

このツイートを見て、いつかエントリを書こうと下書きにぶち込んでおいた言葉を思い出した。

それは「文春砲」、「遺憾砲」という言葉だ。

 

「文春砲」は週刊文春による世間に及ぼす衝撃の大きなすっぱ抜き報道のこと。「遺憾砲」は日本の政治家が諸外国に対し「遺憾の意」を表明する以外何もしないことを揶揄していう言葉のこと……であると理解している。

 

なぜ前述のツイートでこの二つの言葉を思い出したかというと、以前「"文春砲"に"遺憾砲"……日本人って意外と好戦的な言葉を使うよな」と思ったからだ。

 

僕はこの方のツイートを読んで言葉の持つインパクトから戦争を想起させるような言葉を僕らは無自覚に使いすぎているのではないかとハッとさせられた。

 

この方のように、今回の騒動をきっかけに言葉の使い方に内省的になる人が増えたら、これらの好戦的な言葉は鳴りを潜めていくのだろうか。

 

21世紀にもなって戦争を止めることができない人類を見ていると、とてもじゃないけど好戦的な言葉が今後減っていくとは思えないのが悲しいところだ。

 

ジュラシック・パーク30周年

2023年。

ジュラシック・パーク30周年に当たる本年、アニバーサリーイヤーというだけあってとにかくJPがアツい。

 

皆も買おう。

 

俺はティラノサウルスのプラモを買った。

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「プラモって戦車とかロボットとか、硬いものしかモチーフにならないんじゃないの?」と思ったそこのあなた。

プラモデルの世界はもっと奥深いのだ。

ティラノサウルスのようなナマモノだってプラモになるのだ。

 

あと、loftもアツい。

30周年のミニメッシュポーチ、メッカワじゃない?

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サコッシュに入れて持ち歩いている身嗜みアイテムを入れるに当たって、普通の大きさのポーチだと持て余す。

だから、ミニサイズのポーチを探していたんだけど、これは丁度よいサイズ感だった。

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こちらもloft。

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コラボに積極的なRollbahn、遂にジュラシック・パークとコラボ!

本体の他にブックマークも別売。可愛いからセットで買っちゃう。

 

nico and...でもコラボしてたよね。

www.dot-st.com

 

ある人は、恐竜は夏の季語だと言う。

 

そんな夏だからこそ、みんなもJPアニバーサリーイヤーを祝いましょうよ、という話。

 

 

関連:

eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

 

俺、やっぱりビーストウォーズが好きなんだよ

ビーストウォーズが好きなんすよ。

 

人は初めて目にしたフル3DCGアニメーション作品を親と思う習性があることで知られているが、俺たちの世代の人口の8割にとってそれはビーストウォーズであるということが最近のハーバード大の研究で明らかになったのはあまりにも有名。

 

んで、昨日7/26。

映画オタク仲間のラインで8/4の公開を間近に控えた“Transformers: Rise of the Beasts”/『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の話題になった。

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そんなトークルームで昨日、僕は「ビーストウォーズは主題歌が滅茶苦茶良い」と言った。

 

で、Apple Musicを見てみたら、ちょうど昨日からこんなアルバム出てんのよ!

思わず買ったよね。

 

みんなも買おうぜ、という話。

music.apple.com

 

あ、そうそう。

覚醒オプティマスプライマルが滅茶苦茶良いらしいのでこちらも要チェキ。

 

覚醒オプティマスプライマル、7/27時点でamazonは7,374円だけどトイザらスだと5,997円でだいぶお買い得なのでこちらから買うのも良いよ。

www.toysrus.co.jp

お題:「上半期ベスト映画」

今週のお題「上半期ベスト◯◯」

 

2023年上半期ベスト映画を考えたい。

パッと浮かんだものを三つ選出してみた。

そうするとね、やっぱどうしてもこうなっちゃうわけ。

 


GotG Vol.3を観た時、「あ、これは年間ベストだ」と思った。けれどもスパイダーバースはやっぱり最高なわけで。

すげーおもちゃ欲しくなったもん。

おもちゃが欲しくなるヒーロー映画は最高だなって思うわけ。

 

是枝監督の『怪物』もよかった。

凄く食らった一作。

 

アトロクの是枝監督ロングインタビューは必聴ですよ。

 

あとこちらのラジオも聞いて是非「是枝節」を味わってみて欲しい。

 

 

 

お題全文:

年末になると意外と忘れてたりするしね

今週のお題は「上半期ベスト◯◯」です。

気がついたらもう7月! 2023年も後半に入りました。このあたりでいったん、2023年に出会えてよかったもの・ことを振り返ってみませんか? 今週は「上半期ベスト◯◯」をテーマに、皆さんからのエントリーを募集します。「上半期に読んで面白かった本5選」「現時点での2023ベストコスメ」「今年から始めてよかったこと」など、あなたの「上半期ベスト◯◯」について、はてなブログに書いて投稿してください! ご応募をお待ちしております。

 

前回:

eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

お題:「変わった」

今週のお題「変わった」

 

映画鑑賞スタイルが変わった。


僕が観る映画は基本的に洋画が中心で、邦画はアニメ作品を除いてほとんど観ていなかった。

 

それが映画鑑賞が趣味となってしばらく経ち、邦画の中にも優れた作品が沢山あるのだということを知って鑑賞スタイルが変わった。

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今でもハリウッドのブロックバスタームービーが好きなことは変わらないけれど、年末に年間ベスト作品を考える際、邦画の占める割合は以前よりも上昇していると感じる。

 

邦画は内面描写にすぐれた作品が多いという評価が一般的だと思うが、つい先日記事を書いた『ベイビーわるきゅーれ』はアクションシークエンスに込められたアイディアの数々に度肝を抜かれたし、『ちはやふる』は古今東西類を見ないくらい最高のスポーツ作品だと感じた。
「邦画って〇〇でしょ」という固定観念を覆すような作品がいくつもあると知り、様々な作品と出会えたここ数年間は、僕の映画人生において大いにプラスだったと断言できる。

 

洋画ばかりに親しんできた鑑賞スタイルを変えたことで、自分の中にあった「邦画」に対するステレオタイプな考え方が変わった。


何かを変えることによって得られるものというのは、案外大きい。

 

 

 

前回:

eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

 

 

お題全文:

この心地いい季節もすぐに変わっちゃうんだろうなぁ

今週のお題は「変わった」です。

数週間前にあんなにきれいな花が咲いていた桜も、いつの間にか葉桜になっていました。日々いろいろなことが変化していきますが、春はそのスピードが段違いに早い気がします。寂しい気持ちもあるけど、変化するおかげで新しいなにかに出会えるのかも。ということで、今週は「変わった」をテーマに皆さんからのエントリーを募集します!「新生活で変わったこと」「髪型変えました」「変な食べ物を食べました」「過去に書いたブログを読み返してわかった自分の変化」など、あなたの「変わった」にまつわる出来事を、はてなブログに書いて投稿してください! 皆さんのご応募をお待ちしております!

 

 

『ベイビーわるきゅーれ』、『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』&監督舞台挨拶(富山県富山市・ほとり座)

2023年4月2日。

富山県富山市の映画館「ほとり座」で開催された阪元裕吾監督による舞台挨拶に参加してきた。

 

パンフにサインをいただきました

1作目『ベイビーわるきゅーれ』の評判がすこぶる良く、気になっていたところに発表された2作目の公開。

そして、富山県富山市の素敵な映画館「ほとり座」で監督舞台挨拶があるというので行ってみようと思っていたら、何と2作目公開に合わせて1作目が同時にスクリーンにかかると言うじゃないの。

 

2023/04/02時点のほとり座のHPより。2作揃い踏み!素晴らしい! https://hotori.jp/

 

megalodon.jp

 

megalodon.jp

 

鑑賞録はまた今度書くとして、とりあえず記憶がフレッシュなうちに舞台挨拶で語られた内容を出力しておこうと思う。

「メモでも持っていけばよかった」と気づいた時には後の祭り。

舞台挨拶→サイン会→撮影会 を経て記憶を頼りに携帯にメモした内容からこのエントリを書いているので、記憶が曖昧な部分があったり内容に誤りがあったりしたら申し訳ない。

舞台挨拶は劇場スタッフと監督の質疑応答という形式で進められ、参加者からの質問コーナーもあった。

 

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“あの日”、「ただいま」が言えなかった全ての人へ……/『すずめの戸締り』

2023年1月14日。

『すずめの戸締り』を観てきた。

(※観賞後すぐに書き始めたこのエントリ、気づけば2ヶ月半くらい経っているんだけど……)

 

本作を鑑賞して感じたことのコアの部分をこのエントリのタイトルに仮託してしまったんだけど、『すずめの戸締り』という作品は“あの日”、「ただいま」が言えなかった全ての人へ捧げた新海誠というクリエイターからの鎮魂歌であると感じた。

 

公開から4ヶ月も経っているのでネタバレもクソもないと思うけど、以下はネタバレが気になる方は劇場鑑賞を終えてからどうぞ。

  • 良かった点
    • 癒しの作品
    • 「行ってきます」の先にある言葉を
    • 「岩戸鈴芽」という名前に託された主人公としての役割
    • 最後に飛び立つ「すずめ」
    • 環さんの心情の吐露を「なかったこと」にしなかったことの偉さ
  • 気になった点
    • 草太、椅子になってから東の要石を探すってどうなの?
    • 「気まぐれは神の本質」は単なるエクスキューズ
  •  その他雑駁な感想
    • 衒(てら)いのない『ルージュの伝言』使い
    • 「すずめ」という曲の歌詞出て来る“産土(うぶすな)”という言葉
      • 「時はまくらぎ」
      • 「風はにきはだ」
      • 「星はうぶすな」
      • 「人はかげろう」
  • 結びに
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TOPGUN:精鋭たちの腕時計~「インター」って何よ~

腕時計好き以外には全くなじみのないブランドだと思うものの、時計好きでIWCというブランドを知らないという人はいないだろう。

 

それくらい名の知れたブランドがIWCだ。

IWCとは“International Watch Company”の略。

初めてそのブランドの正式名称を知ったとき、僕は「非常に自信に満ちたブランド名だな」と思ったことを覚えている。

家電メーカーに“National”の名を冠するのもかなり自信と覚悟の要るものだなと思ったりしたが(というか“national”って形容詞じゃん。形容詞がブランド名ってどういうことよ)、“IWC”とは言うまでもなく直訳すれば「国際時計会社」である。

なんだその自信。「東インド会社」か。

 

IWCはそのまま「アイ・ダブリュ・シー」と発音することもあるし、“International Watch Company”という正式名称の初めの単語の一部をもらって「インター」と呼称されることもある。

 

「インター」は古くから国内で愛されてきた略称で、同社のアンティークウォッチは市場で「オールドインター」などと呼ばれたりもする。

 

昨今はROLEXもブレスの出来が評価されるようになったが、数十年前は「ROLEXはブレスが弱い」という評価も一定数有ったと聞く。

対して「ケースもブレスも出来がよい」と評価されてきたのがIWCだ。

 

前任地で仲良くなった取引先の方にIWCを着けた方がいた。

初対面の時から気になっていたが、二度目にお会いした際に堪らず「時計、インターですよね。格好良いですね」と話を振ったことがきっかけに一気に打ち解け、仕事外で飲みにいくようになった。

その方が贔屓にしている時計店で一緒に腕時計をウィンドウショッピングするということもあったなぁ。

 

「もう10年以上愛用しているけど、時計がインターだって気づいて声をかけてくれたのはナヲトさんだけですよ」と言われたから、時計を褒められたことがうれしかったのだと思う。

誰だって自分が身に着けているものを褒められるのは嬉しい。

それが強いこだわりを持つものであれば特に。

 

ここまでIWCについて書いてきたのは映画“TOPGUN”が関係している。

 

 アメリネバダ州に実在するアメリカ海軍の訓練校「トップガン」に時計を納めているのが他ならぬIWC

これは先日のエントリで参照した記事を読んで初めて知った事実だ。

 

先日の記事:eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

 

先日の記事で引用した記事:

www.hodinkee.jp

 

IWCの公式ページを見てみると、なるほど確かにトップガン仕様のモデルが販売されていることが分かる。

https://www.iwc.com/jp/ja/watch-collections/pilot-watches/iw324712-pilot_s-watch-mark-xviii-top-gun-edition-sfti.html

www.iwc.com

 

パイロット・ウォッチ・マーク XVIII・トップガン “SFTI”」

IWCによる海軍戦闘機兵器学校の卒業生限定のタイムピースの一般向けバージョン、「パイロット・ウォッチ・マーク XVllI・トップガン “SFTI”」。

 

2020年には限定モデルも販売されていたようで、タフな見た目に加えて秒針尾部のカウンターウェイトが戦闘機を象っているなど遊び心も忘れない非常に魅力的な一本として仕上がっている。

実物を見てみたいな〜

画像:https://www.eye-eye-isuzu.co.jp/archives/53682/amp



www.eye-eye-isuzu.co.jp

 

他にもIWCの手がけるトップガンモデルの時計はカラーバリエーションがあるらしいことをこの記事で知った。

www.hodinkee.jp

トップガンの基地の周辺の自然を表現したカラーをその身に宿した腕時計。

映画“TOPGUN:MAVERICK”で抱いた空への憧憬と興奮を身に着けることができる。

 

画像:いずれもhttps://www.hodinkee.jp/articles/how-iwcs-top-gun-collection-got-its-colors


ダイバーズウォッチは本来スポーツウォッチであるため、スーツスタイルには適さないと考える人もいる。が、今や多くの人がそんなことを気にも留めず、スーツに合わせてダイバーズウォッチを愛用している。

では、彼らは全員週末にダイビングを楽しむようなライフスタイルなのだろうか。

当然、答えは否だろう。


それでも、人はダイバーズウォッチを求める。

別にダイビングなぞ生涯一度たりともしたことがない人であっても、ダイバーズを着けて良いのだ。

手首に鎮座する自分の相棒が「200m潜水用防水」能力を備えていると思うだけで、何だか力が貰えるはずだ。


同じように、音速の数倍のスピードで空を舞う戦闘機のパイロットが求めるタフさを備えたパイロットウォッチが自分の手首にあるということは、自分の小さな相棒に対しきっと誇らしさにも似た感情を抱かせてくれることだろう。


“TOPGUN”及び“TOPGUN:MAVERICK”を観て、アメリカ海軍パイロットの精鋭の中の精鋭たちが身に着けている時計への興味が湧いたのなら、是非IWCをチェックしてみて欲しい。

 

最初に引用した記事のなかでも言及されているが、“TOPGUN:MAVERICK”の作中でわざとらしいくらいにカメラがIWCのストップウォッチにフォーカスするシーンがある。

そのシーンを劇場で観た時僕は「インターやんけ!」と思っただけだったけど、訓練校「トップガン」とIWCの関係性を知った今であれば、この演出はなるほどと大いに頷けるものだった。

 

[rakuten:auc-rasin:10040132:detail]

 

【参考】

フェニックスが腕立て伏せをするシーンで着用されているIWCのモデルにフォーカスした写真があったり、ストップウォッチに言及した部分もあって読み応え十分なので、“TOPGUN:MAVERICK”ファンかつ腕時計の愛好家諸氏は是非一読の程を。

piazo.jp

画像:https://piazo.jp/article/20220601-tom-cruise-wearing-watch-in-top-gun-Maverick/

幼少期の僕にクリティカルヒットした一作! “SMALL SOLDIERS”/『スモール・ソルジャーズ』BD発売!

2022/07/20。

ツイッターで同好の士がつぶやいた内容を見て、帰宅途中の僕は狂喜しそうになった。

“SMALL SOLDIERS”/『スモール・ソルジャーズ』のBlu-rayが発売されると知ったからだ。

 

何を隠そう、僕は本作が大好きなのだ。

過去このブログではこの記事で軽く触れただけにとどまるけれど。

 

eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

 

映画仲間とのLINEグループで先日こんなやり取りがあったばかりで

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で、昨日そのオタクグループに発売決定の報を受けてすぐさま知らせたくらい。

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1990年前後生まれの人の中にはピンとくる人もいるだろうか。

 

AIで自立行動するオモチャを開発したオモチャメーカー。

軍隊をモチーフにした「コマンドー・エリート」と、クリーチャー然としたデザインの「ゴーゴナイト」という2つの勢力に分かれて商品展開をする予定だったが、覚醒したコマンドー・エリートの面々が発売日を前にゴーゴナイト狩りを開始。

ゴーゴナイトを匿った主人公の少年は、自宅に攻め入ってくるコマンドー・エリート部隊をゴーゴナイトと協力しつて迎え撃つ……

 

というストーリー。

 

先に紹介した記事でも言及したが、コロコロ誌上でこの作品のコミカライズを手掛けたのが誰あろう上山道郎先生。

この作品を通じて僕は先生のファンになり、その後先生が『機獣新世紀ゾイド』のコミカライズを担当したことで僕がその後歩むオタク人生が決定的となったと言って良い。

 

という訳で『スモール・ソルジャーズ』は僕にとって大切な一作だが、今までDVDはリリースされていたものの永らくBlu-rayのリリースがなかった。

 

それがこの度、Blu-rayのリリースが決まった。

その事実が滅茶苦茶嬉しい。

 

もうね、小躍りしちゃうくらい。

 

ちょうど先日オタクのLINEグループでBlu-ray化を待望していると送ったばかりだったので、嬉しさも一入というもの。

 

本当はスチールブックが欲しいんだけど、難しいだろうな……

更に欲を言えば上山先生のコミカライズ版が同梱されたスペシャルボックスが欲しいんだけど、過去の先生のつぶやきから、利権関係でコミックスの再販が困難であることが明言されているのでこちらは望み薄。

 

まあ贅沢は言うまい。

Blu-ray、早く手元に欲しいよ~~~!!!

 

上山先生、たま〜にTwitterスモール・ソルジャーズのこと呟いてくれるんですよ。

それが僕には嬉しくて、毎回リツイートしちゃう。

 

 

数年前、実家で見つけた本国産の当時品。

アメリカは映画関連の紙製のファイルがターゲットとかに並ぶんだよね。

1ドル以下で大量に売られているので自分の好きな作品のファイルを見つけると嬉しかったりする。

これは出張に行った父に買ってきてもらったはず。

 

 

下にAmazonのリンクを貼ったけどサントラの2曲目、Queenの名曲“Another One Bites The Dust”のリミックスがべらぼうに格好良いので未聴の方には是非聞いてほしい。

 

サントラはプレミアついてちょっと割高だけど、Blu-rayは2,000円という安さなので是非みんなで買いましょう。

 

誰かを想い、駆けるということ〜“LICORICE PIZZA”/『リコリス・ピザ』〜

2022/07/16。

“LICORICE PIZZA”/『リコリス・ピザ』を観てきた。

忘れないうちに鑑賞録をつけておく。

 

感想を書き残すにあたり、この記事を読んで自分にもっと映画リテラシーがあったら一層楽しめたのになぁと思ったのだった。

映画の大海はどこまでも広く、そして深い。

www.banger.jp

 

備忘録的に感想を書き残そうと思ったものの、書きたいことの大半はタイトルに託してしまったんだよね……

まぁ良いや。

一言感想という感じで。

 

「寄り」のショットが意味するところ

本作を通して印象的なのは、「もうちょっと引きで撮った方が良いんじゃない?」と思ってしまうくらい寄りに寄ったショット。

 

これはきっと野心家ではあるものの、ティーンという若さから来る主人公ゲイリーの近視眼的な世界の見え方を表しているのだと思った。

 

しかし、寄りすぎなのではないかという印象を受けるショットの多くが、ゲイリーとアラナの2人を同時にカメラに収めたショットであることに気づいた。

 

画面の外=外界から切り離された2人だけの世界。印象的な寄りのショットは、ゲイリーとアラナ2人の行く末を暗示していたのではないか。そんな風に思えてならないのだ。

 

キーアイテムの一つ(?)であるウォーターベッド。
このウォーターベッドに2人が寄り添って寝るシーンの、ビニールの中に満たされた水と2人の掌のシルエット。

このシーンの美しさと、繊細さよ……

このシーンだけでポール・トーマス・アンダーソンという監督が他者を見つめる眼差しの優しさが垣間見える。

 

貴方/貴女を想って、走る

ゲイリーは走る。

ティーン故の若さとひたむきさで、彼は走る。


アラナと仲違いをしてピンボール店を開業した際、新規開店を知らせるチラシを持って車道を走る。

バイクから転落したアラナを心配して、芝生を疾走する。

 

ゲイリーよりも10歳年上のアラナも走る。

ティーン・フェスで誤認逮捕されてしまったゲイリーを救うために、警察署に向かって走る。

 

最終盤、ゲイリーを探して暗い夜道を走る。

 

そんなアラナに会うためにゲイリーも夜の街を走る。

 

お互いがお互いを求めて走る。

そんな姿が描写された直後、警察署からフェス会場に2人で走って戻った思い出の一幕がオーバラップする。

 

走り疲れた2人は歩いて角を曲がる。

俯きながら歩いていた2人が顔を上げると、目の前には自分が求めていた相手を見つける。

そして、それまで一度も交わすことのなかった口づけを交わす。

……何かもう書いているだけで恥ずかしくなってきたんだけど、本作の素晴らしいところは鑑賞中全く恥ずかしいという感慨を抱かせることなく終幕を迎えるところ。

 

僕が何よりグッときたのは、どんな時でも「全力疾走」、文字通り走り回って何かを成し遂げようとするゲイリーに対し、アラナが作中走るシーンはいずれもゲイリーのために何かをしようとするシーンであるということ。

 

誤認逮捕されたゲイリーを助け出したい。

ゲイリーに会いたい。

 

そんな純粋な動機が、彼女に走るという選択をとらせている。

一心にアラナだけを見ているゲイリーと違ってアラナは恋多き女性。

だけど、彼女が全力疾走するくらい大切に想っている存在はゲイリーだけなのだ。

 

お互いのために夜の街を走り回った2人が、歩きながら相手の姿を認めるというのも、どこか示唆的で良いなと想った。

 

きっとこの2人なら今後どんな困難があっても手を取り合って一緒に歩いていける。

 

そんなメッセージを感じたラストシーンだった。

 

 

 

……何か映画を観た直後は「俺はもっと話の展開や爆発力がある映画が好きなんだよな……」とか、「ラストに向かって複数の話の筋が一本に纏まっていくようなストーリー展開を期待してたのに、バラバラの要素がバラバラのまま終わったな……」とか思ってあまり好きだとは感じなかったんだけど、鑑賞録をつけていたら結構好きなポイントが見付かるもんだな……

 

"LIGHTYEAR"/『バズ・ライトイヤー』がSTAR WARSだった話

2022年7月2日。公開翌日に"LIGHTYEAR"/『バズ・ライトイヤー』を観てきた。

結果、STAR WARSだった。

 

近年、スターウォーザー仲間で映画の話をしている際、「(この作品は)STAR WARSっぽい」とか「俺たちの見たかったSTAR WARS」という話題を口にすることが増えた。

 

2015年公開の“STAR WARS: THE FORCE AWAKENS”/『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』から始まるシークエル・トリロジーがファンの期待に沿うものではなかったことからくる失望感が、僕らファンの口からこのような話題を引き出しているのだが、そんなことはどうでもよい。

 

「“LIGHTYEAR”はSTAR WARSだった」。

それも、良くない部分を凝縮したようなSWだったのだ。

 

以下ネタバレ&本作のファンにはあまり気持ちの良いものではない僕の意見も入るので、そういうのが気になる方はここで読むのを止めにすることをお勧めする。

 

 

ジャージャー・ビンクスとモー

平成一桁生まれの僕は「新三部作世代」だ。

地上波放送で旧三部作に触れてSWが好きになり、1999年の『エピソード1:ファントムメナス』で初めてSWシリーズを劇場で鑑賞した世代。

初めてSWを劇場で鑑賞できた喜びと、年齢がほとんど同じ(後に同い年と知る)ジェイク・ロイドが演じるアナキンがいてくれたから、より一層物語に熱中した。

 

そんな訳で、後に本国ではジャージャー・ビンクスが非常に嫌われていると知ったときはちょっとショックだった。

 

僕にとってジャージャーは「いて当たり前」のキャラであり、好きだとか嫌いだとか判断を下す対象であると考えたことがなかったからだ。

今では「まぁ嫌いになる理由もわかるな」という感じだが、それでも僕は彼のことは嫌いになれない。

 

翻って“LIGHTYEAR”である。

吹き替え版では僕の大好きな三木眞一郎さんが吹き替えを担当しているモーというキャラ。

これがもう正しくジャージャーなのだ。

子供の頃は「いて当たり前」のキャラだから気にならなかったジャージャーの「主人公組に危機をもたらすためだけに用意された存在」というロールに対するヘイト、俺にも分かったよという感じ。

 

ある作品を好きになれるかどうかは、主要キャラクターへの愛着を持つことができるかに左右される部分が大きいと思う。

“LIGHTYEAR”はモーを中心に主人公サイドが「何かこいつ好きになれないな……」というキャラばかりで、それがノイズとなって作品全体に対する自分の評価を固定してしまった感がある。

 

というか僕は本作に対して「何か今一つ」という評価なんだけど、その評価の殆どがモーに対するイラつきに起因するものだと思う。

 

作中、ワープ航法(?)に入る描写がSW作中に於けるハイパースペース・ジャンプのシークエンスと酷似していることは言うに及ばず、多くのディテールに「SWらしさ」が散りばめられている。

(ウォーザーじゃないうちのちゃん嫁も「SWっぽかったね」と言っていた)

SWには見習うべき美点が数多くあると思うけど、一番「SWらしさ」を感じたのが本国で不人気なジャージャーに似たモーのキャラ造形というのは何だか残念。

 

最後の方に「緊急ボタンを作動させる」いうモーの機転で危機を脱するシーンがあるけど、これも何か取って付けたような活躍シーンでイマイチ乗れなかったなぁ……

「気が弱くてミスばっかりだけど機転が利く」みたいなキャラであることを事前に且つ丹念に描いていれば印象も変わったんだろうけど、そうでも無かったし。

 

あのキャラ造形&彼にフォーカスしないまま物語を進めるのであれば、緊急ボタンを押そうとするモー、「最後まで諦めるな!」「スペースレンジャーの誇りを捨てるのか!」と止める周りのキャラ……を描写した上で、それでもモーが緊急ボタンを作動させる。

そうしたらエアバッグが作動して、ラッキーパンチで敵を片付ける……みたいな展開の方がまだ良かったのでは?

……いや、ラストでそんなスカされてもそれはそれで腹立つな……

 

TCWで観た」

これはもう言い掛かりだろうと言われればそれまでなんだけど、作中で繰り広げられる展開のあれやこれやに対して「何か“STAR WARS: THE CLONE WARS”で観たことある気がする……」という感覚が拭えなかった。

 

前述した「ロボットの頭上から巨大な構造物を落としてガッシャーン!」というシーン、一体何度TCWで観たことだろうか……

 

未開の惑星を探検する様子も、敵戦艦への潜入ミッションもこれTCWで(以下略

 

TCWは全7シーズンもあるんだから似たような要素があるのは仕方がないだろう」という意見もあるかも知れないけど、もっと幾らでもキャラクターを上手に転がすことができたと僕は思うんだけどなぁ……

 

何故作中最大のSW要素をハズすのか

TOY STORY 2で明かされた衝撃の関係性。

「バズの宿敵たる帝王ザーグの正体が実はバズの父親だった」という例の展開。

“I, am your father.”

“Nooooo! ”

 

これは言うまでもなくSTAR WARS EPISODE Ⅴ: THE EMPIRE STRIKES BACKのオマージュだが、このシーンに触れたスターウォーザーは誰もが思わずニッコリしてしまうわけ。

 

なのにさ!その!シリーズ最大の!SW要素を!何で!無しに!しちゃうのよ!

 

とか思った次第。

いや、これは僕がSW好きだから気にくわないとかそう言うことじゃなくて、「こんな設定だったら2作目のあのやり取りは何だったんだよ」となっちゃうじゃないのと。

 

僕はTOY STORY 4が公開された2019年当時、同シリーズのコアファンが怒りを露わにしているのをどこか冷静に見ていたので、僕はTOY STORYシリーズへの思い入れはそこそこなんだなぁと思っていたんだけど、実は結構好きだったみたい。

 

というかTOY STORY 2が初めて親の手を離れて友人同士で観に行った映画作品ということもあって思い入れ深い一作だから、2に直結する要素に対して余計に気になってしまうのかも知れないけど。

 

バズのキャラクター

TOY STORYシリーズの魅力を語れと言われたら、僕はウッディとバズ2人のキャラクター性と関係性の変化だと答えるだろう。

 

とりわけ、自己中心的で自己陶酔型の人格だったバズが、ウッディをはじめとした「アンディのおもちゃたち」と触れ合う中で性格を変化させていく様は、シリーズを追いかけるうえで非常に魅力を感じる要素だ。

 

シリーズ2作目。

新品のおもちゃである二人目のバズが、シリーズ1作目に登場したばかりのころの(アンディの)バズのような、ちょっとイタいキャラクターとして登場する。

一人目のバズがアンディのおもちゃたちとの触れ合いがないまま二人目のバズと出会っていたら、きっと同じ性格の二人が並ぶことになっただろう。

 

このことから、おもちゃが持つパーソナリティは、そのおもちゃの元となった「キャラクター」の人格に左右されると考えるのが妥当ではないだろうか。

リトルグリーンメンも3人とも似た性格してるし。

 

その考えに基づけば、当然本作“LIGHTYEAR”の主人公バズ・ライトイヤーのキャラクターは、TOY STORY 1作目でアンディのおもちゃたちと触れ合う前のバズ、あるいはTOY STORY 2に出てきた二人目のバズと同じような自己陶酔型の性格であるはずだ。

 

僕は“LIGHTYEAR”のバズを基にしたおもちゃが、TOY STORYシリーズのバズの性格を備えていることに違和感を覚えてしまう。

 

TOY STORY初期のバズの性格に即して考えるのなら、アリーシャに指摘された「“バズ・ライトイヤーの航海日誌”を腕のデバイスに話しかけて録音する」という行為を「世間的にはちょっと恥ずかしい行為」、「スペース・レンジャーの規定だが、誰も守っていない形骸化した規則」とは認識していないはずだ。

僕の知っているバズは、本気で“バズ・ライトイヤーの航海日誌”を録音している。

そんなタイプのキャラクターだ。

 

これはもうネットミームでいうところの「公式との解釈違い」みたいなイタいファンの妄言と捉えてもらっても良いけど、本作がシリーズファンから不評なのってこのバズというキャラクターを制作側が理解しきっていない(ように見える)点ではないかと思うんだけど、どうでしょうか。

 

1995年

オープニングでは、僕らが今まさに鑑賞している“LIGHTYEAR”という作品が1995年にアンディが鑑賞した作品であり、本作を鑑賞したことでアンディはバズのおもちゃを迎えることになったというアナウンスがあったけど、1995年らしさを感じるような要素が全然なかったのが非常に残念だった。

 

というかポリコレに対するあれやこれやが「1995年当時はこんなに意識されてないだろ」と思えるものばかりで、“1995年”と明記されたことがノイズにしかなっていなかったように思う。

 

良かった点

鈴木亮平バズ

富山で最寄りの映画館2つに字幕版での上映がなかったので吹き替え版で観たんだけど、鈴木亮平バズ、良かった。

白石和彌監督の撮る映画でしか彼を知らないんだけど、まぁ『ひとよ』でも『孤狼の血 LEVEL2』でも彼の演技が素晴らしかったので、あの実力をもってすれば声優もこなせることに大きな驚きはないかなといったところ。

 

ソックスが良い

公開前は「別にそんな媚びたマスコットキャラとか要らねぇんだよ分かってねぇな」と思っていたけど、なかなかどうしてこのソックスというネコ型コミュニケーションロボットが良い味を出していた。

健気で可愛いし、隠し機能満載で滅茶苦茶頼りになるし、最高の相棒キャラじゃんって感じ。

 

最後に

総じてTOY STORY好きには同作に関連した要素が少な過ぎて訴求力がなく、STAR WARS好きには「同作を想起させる要素が多い割に変なところでスカしてくるところが癪」という少々残念なバランスの作品であると感じた。

 

TOY STORYから完全に独立した作品として割り切ってみることができればよいのかもしれないが、もしTOY STORYと関係のない作品ですと本作を提示されたとき、果たして鑑賞したいかといわれるとめちゃくちゃ微妙という。

 

まぁ「SWっぽい」というのはスターウォーザーのイチャモンのようなものなので別に良いんだけど……

というか僕のようなウォーザーは何を見てもSWに結びつけて考える厄介な癖があるのでこれは改めないといけないなと思った次第。

直近で言うとこの記事でもSWに絡めて語ってたな笑

eibunkeicinemafreak.hateblo.jp

 

そういえば本作のストーリーの最後の最後で「この星で生きていこう」と決断を下すのもなんか僕の中のバズ像と異なっていると感じた部分だったりする。

というか、バズ以外の誰もが諦めてあの星で暮らしていくことを決断する中、ただ1人惑星脱出を信じて実験を続けるバズの行動が人民の心に火をつけ、最後にあの星を脱出するようなストーリーであって欲しかった。

俺が好きだったバズは、そういう奴だよ。

 

THE STORY OF FILM

www.jaiho.jp

 

昨日(2022/06/17)のアトロクを聴いていて、19時台に“THE STORY OF FILM”という映像作品が紹介されていた。

 

公開されたのは2011年。誕生から120年の歴史を持つ「映画」という総合芸術について通史的に学べる一作と言うことで宇多丸さんも非常に勉強になる一作とのこと。

映画に於いてある表現が誕生した瞬間を知ることが出来るらしく、僕も滅茶苦茶観てみたい!

 

今劇場で“THE STORY OF FILM”/『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』という作品が上映されているが、この作品はもともと書籍であり、それを映像化した“The Story of Film: An Odyssey”というドラマ作品がある(全11エピソード/全編900分超)。

日本ではJAIHOという配信サービスで楽しめる。

 

storyoffilm-japan.com

 

映画の歴史を通史的に学べると前述したが、その「映画」の対象はハリウッド映画のみに非ず。

日本を初めとした世界各国の映画にも焦点を当てている。

公式HPにある監督の文章が日本愛に溢れていて何とも素晴らしい。

 

親愛なる日本の皆さんへ。

私は、「もしも世界で映画産業の発展を妨げるような脅威が発生したとして、たった1つの国の映画文化しか助けられないとしたらどの国を選ぶか?」と言われたら、迷わず「日本」と答えます。それぐらい邦画が大好きです!

 

youtu.be

 

映画を映写する際、フィルムが切れてしまうことが問題として顕在化した当時、エジソン達がフィルムをたるませて映写機にかける技術を確立。その特許を取得した。

 

東海岸では同技術を用いるのに特許料の支払いが必要だが、西海岸は特許料の支払いを逃れることが出来、そのことがハリウッドが映画の都として栄えた背景としてあるらしい。

 

この作品を観た宇多丸さんから、そんな説明を又聞きするだけで滅茶苦茶楽しい。

映画文化を愛するものであれば必見の作品のようなのでこれは時間を作って観てみたいなぁ。

 

原語版の書籍も欲しい!!